



地政学的リスクの高まりや世界情勢の混迷などを背景に、データやAIを自らコントロールし、自律性を確保する「ソブリニティ(主権)」に注目が集まっている。顧客データや技術情報などを外部のプラットフォームに預けるリスクを多くの企業が認識し始めたためだ。
「主要なAIやクラウド技術の多くを自国で保有する米国以外、世界各国でソブリニティの取り組みが進んでいます。欧州ではクラウドやAIサービスの調達時に外国依存のリスクやデータ主権、自律性などを評価する『SEAL』の導入が進んでおり、日本でもソブリニティの確保が不可欠な時代になっています」と、富士通の習田 晋一郎氏は説明する。
同社の岡本 青史氏も、「2026年6月には、国家安全保障上の懸念や輸出管理の影響により、Anthropicの最新AIモデルへのアクセスが一時的に制限される事態も発生しました。こうしたフロンティアAI供給の不安定さを踏まえ、日本企業も持続可能なAI活用を真剣に考える必要があります」と付け加える。
AI時代では企業固有の知識やルール、暗黙知が競争力になる。これらがAIモデルを通じて外部に吸収・共有されれば、それが一気に失われる可能性がある。
「ソブリンの本質は、こうした競争力の源泉を自らコントロールし続けることにあります。単なる技術論ではなく経営課題といっても過言ではありません」(習田氏)
富士通は、ソブリンなAI活用環境の実現を支える幅広い技術を保有している。例えば、高性能と省電力を両立した国産次世代CPU「FUJITSU-MONAKA」は、ハードウエアレベルでセキュリティーを強化する機能を備えている。また、AIプラットフォーム「Fujitsu Kozuchi」にはLLM脆弱性スキャナー&ガードレール技術を導入し、生成AIやLLMの脆弱性を発見し対処。ガードレールを実装した独自LLM「Takane」は、フロンティアモデルと比較して最も高い攻撃耐性を持つことが示されている。
「当社は、コンピューティング基盤からAIプラットフォーム、AIエージェントを含むアプリケーション、さらにはUvance Wayfindersなどのプロフェッショナルサービスまでをフルスタックで提供できる世界でも有数の企業です」(岡本氏)
こうしたフルスタックの強みを生かし、顧客ごとに最適なソブリン環境の構想から実装までを一貫して支援する。
AX時代の競争優位性を生み出すために、経営者は何をすべきか。「AIを本格的に活用し、業務変革や新規事業の創出につなげるには、安全かつ継続的にAIを活用できる基盤づくりが欠かせません。私たちは、AIの信頼性に関わる複雑なテーマをビジネスの現場で分かりやすく捉えるため、AIに信頼を組み込むための考え方を『Trust in AI』として整理しました」と習田氏は語る。
Trust in AIは「説明可能」「安全・公正」「ソブリン」「持続可能」「接続」の要素からなる。「それらを現場で成立させる技術基盤を富士通は既に確立しています」(習田氏)
自社のデータやAIの主権を掌握することが、不確実な時代でも揺るぎない競争優位性を確立するための基盤となる。その実現に向けた第一歩を踏み出すため、まずは信頼できるパートナー選びが重要になる。