──再生可能エネルギーという言葉すら十分浸透していなかった時期に比べると、昨年7月には「再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度」がスタートしたこともあり、現在では企業関係者や一般市民の環境・エネルギーに対する関心も飛躍的に高まったと感じるのではないですか。
松本: 本当にその通りですね。今、全国でエネルギー問題などをテーマに講演させていただく機会がありますが、会場を見回すとほとんどが男性、ビジネスパーソンです。エネルギービジネスの現況や市場参入の具体的な手続きを知りたいというニーズが非常に高くなっていると感じます。かつて家庭の主婦やお子さんを対象に省エネを啓蒙する活動をしていた私からすると、環境・エネルギー分野のビジネスがごく短期間で大変な広がりを持つようになったことに驚くばかりです。
ビジネスが動き出したのは、東日本大震災と東京電力・福島第一原子力発電所の事故の後、国がエネルギー政策を見直すようになったのが大きな要因だと思います。太陽光発電は以前から注目度の高いビジネスでしたが、2012年7月に固定価格買い取り制度がスタートした後は、もともとエネルギービジネスを手掛けている企業だけでなく、異業種からも参入しようという動きが目立って増えました。
再生可能エネルギーの中では地熱発電に対する注目度も急浮上しています。関係者にうかがうと、震災前は国の予算がつかず、研究・開発が停滞した「失われた15年」を過ごしていたそうです。固定価格買い取り制度の対象となり、規制緩和が進んだことで風向きが大きく変わりました。
私が東大で活動を始めてからの5年間は、エネルギー市場激動の時期でした。その渦中、研究の最先端の仕事に関わることができたのは本当に貴重で面白い経験でした。
──再生可能エネルギーとともに最近、同じく分散型エネルギーであるコージェネレーション(熱電供給)システムへの注目度も高まっています。松本さんはコージェネの可能性をどう見ていますか。

松本氏は、「電力と熱を生み出すコージェネの価値は非常に高く、今後、普及させていくべき技術だと考えています」と話す
松本: 2年前、ドイツを訪れ、分散型エネルギーで100%自立している自治体を研究調査したことがあります。それらの自治体はみな風力発電、太陽光発電、バイオマス発電などに加えてコージェネシステムを活用していました。天候などにより供給が不安定になる風力発電、太陽光発電を補う形で、コージェネを上手に活用しているのがとても印象的でした。
日本では東日本大震災後、エネルギー問題が活発に議論されるようになりましたが、多くは電力に関わることです。実際に今、エネルギーを効率よくコントロールするHEMS(住宅エネルギー管理システム)やBEMS(ビルエネルギー管理システム)などが浸透しつつあります。
ただ、BCP(事業継続計画)の観点から言うと、電力ネットワークだけですべてを賄うのはリスクがあるのではないでしょうか。ガスや燃料電池などから電力と熱を生み出すコージェネの価値は非常に高く、今後、普及させていくべき技術だと考えています。