




AIの進化によって、労働力に対する考え方が大きく変わりつつある。これまでは人にしか提供できなかった労働力の構成要素である「知能」を、AIも提供できるようになったからだ。競争優位を生む要因も変わる。企業の資本力や規模、システム環境などに加えて、今後はAIの知能の下地になる「データ」や、「現場に蓄積された知識」も価値の源泉となる。
「企業・組織の現場には、社員の経験や業務ノウハウ、顧客理解などの暗黙知が膨大に存在しています。生成AIによってこの暗黙知を資産化し、企業の価値に変えることが、これからの競争のカギを握ります」とSCSKの當麻 隆昭氏は語る。
暗黙知を活用する上では、ガバナンスとセキュリティーも重要になる。情報漏えい、不適切なデータの利用はもちろん、AIの誤判断への対策や説明責任が求められる。
「ガバナンスとセキュリティーを確保しつつ、暗黙知を価値に変えるためには、ネットワークからアプリケーションまで一体で守り、運用できる仕組みと体制が不可欠です」(當麻氏)
しかし、こうした仕組みや体制の整備は、まだ多くの企業で途上の段階にある。「部分最適は進むが、全社の価値を生み出せない」といった構造的な課題に直面する企業も少なくないという。「そこで当社は、お客様の変革を構想にとどめず、成果に直接貢献する価値を生み出すための支援を行っています」と當麻氏は話す。
SCSKは、住友商事グループのIT中核企業として、ITインフラやシステム開発、BPOなどの多彩なサービスを提供する企業だ。2024年には、ネットワンシステムズとの統合によってネットワークインフラ領域のケイパビリティを増強。これにより、セキュリティーやガバナンスの要件を満たしたアプリケーションとインフラを、一体的に提供できる体制を構築した。
業務・システム・基盤インフラを1社でカバーすることで、顧客の変革をトータルに支援する。これは當麻氏が社長就任以来、注力してきたことである。
「さらに2025年には、親会社である住友商事の100%子会社となって事業基盤も拡充しました。この体制を基に、AIを前提に業務プロセスを変革し、デジタルの力でお客様や社会の課題を解決する『AX※ Enabler』になることをSCSKは目指しています」(當麻氏)
※ AIトランスフォーメーション
顧客のAXを支援する中核ソリューションが「NebulaCore BPR」である。SCSKが自らAXを実践して得た知見を結集することで、AIドリブンで顧客の業務プロセス変革を支援するソリューションだ。
「AIが文書を読み解いて内容把握をアシストしたり、社員同士の会話から業務の流れを可視化して、プロセスのボトルネックを洗い出したりすることができます。これを軸に、人とAIが協調して働く、AIネイティブな業務モデルを設計・実装します」(當麻氏)
上流から下流までの業務プロセス全体にAIを適用し、「AIにできることはAIに任せる」環境を実現する。これにより、ビジネスにこれまでにない俊敏性をもたらすという。自社の成功や失敗体験を基に、顧客企業が壁にぶつかった際に伴走型で支援する。
「NebulaCore BPRは、SCSK自身が変わるために行ってきた、様々な取り組みから生まれたものです。今後はこのサービスをさらに質の高いものへと育てていきつつ、一層広範なお客様・パートナー様と共に、AIネイティブなビジネスづくりを進めたいと考えています」と當麻氏は強調する。
AIは、単にテクノロジーの世界に変化をもたらすだけのものではない。人や組織内の暗黙知の価値や、顧客との関係性を大きく変えるものであり、これをどう使うかが今、企業・組織に問われている。その認識を持って取り組みを進められるか否かが、企業の成長力を左右することになるだろう。