




IBMは2023年から、自社を最初の顧客と位置付ける生産性改革「Client Zero(クライアント・ゼロ)」に取り組んでいる。AIや自動化の活用で2025年末までに約45億ドル相当の生産性向上を生み出し、その知見を惜しみなく顧客支援に生かしている。
「AI活用はこれからの経営に必須ですが、そこで重要なのは特定のプラットフォーマーに依存せず、自社で制御できる『デジタル主権』を確立することです」と日本IBMの村田 将輝氏は語る。
「オープンスタンダード」「オープンアーキテクチャー」「オープンソース」に重きを置くIBMは、Red HatやHashiCorp、Confluentなどの買収を通じて事業ポートフォリオを再構築するとともに、パートナー企業とのエコシステムも拡大している。日本IBMは、Client Zeroを通じて得たノウハウを結集したソリューションを基に、顧客のデジタル主権を守りながら、迅速かつ生産的で安全なAI活用の実現を支援していく。
ユーザー企業の価値を高めるための重点施策の1つが、ソフトウエア開発の全工程にAIを組み込む「AI駆動型開発」の支援だ。「開発主体が人かAIか」「チーム中心のエンタープライズ開発か個人中心のプロトタイピングか」などでAI駆動型開発はいくつかのタイプに分かれるが、日本IBMが特に力を入れるのが、ユーザー企業にとって難易度が高い半面、効率化の効果も高い「仕様駆動開発」である。開発前に仕様を文書化し、それを基準としてAIがコードを生成する手法で、そのエンジンとなるのがAIエージェント駆動のエンタープライズ向け開発支援パートナー「IBM Bob」だ。
AIコーディングツールの運用ではトークンの予算管理が課題となりがちだが、IBM Bobは指示内容に応じてAIモデルや専門ツールを的確に使い分けることで、作業速度を高めながらトークンの消費を抑制。100万トークン当たりの費用は約200円と業界最安クラスを誇るという。
とはいえ、成果物の品質や整合性を人が都度チェックしていては、トータルの生産性は高められない。その課題を解消するために開発されたのが、日本IBM独自の大規模開発ノウハウをAI向けに文書化・構造化した「ALSEA:AI Lifecycle Shared Engineering Artifacts」だ。IBM BobはこのALSEAを参考書として成果物をつくる。
「当社のソフトウエア開発部門がAI駆動型開発に取り組み始めた2025年に平均45%の生産性改善を達成しました。2027年以降はシステム開発プロジェクト全体を対象に仕様駆動開発を定着させ、工数35%、開発期間30%削減を目標にしています」と村田氏は語る。
もう1つの重点施策が、脆弱性の発見や攻撃コードの生成を飛躍的に高速化するフロンティアAIによる脅威への対策だ。IBMはAnthropic主導のサイバー防衛プロジェクト「Project Glasswing」や、金融庁の作業部会への参画、グループ会社のRed Hatと共に推進するオープンソースソフトウエアのセキュリティー強化プロジェクト「Project Lightwell」などを通じ、社会を支えるシステムの安定化に尽力している。
ユーザー企業のシステム保護にも万全を期し、ネットに接続するITシステムを守る「短期対応」、複数のフロンティアAIを使って脆弱性をあぶり出し、攻撃された際の被害を最小化する「優先対応」、スキャンした情報を基に大きな脅威に対するリスク管理能力を集中的に構築する「本格対応」と多層的な防御策を用意している。
「最後の仕上げとなるのが、AIが自律的にリスク管理、脅威分析、防衛などのセキュリティー・オペレーションを行う『AIエージェント対応』です。これらのセキュリティー対策もすべて自社内で実践済みで、お客様に実証的な価値をお届けすることが可能です」と村田氏は述べ、AIファースト経営の推進のために経営者がセキュリティー意識を高めることの重要性を強く訴えた。