




生成AIを利用する企業が増えている。令和8年版「情報通信白書」によれば、何らかの業務で生成AIを利用している日本企業は86.4%に達し、前年度の55.2%から大幅に上昇した。その一方で、2025年のOECDの調査では、日本のコア業務へのAI導入率は1.9%にとどまる。
「これはG7の中で最も低い数字です。しかし、他国もまだ一桁台にとどまっています。業務やシステムを、AI活用を前提に再設計すれば、日本企業が競争力を高める余地は十分にあります」とデル・テクノロジーズの藤森 綾子氏は分析する。
これまでのAI導入は、タスク単位の効率化や個人の生産性向上が中心だった。しかし今後は、競争力の源泉となる中核プロセスにAIを組み込み、ボトルネックの解消やコスト最適化を通じて業務プロセス全体を変革していくことが求められるという。
目指すべきは「今ある仕組みにAIを足す」のではなく、「AIがあることを前提に仕事の進め方やデータ活用の在り方を作り直す」というAIネイティブ企業へのシフトである。
その起点となるのは、自社の競争力の源泉となるコア業務を見定め、その中のボトルネックを特定し、AIによって解消していくことだ。藤森氏は、AI適用の対象を広げる前に、まず経営層が「どの業務が競争力を生み出しているのか」を明確にする必要があると指摘する。効果が見込める領域から着手し、成果を横展開していくわけだ。
実装段階では、組織、プロセス、データ、インフラの4領域を検討する必要がある。組織では人とAIの役割を見直し、プロセスではAI活用を前提とした業務へ再設計する。データではAIが活用しやすいAI-Readyなデータを整備し、インフラではコスト、性能、セキュリティー、データ主権などを踏まえて最適な配置を検討する。藤森氏は「適用する業務が変わっても活用できる共通の原則やポリシーを整備することが重要です」と話す。
こうした考えのもと、デル・テクノロジーズ自身も、自社のAIネイティブ化を進めている。同社では高い効果が見込める業務を選定し、標準化された基盤上にAIを実装。効果を測定しながら適用範囲を広げ、得られた成果や知見を次の投資につなげる循環を構築している。
その一例が営業領域だ。提案準備時間を従来の50%以下に短縮することを目標とし、顧客との対面に充てられる時間を数千時間創出できたという。現在は提案準備だけでなく、提案品質向上やフォローアップにもAI活用を広げている。
AIネイティブ化を持続可能なものにするには、生産性向上に加えコスト管理も同時に考えておく必要がある。特に藤森氏が強調するのは「トークン投資のROI(投資利益率)」という視点だ。
「エージェント型AIの普及により、トークン消費量は大きく増加していきます。重要なのは消費量を単純に抑えることではなく、どの工程にAIを適用すれば生産性を最大化できるのか、また投資に見合う成果を得られるのかを見極めることです」と藤森氏は説明する。
その成果を最大化するためには、AIReadyなデータ整備に加え、ガバナンスやサイバーセキュリティーへの対応が欠かせない。同時に、競争力の源泉となるデータや知的財産を自ら管理・活用するソブリンAIの考え方も重要になる。
AIネイティブ化で問われるのは、個別のモデルやインフラの優劣ではない。データ、モデル、エージェント、インフラ、ガバナンスを組み合わせ、生産性向上とコスト最適化を両立させる全体設計が求められる。
こうした全体設計を支援する仕組みとして、デル・テクノロジーズは「Dell AI Factory」を提供している。AI導入の先にあるAIネイティブ企業への変革には、成果創出とコスト管理を両立させる、適切な仕組みに基づいた設計力が重要になりそうだ。