前回に続き、科学技術やイノベーションの分野で産学官連携の研究開発を行う「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」などを担当する内閣府の赤石浩一政策統括官とエネルギーシステム研究の第一人者として国のエネルギー政策に長年かかわってきた東京工業大学の柏木孝夫 特命教授/名誉教授が語り合う。SIPの3本柱に据えた「ワイヤレス電力伝送システム」「革新的炭素資源高度利用技術」「ユニバーサルスマートパワーモジュール」や、それらをネットワーク化し、全体最適化するための「エネルギーマネジメント」について、研究開発における思想や実現した際の影響の大きさなど議論を深めた。日本が持つ技術をシステム思考で上手に活用することで、地方創生も実現でき、世界が抱える問題解決にも貢献できると確認し合った。
柏木孝夫氏(以下敬称略): 政府は今、科学技術やイノベーションの分野で産学官連携の研究開発を行う「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」を推進しています。SIPで取り組む12の課題のうちの一つが「脱炭素社会実現のためのエネルギーシステム」。私はこの課題のプログラムディレクターを務めています。
2018年夏には、新たに2022年度まで取り組む第2期の計画を発表し、日本が主導的地位を担うべき基盤技術として、「ワイヤレス電力伝送システム」「革新的炭素資源高度利用技術」「ユニバーサルスマートパワーモジュール」の3本柱を据えました。さらに、いちばん大事なのが、これらをネットワーク化し、全体最適化するための「エネルギーマネジメント」。ここでも、「System of the Systems」の発想がカギを握ると考えています。

「ワイヤレス電力伝送システムが実現すれば影響は極めて大きいと思います。エネルギーの少し先を行く情報通信の世界では、無線化が進んだことで世の中が大きく変わりました。電力も無線になったら、産業、社会インフラ、ライフスタイルなどに大革新をもたらすでしょう」(赤石氏)
赤石浩一氏(以下敬称略): これまでにもスマートコミュニティーなどの取り組みはしてきましたが、個別のプロジェクトは進んでも、エネルギー全体のアーキテクチャーができていませんでした。SIPでプログラムディレクターを務める柏木先生が個別テーマにエネルギーマネジメントをかぶせ、「System of the Systems」によってエネルギーの全体構造を描こうとしたのは大変素晴らしいことだと感じています。
個別テーマでいうと、ワイヤレス電力伝送システムが実現すれば影響は極めて大きい。エネルギーの少し先を行く情報通信の世界では、無線化が進んだことで世の中が大きく変わりました。電力も無線になったら、産業、社会インフラ、ライフスタイルなどに大革新をもたらすでしょう。