柏木孝夫氏(以下敬称略): 電力・ガスの自由化によって、エネルギー市場は大きく変化しつつあります。一つの波が大規模電源から分散型電源への移行です。従来、電力会社は電力需要のピークに合わせて電源を持っていました。例えば、ある電力会社の管内では年間1%ほどしか稼働しない電源が全体の7.5%もありました。運送業にたとえれば、1年に3~4日しか動かないトラックが100台のうち7~8台もあるということです。市場原理の中では、こうした稼働率の低い設備は抱えられません。代わってコージェネレーション(熱電併給)システムや再生可能エネルギーなどの分散型電源の普及を進めていくことが必要です。
参考にすべきはドイツのシュタットベルケ(地域インフラ公社)。日本でも2014年、総務省が「自治体主導の地域エネルギーシステム整備研究会」を立ち上げました。全国に1700ある自治体がコージェネなどを導入し、熱導管を通し、自然エネルギーを取り込みながら、エネルギーの地産地消を実現すれば、自立的で持続可能な災害に強いエネルギーシステムを構築できます。地域で雇用を創出し、地域経済活性化につなげることもできます。

「地域新電力の恩恵を受け、町民のみなさんもエネルギー問題に対する意識がとても高くなりました。こうした取り組みが全国中の自治体に広がれば、間違いなく地方創生につながると思います」(小渕氏)
小渕優子氏(以下敬称略): 私の選挙区である群馬県第5区の吾妻郡中之条町には中之条町と民間事業者とが共同出資して2013年に設立した地域新電力「中之条電力」があります。2014年から再生可能エネルギーでつくった電力を中心に町内で販売し、その利益は再生可能エネルギーの普及推進のために使用しています。今はメガソーラーによる発電が中心ですが、今後は小水力、バイオマスなどによる発電にも拡大していく計画です。地域新電力の恩恵を受け、町民のみなさんもエネルギー問題に対する意識がとても高くなりました。こうした取り組みが全国中の自治体に広がれば、間違いなく地方創生につながると思います。
柏木: エネルギー自由化のもう一つの大きな変化がコミュニティや家庭にキャッシュの流れが生まれること。固体酸化物形燃料電池(SOFC)のように小さくても高効率なシステムもあります。コージェネや自然エネルギーなど小規模な発電・蓄電設備を備えた分散型エネルギーシステムを構築し、デジタル技術でデマンドをきめ細かく制御すれば、電気料金が高い時に売り、安い時に買って貯めるといったことができる。家庭でも「エネファーム」を導入すれば、売るものができる。快適に暮らせる上にちょっとしたお小遣い稼ぎにつながるかもしれません。機器に投資した後のペイバックタイムも短くなります。コージェネがコミュニティや家庭で機能するようになると、より多くの再生可能エネルギーを取り込めます。
小渕: 私の選挙区は山の中の村や町が多く、有事の際には孤立する危険性があります。それぞれの自治体は危機感を持って非常用電源を確保しておこうと動いています。分散型エネルギーシステムにはそういう面での期待も大きいですね。固定価格買い取り制度が導入された当初は太陽光発電に対する関心が高まっていましたが、最近はバイオマス発電にも人気が集まっています。