




AX(AIトランスフォーメーション)の重要性が叫ばれる中、日本企業のAI活用は欧米諸国や中国などに大きく後れているといわれている。伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)の新宮 達史氏は、この状況をIT投資と経済成長の関係性を基に次のように読み解く。
「過去30年間の米国企業と日本企業のIT投資の推移を見ると、両者の差は、ナスダック総合指数と日経平均の伸びの差とほぼそのまま重なります。つまり、IT投資の量が経済成長に一定の影響を与えていると思われます」
日本企業のIT投資額が伸びない理由として考えられるのは、「IT=コスト」という意識が根強いことだ。また、ROI(投資利益率)にこだわりがちなのも日本企業の傾向といえる。AI活用の後れも、これら複数の要因が招いたものといえるだろう。
「ROIはもちろん重要ですが、AIは導入後すぐに利益をもたらすテクノロジーではありません。先行投資する視点を持つとともに、評価指標としては利用率や利用時間、業務への浸透度などのKPI(重要業績評価指標)にも目を向けるべきです」と新宮氏は述べる。
その上で、AXを推進し、AIを競争力に変えるためには、3つの壁を乗り越えることが重要だと新宮氏は指摘する。
1つ目は、AIが業務フローに組み込まれておらず、局所的な効率化にとどまってしまう「価値連鎖の壁」。2つ目は企業固有のナレッジを、AIが学習・参照可能なデータベースとして整備できていない「知の資産化の壁」。そして3つ目が、新たな知見を継続的にAIに学習させられない「継続進化の壁」だ。これらの壁を越えられれば、定型作業はAIエージェントに任せ、人は付加価値の高い領域や成長領域に専念できるようになる。
「これからの時代、AIはヒト、モノ、カネに次ぐ第4の経営資源だと私は考えています。ヒトを育てるのと同じく、AIを継続的に育てていくことが、AI活用を前提とした企業経営には不可欠です」と新宮氏は続ける。企業独自の知をAIに組み込むことによって、ROIはついてくる。
CTC自身もAIによる価値創出に取り組んでいる。中でも今、力を入れているのがAI駆動開発だ。システムの開発のプロセスにAIを組み込み、新たな価値を生み出すアプローチである。
「AIに精通したFDE※がお客様企業に入り込み、事業課題を発見して解決策を検証・提案するほか、業務への実装、成果創出、定着化にも伴走します」(新宮氏)
従来型のシステム開発では、要件定義から実装までの全工程を人間が行っていた。そのうち自動化が可能な領域を大きくAIに任せることで、開発全体の効率化・迅速化を図るとともに、人は顧客の経営課題の整理や構想策定、価値創出につながるような、より創造的な業務に注力できるようになる。
その結果、システム開発の上流工程に当たる経営コンサルティング機能の強化にもつながっている。経営課題の可視化からシステムの企画・設計、開発、運用まで、顧客をトータルにサポートできる体制の構築を進めている。
「伊藤忠グループは国内外の様々なIT関連企業やコンサルティング会社などに出資しています。上流から下流まで、DX/AXの全工程をカバーできる体制によってお客様の取り組みを支援します」と新宮氏は強調する。
IT投資の伸び悩みが1つの要因となって、引き起こされた「失われた30年」。AI時代に日本が同じ轍を踏むことのないよう、CTCは全力で支援する。同社が25年2月に定めたブランドプロミスは「世界をGOODに」。新宮氏の目にはより良い未来が見えている。
※ Forward Deployed Engineer:顧客の業務現場に入り込み、AIなどのテクノロジーを駆使して課題を解決するエンジニア職