




SMBCグループは、2026年度から3年間の中期経営計画で、テクノロジーの活用を経営の柱に据えている。そして、最重要の経営課題の1つと位置付けるのが、グループ全体のAX(AIトランスフォーメーション)の推進だ。
「これから金融機関の競争力は、『AIをいかに使いこなすか』に左右されるようになるでしょう。あらゆるオペレーションやプロダクトを見直し、AI活用を前提としたものへと再設計していきます」と三井住友フィナンシャルグループの中島 達氏は語る。
そのために、今後3年間で1兆円規模のIT投資を計画。レガシーシステムを刷新し、クラウド化率を引き上げるとともに、AIやクラウド領域の専門人材を現在の3倍強に増員する。
「もちろん、お客様の資産や情報を預かる金融機関としてAIがもたらすリスクには細心の注意を払います。しかし、リスクを過度に恐れて利用をためらうことこそが、経営上の最大のリスクだと考えています」と中島氏は言う。
AXの施策は、大きく3段階のアプローチで進めている。
第1段階は「社員全員がAIに慣れ親しみ、日常業務で使ってもらう」。自社で構築した社内向け生成AIサービス「SMBC-GAI」のほか、Microsoft CopilotやGoogle Geminiなど複数のAIツールを導入し、誰でも日常的に使える状態にしている。「生成AIに慣れ親しんでもらう目的で、私の過去の発言データなどを学習させた『AI-CEO』も開発・提供しています」と中島氏は付け加える。
第2段階は「手数を多く、前広に、多くのAI案件に取り組む」。これまでに社内規程の検索を効率化する仕組みや経費・請求書払いを自動化する仕組みなど、多くのAIサービスが誕生し、現在も、グループ全体で100以上のプロジェクトが進行している。
そして第3段階は「競争力の向上に向けた戦略的アプローチも推進」。業務の効率化やサービス品質を高めるボトムアップ型の施策と、グループの競争力強化につながるトップダウンの戦略を並行して推進することで、ビジネスへのAIの実装を進める。
ソフトバンクの子会社と共に「AIオペレーター」を開発し、三井住友カードのコンタクトセンターに導入したのはその一例だ。これにより、24時間365日体制でのパーソナライズされた顧客対応を実現しているという。
SMBCグループは、かねて個人向け総合金融サービスとして「Olive」を、中小企業向け総合金融サービスとして「Trunk」を展開してきた。このような、既にデジタル化されたプラットフォームにおいてこそ、AIは大きな価値を発揮する。そこで同グループは、両サービスにおけるAI活用も積極的に進めているという。
「Oliveには、お客様の新たな相談チャネルとして、24時間365日対応のAIチャット機能を追加しました。無料で資産運用のアドバイスを受けられるコンサルティングサービスを提供しています」と中島氏は紹介する。
Trunkには、ユーザー企業が利用可能な公的補助金を検索できるAIチャットを搭載。また、今後は資金繰りの状況を踏まえて、AIが資金調達の時期や方法をレコメンドし、実行まで支援する機能も実装する予定だ。
「ただし、AIがどれだけ多様なサービスに搭載されるようになっても人の重要性は変わりません。金融サービスは、お客様の将来に向けた重要な意思決定に関わるものが多くあります。だからこそ、AIの力を生かしつつ、お客様の話に耳を傾け、悩みや不安を受け止めて共に考える『人間力』を、私たちは大切にしていきます」と中島氏は強調する。
AIと人が協働することで、顧客との信頼関係を構築する。SMBCグループのAX戦略には、そうした確固たる信念が貫かれている。