




クレジットカード、リース、ファイナンス、グローバル事業など多岐にわたるビジネスを手掛けるクレディセゾン。同社は、「CSAX(クレディセゾンAIトランスフォーメーション)戦略」のもと、生成AIを用いた業務改革に全社を挙げて取り組んでいる。
「目指すのは、約3700人の全社員がAIを使いこなして業務生産性を高められるようになる“AIワーカー化”です。2025年9月にスタートしたこの施策の目標の1つは、2027年度末までに累計300万時間の業務時間を削減することです。これは社員1500人分の年間労働時間に相当します」と水野 克己氏は語る。
CSAXを通じて積極的にAIを活用する文化が社内に根付き、様々な非エンジニア社員が現場主導でAXを実践するようになった。そこから生まれた施策の一例がコールセンターのロールプレイ練習用GPTだ。AIが想定顧客となり、高い教育効果を得られているという。
このように、いまやクレディセゾンは「AI前提経営」の先駆者と呼べる存在だが、DXへの取り組みは数年前までむしろ遅れていた。完了までに10年を要した基幹システムの更改に経営資源が集中し、DXを担うデジタル人材の育成も進まなかったのだ。
変革のきっかけになったのは、自らも優秀なプログラマーで起業経験もある小野 和俊氏をCTO(最高技術責任者)として2019年に迎え入れ、社内システムの内製化を開始したことである。これを起点として、2021年から全社員がデジタル技術を活用してビジネスを変革する「CSDX(クレディセゾンデジタルトランスフォーメーション)戦略」を打ち出した。
「役員の多くが出席するCSDX推進会議の定例報告後に、部署や役職の垣根を越えて多様な視点やアイデアをぶつけ合う自由討論を行うようになりました。その席上で小野が、2022年11月に公開されて間もなかったChatGPTを用いたデモを示したところ、全員が生成AIに大きな可能性を感じました。経営層自らが変革を加速しようとする姿勢が、やがて全社に波及していったのです」(水野氏)
このCSDX戦略の新たなフェーズとして始動したのがCSAX戦略だ。そこでは先に紹介した業務省力化の取り組みに加え、ベテラン社員の経験や判断力を組織でも再現できるようにする「暗黙知の可視化」といった意欲的な試みも行われている。個人の知見を共有できれば、意思決定の標準化や高度化につながる。
加えて、水野氏が常日頃から口にしているのが「AIを活用して得られた成果は顧客に還元されるべき」ということである。
「効率化によって捻出した300万時間を、お客様との価値ある時間に振り向ける。そこから新規事業のアイデアが生まれ、より多様な外部パートナーとのつながりも生まれる。社会・お客様・社員にとって新たな価値を継続的に創造するサイクルを回して企業価値を持続的に向上させることこそ、AI前提経営がもたらす効用だと思います」(水野氏)
そして、2030年をめどにクレディセゾングループが目指すのが「GLOBAL NEO FINANCE COMPANY」だ。金融をコアにした総合生活サービスを国内外で展開するとともに、広範なパートナー連携によって顧客ニーズへの対応と持続的成長を図る。その原動力となるのも、AI前提経営がもたらす成長サイクルだと水野氏は考えている。
長年DXに苦しんだ企業が、組織変革の積み重ねの先に全社員AIワーカー企業へと変貌を遂げた。同社の取り組みは、生成AI時代に重要なのがツールの導入ではなく、自ら活用する組織文化の醸成であることを示している。