




生成AIの活用が広がる中、次のテーマとして注目されているのがAIエージェントだ。人の指示を待つのではなく、自律的に判断しながら業務を遂行するAIエージェントは、企業活動や組織のあり方そのものを変える可能性を秘めている。
AIエージェントが企業活動に実装されることによって、人とAIの関係は大きく変わっていくとB&DXの安部 慶喜氏は指摘する。「人がAIに指示を出すのではなく、AIエージェントが人に提案や指示を行う時代になるでしょう。人にしかできない判断は残りますが、従来の仕事の多くはAIに置き換わっていくはずです」
今後、あらゆる企業にとってAIエージェントの導入・活用が必須になると考えられるが、そこには避けるべき「3つの落とし穴」があると安部氏は説く。
1つ目は「業務範囲」の落とし穴である。AIエージェントに幅広い業務範囲を担わせると、「知っていることは多いが、能力は低いエージェント」となってしまう。そのため、1つのAIに複数領域をまたいだ機能を詰め込まず、業務の目的ごとにAIエージェントを細分化することが重要になる。その結果、一部署で数百のAIエージェントが稼働することも想定される。
2つ目は「ロジック処理」の落とし穴だ。AIは推論や非定型な判断を得意とする一方、同じ入力に対して常に同じ結果が求められる処理は、従来型のシステムやルールエンジンに任せる方が適している。システムに任せるべきロジック処理をAIに担わせると、人がアウトプットを細かく確認するプロセスが発生してしまう。
3つ目は「業務手順や業務ルール」の落とし穴である。AIエージェントに質の高い仕事をさせるためには、業務の手順やルールをしっかり覚え込ませる必要がある。手順やルールは頻繁に変更されるため、AI運用を管理する情報システム部門やデジタル部門にその都度、修正を依頼しなければならない。それは大きな業務負荷となるだろう。
それらの落とし穴を回避する方法として、安部氏は「ビジネスオーケストレーション」の活用を推奨する。
「これは、人・AI・システムを組み合わせ、業務プロセス全体を設計・制御・実行する基盤のことです。様々な業務プロセスやルールを一元的に管理し、業務全体をエンドツーエンドで動かすことができます」(安部氏)
例えば、AIが得意な領域はAIエージェントに、確実性が求められるロジック処理はシステムに担わせる。また、業務手順やルールはビジネスオーケストレーション上で一元的に管理し、変更にも対応しやすくする。こうしてAIエージェントにすべてを任せるのではなく、業務全体の中で適切な役割を担わせることが重要だ。「それによって、AIエージェントの能力を最大限に生かすことができます」と安部氏は話す。
AIエージェントが業務に組み込まれると、人は定型的なオペレーションから解放される。それでは、こうした組織の中で、人はどのような役割を果たせばよいのだろうか。
「商品やサービスの品質、コスト、スピードなどを考えながら、よりよい仕組みや手順、ルールを考えていくこと。さらに、新しい事業や新しいマーケットを創出していくこと。つまり、未来の仕事をつくることが人間の役割となっていくでしょう」と安部氏は言う。
企業の形も必然的に変わっていくことになる。「これまでの企業組織はピラミッド型でした。管理可能な単位に人を分割し階層化する。そんな発想で組織はつくられてきました。しかし、オペレーションの大半をAIが担うようになれば、人を管理するための階層は不要となり、組織はフラット化に向かうと考えられます。各専門領域のコア専門家、テーマ別の各種プロジェクト、AIを運営するチームが横並びで活動するイメージです」(安部氏)
今後、競争力の源泉は「AIを持っていること」ではなく、「自社ならではの業務・専門性・顧客価値をどうAIと組み合わせるか」に移っていくだろう。そうなったとき、あらためてそれぞれの企業のコアバリューが問われることになる。人とAIが共存する未来に向けて、今こそ自社のあり方を見つめ直す必要がありそうだ。