




設計段階で作成される3Dデータには、部品の形状や寸法、材料特性、構成情報など、製品に関する重要な情報が詰まっている。製造業では、企画から設計、製造、販売、保守まで多くの部門が製品に関わる。しかし、その起点となる3Dデータは設計部門の中にとどまり、十分に活用されていないケースも少なくないと、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン(以下、Unity)の松原 達也氏は指摘する。
「上流工程で作られた3Dデータは、マーケティングや顧客対応、保守サービスでも活用できます。企画・設計から運用・保守まで、製品ライフサイクル全体でデータをつなぐ『デジタルスレッド』を実現できれば、業務効率や製品価値の向上につながります」
一方で、3Dデータの活用には課題もある。CADソフトは専門性が高く、ライセンス費用も決して安価ではない。部門ごとに用途が異なるため、個別のアプリケーション開発が必要になる場合も多い。その結果、貴重な設計情報が全社で共有されずに埋もれてしまっているのだという。
こうした課題の解決に向けてUnityが提供しているのが、製造業向け3Dプラットフォーム「Unity Industry」だ。
大きな特徴の1つは、70種類以上の3Dデータ形式に対応していること。CADデータも取り込み、用途に応じた形式へ変換・最適化できる。VR向けなら精密度を最適化するなど、利用環境に応じた軽量化も可能だ。
「集約したデータには、必要な部門がWebブラウザー経由で安全にアクセスできます。そのデータを活用して作成したアプリケーションは、パソコンやスマートフォン、VRデバイス、車載ディスプレーなど幅広い環境へ展開できます。オフィスや現場で利用するデバイスが変わっても、一から作り直す必要はありません」(松原氏)
こうした仕組みにより、シミュレーションやVRトレーニング、デジタルツイン、顧客体験の向上など、3Dデータの活用範囲は大きく広がる。さらにPLM(製品ライフサイクル管理)などの情報をひも付ければ、設計データを単なる設計資料ではなく、企業全体で活用する中核資産に変えることも可能だという。
今後に向けて、松原氏が特に注目するのが、AIによる3Dデータ活用だ。現在、多くの企業でAI活用が進んでいる。文書や画像、音声を利用した取り組みは一般的になりつつあるが、製造業にとって重要な知的資産である3Dデータは、まだ十分に活用されているとは言い難い。そこでUnityは、データ変換して取り込んだ設計データをAIが扱える形式へ変換する検証を行った。
3DアセットとBOM(部品表)の情報から属性付き画像を生成し、LLM(大規模言語モデル)で解析したところ、「構造的頑丈さ」「保守性」「製造性」「性能推定値」「設計の焦点」などに関する評価結果が出力されたという。
この検証は、3DデータがAIの有効なデータソースになり得る可能性を示している。将来的には製品評価だけでなく、法規制やコンプライアンスへの適合性確認などへの応用も期待されるだろう。
「設計情報をAIに活用させることで効率化できる業務は数多くあります。その意味で3Dデータは、企業にとってまさに『宝の山』です。私たちはこれまで、大規模な3Dアプリケーション開発を支援してきました。今後は、これまでに培った知見やノウハウも広く発信していきたいと考えています」(松原氏)
これまで設計部門の中に閉じていた3Dデータは、全社で活用する情報基盤へ、さらにAI活用を支えるデータソースへと進化しつつある。Unity Industryは、その変革を支える基盤として、製造業の新たな可能性を切り開こうとしている。