




AIエージェントの活用を考える上で重要なのは、LLMのようなAIモデルがどれほど高性能でも、それ単体では継続的な価値を生み出せないということである。AIモデルは、顧客情報や業務知識など、企業ごとの業務の文脈(コンテキスト)と切り離されているため、単体で高精度な判断を行うことが難しいのだ。
「AIエージェントの価値を引き出すためには、AIモデルに加えて周辺の実行環境を整備することが不可欠です。具体的には、質の高いコンテキストの整備、業務プロセスへの組み込みとそれによるガバナンス遵守とともに、AIエージェントの仕事を継続的に観測・評価する仕組みが重要です」とセールスフォース・ジャパンの三戸 篤氏は説明する。
周辺環境までを視野に入れるこのアプローチは「ハーネスエンジニアリング」と呼ばれている。ハーネスとは、馬の力を安全に馬車へ伝え、進む方向やスピードを人がコントロールできるようにする装具のことである。
セールスフォース・ジャパンは、このハーネスをあらかじめ実装したAIエージェントプラットフォームとして「Agentforce」を提供している。
「当社はナンバー1のCRM(顧客関係管理)ベンダーとして、27年間積み上げてきた顧客接点に関わる様々な業務ノウハウを持っており、それとAIエージェントをネイティブに統合しています。データへのアクセス範囲の制御や権限管理、ガバナンスの機能を組み込んでいるため、AIエージェントを安全に業務プロセスへ組み込むことができます」と三戸氏は言う。
同社は、組織内に分散している構造化/非構造化データ・そしてメタデータを統合するソリューションも持っている。これがプラットフォームに組み込まれていることで、正確な顧客・業務データといったコンテキストをAIエージェントに提供できるようになる。AIの回答や判断、提案の精度を高められるほか、顧客一人ひとりに合わせた対応の最適化も可能だ。
「加えて、AIエージェントの活用で忘れてはいけないのがエージェントのライフサイクル管理です。つくって終わりではなく、継続的に改善を図ることで品質と信頼性を高める視点が求められます」(三戸氏)。AgentforceはAIエージェントの構築、テストから実装、監視、最適化、制御・オーケストレーションまでを一貫して管理し、信頼性を担保しつつ継続的に改善していけるという。
国内でもAgentforceを活用して成果を上げている企業は多い。一例がLINEヤフーだ。世界で1億700万人以上にサービスを提供している同社では、年間の問い合わせ対応件数が330万件に上る。Agentforceを活用することで、対象サービスの問い合わせの約8割をAIエージェントが解決できるようにしたという。
「AIを前提に業務プロセスを再設計し、顧客満足度を維持・向上させながら、大幅な業務効率化を実現しています。会話履歴や顧客情報などのコンテキストがAIエージェントによって共有されるため、担当者が変わる際の引き継ぎもスムーズです」と三戸氏は紹介する。
さらにセールスフォース・ジャパンは、人とAIの協働を支援する機能を強化している。その1つとして、2026年4月に発表したのが「Salesforce Headless 360(現在は「AIforce」へ改名)」である。Salesforce Platformに蓄積された膨大なデータや権限管理、業務プロセスなどは、外部のAIクライアントがセキュアに利用できるように開放され、既に100を超えるAIスキル※を提供中だという。
AIエージェントが継続的に成果を出し、その価値を最大限に拡張できるプラットフォームを提供するセールスフォース。人とAIの協働で成果を上げたいと考える企業に対し、同社のプラットフォームは大きな価値をもたらすことだろう。