




創業以来、人々の暮らしの中により良い習慣を根づかせることを大切にしてきたライオン。一般消費財を中心とする同社の製品は、今や多くの生活者に欠かせないものとなっている。
同社は中長期経営戦略フレーム「Vision2030」を策定しており、2ndSTAGE(2025~2027年)である現在、「収益力の強靭化」をテーマに事業を推進している。
同社の竹森 征之氏は「単に成長を追うだけでなく、資本投下の効率性を重視して持続的に企業価値を高めていく狙いです」と語る。
2nd STAGEの実現に向け、3つの方針を掲げている。1つ目は事業ポートフォリオマネジメントの強化、2つ目は経営基盤の強化、3つ目はダイナミズムの創出である。
オーラルヘルスケアや海外事業の成長、研究開発・DX・コーポレートガバナンスの強化、ブランド資産や人的資本の活用を通じて新たな成長を生み出す。
変革に向けた一連の取り組みにおいて、欠かせないのがデジタル戦略だ。
「ポイントは『経営に直接貢献するデジタル戦略』である点です。データとAIを活用してバリューチェーン全体を進化させることで、企業価値向上につながるDXを推進していきます」(竹森氏)
AIに関しては「生活者・習慣理解」「研究開発」「SCM」「経営」の4つの領域を中心に活用を進めている。具体的には、生活者の声や行動データを収集してインサイトを抽出。研究開発では独自開発のLLM(大規模言語モデル)やAIチャットツールで過去の知見や物質の成分組成、品質情報などを分析する。SCM領域ではAIによる需要予測の高度化などに取り組んでいるという。「そして経営の領域ではAIによる意思決定支援を実現しています。私も日常的に経営ダッシュボードを使っており、現状の把握、経営判断の精度向上に役立てています」と竹森氏は話す。
生成AIについてもいち早く取り組み、2023年5月から「LION AI Chat」を内製して活用している。直近では1週間の利用回数が3万5000回を超えているという。
経営変革やデジタル戦略を推進する上で重要になるのが人材だ。ライオンでは、必要な人材を「デジタル入門人材」「ITデジタル人材(エキスパート人材)」「ハイブリッド人材」の3つの人材群に分けて育成を進めている。
「なかでも鍵を握るのがハイブリッド人材です。ビジネスの専門性とDXスキルを併せ持つこの人材が、現場とエキスパート人材をつなぐハブになることで、組織全体の変革をけん引します」(竹森氏)
DXの実効性を高めるためには、現場の業務課題とデジタル技術を結び付けることが肝心だ。そこで同社では、ハイブリッド人材を事業部門側の人材から育てることを軸にしているという。
育成に向けては、研修実績や取得資格などを基に知識レベルを可視化。DX推進スキル標準に沿って数百項目を自己評価してもらい、必要な育成プログラムを設計・提供している。
「さらに、人事制度そのものの見直しも進めています。ジョブ型とメンバーシップ型のミックスや、デジタルスキルをミドルマネジメント昇進の要件に加えることも検討中です」と竹森氏は語る。人材育成に関わる要素を包括的に最適化することで、一過性の取り組みで終わらせないようにする。これにより持続的な効果創出を狙うのである。
デジタル戦略と人材育成の両面で、経営変革に向けた取り組みを進めるライオン。同社は、Vision2030の実現、そして人々のより良い習慣づくりに貢献するため、事業基盤や組織力の強化を図りながら、その歩みを着実に進めている。