




AIはもはや単なるツールではない。物事を自律的に判断して作業を進めるAIエージェントや、現実世界で稼働するフィジカルAIなどが当たり前になる世界も、そう遠くない将来に到来するだろう。
イノベーションを起こすためには、AIの民主化を進め、誰でも利用できるようにすることが肝心だ。同時に、情報の漏えいや不正利用のリスクを減らし、安全・安心を担保することも欠かせない。
「『労働生産性の国際比較2025』によれば、日本の労働生産性はOECD加盟国38カ国中28位と、G7で最下位でした。この後れを取り戻し、日本が成長を遂げるためには、AIを戦略的に活用できるインフラやそれを支えるセキュリティーの構築、業界横断の連携が不可欠です」とシスコシステムズ(以下、シスコ)の濱田 義之氏は指摘する。
A I活用が不可欠なものとなった現在、様々なデータ、システム、人を安全につなぐことの重要性が大きく高まっている。その点、シスコはネットワーク技術をベースに、40年にわたり“つなぐ専門家”としてビジネスを展開してきた企業だ。高速、快適かつ安全なネットワーク技術によって企業や組織の取り組みを支援する。
「AIの民主化に向けて、安全・安心な『責任あるAI』を実現することで、AIと人の協働を支えます」と濱田氏は続ける。その象徴が2022年に公開した「Cisco Responsible AI Framework」である。「透明性」「公平性」「説明責任」「プライバシー」「セキュリティー」「信頼性」という6つのコア原則を定義し、社内と顧客支援の両面でこれを徹底している。
AI・セキュリティー関連企業へのM&Aによるポートフォリオ拡充にも力を入れている。これまでにデータ分析プラットフォームのSplunk、A I監視のGalileo Technologies、サイバーセキュリティーのAstrix Securityなどを買収した。
「それぞれの強みを融合し、AIの安全な活用に必要なブレーキとガードレールを提供しています」と濱田氏は話す。
シスコ自身もセキュアなAI活用を推進している。例えば、社内AIプラットフォームでは、クラウド上のAIに接続する前にローカル環境のLLM(大規模言語モデル)で社外秘情報の削除やフィルタリングを実施。これにより、機密性の高い情報も安全に扱えるようにした。フィルタリングによってトークン量が最適化されるため、処理速度やコスト効率も向上しているという。
「ただ、最大の効果は人が知性を拡張できるようになったことです。AIプラットフォームを使うことで、社員は戦略的な意思決定やお客様との対話により多くの時間を割けるようになりました」と濱田氏は強調する。
さらに、AIセキュリティーの一層の強化、情報発信に向けた取り組みも行っている。複数のフロンティアAIイニシアティブに参画していることはその例だ。
「フロンティアAIは、悪用されれば非常に大きな脅威になります。守る側もAIを使って検知・判断・対応するなど、セキュリティーの考え方を再定義する必要があります」と濱田氏。この新たなリスクに関する議論を深め、広く社会に発信している。AIベンダーや国が主催するイニシアティブに網羅的に参画している企業は、世界でも珍しいという。
「つなぐ会社として、AI時代のお客様のデータや社員、組織の安全を守ることが私たちの使命です。責任あるAIの考え方の下、お客様のビジネスを支えていきます」(濱田氏)
日本企業には、まだ十分に活用されていないデータや属人化したノウハウが多く眠っている。それらをAIとセキュアにつなぐことが、日本の躍進に向けた鍵になるだろう。