



スピードスケートとフィギュアスケート。競技は異なるが、共に世界の頂点を経験した髙木 美帆氏と坂本 花織氏。最高峰の舞台で戦い続けた二人は、プレッシャーや失敗とどのように向き合ってきたのだろうか。
髙木氏は、周囲からの期待と自分自身に課す期待という「2つのプレッシャー」があったと振り返る。ただし、その向き合い方には明確な軸があった。「周りから何を言われても、1秒でも速く滑りたいという自分の気持ちは変わりません。目標が明確だったからこそ、プレッシャーは重荷ではなく応援に変わりました」(髙木氏)。
一方の坂本氏は、高い目標をあえて公言してきたという。周囲の声をシャットアウトするのは難しいため、自ら宣言し力に変えるアプローチだ。「世界選手権連覇や五輪でのメダル獲得を口にすることで、そこに向かうために何をすべきかが明確になります。そうやって自分を追い込むようにしていました」と坂本氏は語る。
トップアスリートであっても、思い通りの結果ばかりが続くわけではない。失敗したときや悩んだときに何を考えるかが、その後の成長を左右する。
髙木氏は「失敗」と呼べる経験はあまりないと語る。「結果が出なくても、それは失敗ではなく実力不足だととらえていました。失敗というより準備不足ですね。準備は一日で挽回できるものではないので、少しずつ積み上げていくしかありません」と髙木氏は話す。
一方の坂本氏は2022年の北京五輪後、自身の感覚と周囲の評価とのギャップに悩んだという。「満足いく演技ができなかった大会でも表彰台に乗り続けていて、そのことに苦しさを感じていました。そうした中、ある大会で連続してミスしてしまい、結果5位になったのですが、そこで自分の感覚と評価が一致して、すっと気持ちを切り替えることができました」と坂本氏は振り返る。そこから前向きに練習に取り組み、2週間後の全日本選手権で優勝を果たした。結果そのものよりも、それをどう受け止め、成長につなげるかが重要ということだ。
自らが成長し続けるためには準備が欠かせない。「一流の準備術」の勘所は何なのか。
髙木氏が強調したのが「準備に完成はない」ということだ。「変化は一夜にして起きることはないので、日々少しずつ準備を重ねて、目標に向かって変化・成長していくことが大切です」
また坂本氏は、ジュニア時代にコーチに言われた「練習は試合のつもり、試合は練習のつもりで」という言葉を大切にしてきた。
「当時は意味が分かりませんでしたが、世界選手権や五輪に出られるレベルになったときに真意を理解できました。どれだけ練習したかで、本番の心の落ち着きがまるで違います」(坂本氏)。プレッシャーに勝つためにも、準備がいかに大切かが分かるエピソードといえる。
プレッシャーを応援に変える髙木氏と、自らに圧をかけて成長を促す坂本氏。アプローチは異なるものの、両者に共通していたのは、結果に一喜一憂しないマインドセットと、自分に必要な準備を積み重ねる姿勢だった。限界を突破し続けることで、世界最高峰の舞台で戦ってきた両氏の言葉は、自分自身と向き合うことの大切さを改めて教えてくれた。