インタビュー

[新春特別対談] 水素社会実現による新たな価値創生 2020年、東京を水素社会のショーケースに(後編)

[新春特別対談] 水素社会実現による新たな価値創生 2020年、東京を水素社会のショーケースに(後編)
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2018年1月17日(水)公開
構成・文/小林佳代 写真/加藤康
 

前回の前編に続き、自民党議員連盟「FCV(燃料電池自動車)を中心とした水素社会実現を促進する研究会」(通称:水素議連)の会長を務める元経済産業大臣の小渕優子 衆議院議員とエネルギーシステム研究の第一人者として国のエネルギー政策に長年かかわってきた東京工業大学の柏木孝夫 特命教授/名誉教授による対談の後編。議論のテーマは自治体主導の地域エネルギーシステム構築の重要性や地熱エネルギーの有望性などに及ぶ。「パリ協定」が発効し、世界が「低炭素」から「脱炭素」へと舵を切る中、日本はあらゆる技術を結集し、二酸化炭素(CO2)排出を抑制したエネルギーシステムを構築することが急務であることを確認した。

日本版シュタットベルケで地方創生を

柏木孝夫氏(以下敬称略): 電力・ガスの自由化によって、エネルギー市場は大きく変化しつつあります。一つの波が大規模電源から分散型電源への移行です。従来、電力会社は電力需要のピークに合わせて電源を持っていました。例えば、ある電力会社の管内では年間1%ほどしか稼働しない電源が全体の7.5%もありました。運送業にたとえれば、1年に3~4日しか動かないトラックが100台のうち7~8台もあるということです。市場原理の中では、こうした稼働率の低い設備は抱えられません。代わってコージェネレーション(熱電併給)システムや再生可能エネルギーなどの分散型電源の普及を進めていくことが必要です。

 参考にすべきはドイツのシュタットベルケ(地域インフラ公社)。日本でも2014年、総務省が「自治体主導の地域エネルギーシステム整備研究会」を立ち上げました。全国に1700ある自治体がコージェネなどを導入し、熱導管を通し、自然エネルギーを取り込みながら、エネルギーの地産地消を実現すれば、自立的で持続可能な災害に強いエネルギーシステムを構築できます。地域で雇用を創出し、地域経済活性化につなげることもできます。

「地域新電力の恩恵を受け、町民のみなさんもエネルギー問題に対する意識がとても高くなりました。こうした取り組みが全国中の自治体に広がれば、間違いなく地方創生につながると思います」(小渕氏)
「地域新電力の恩恵を受け、町民のみなさんもエネルギー問題に対する意識がとても高くなりました。こうした取り組みが全国中の自治体に広がれば、間違いなく地方創生につながると思います」(小渕氏)

小渕優子氏(以下敬称略): 私の選挙区である群馬県第5区の吾妻郡中之条町には中之条町と民間事業者とが共同出資して2013年に設立した地域新電力「中之条電力」があります。2014年から再生可能エネルギーでつくった電力を中心に町内で販売し、その利益は再生可能エネルギーの普及推進のために使用しています。今はメガソーラーによる発電が中心ですが、今後は小水力、バイオマスなどによる発電にも拡大していく計画です。地域新電力の恩恵を受け、町民のみなさんもエネルギー問題に対する意識がとても高くなりました。こうした取り組みが全国中の自治体に広がれば、間違いなく地方創生につながると思います。

柏木: エネルギー自由化のもう一つの大きな変化がコミュニティや家庭にキャッシュの流れが生まれること。固体酸化物形燃料電池(SOFC)のように小さくても高効率なシステムもあります。コージェネや自然エネルギーなど小規模な発電・蓄電設備を備えた分散型エネルギーシステムを構築し、デジタル技術でデマンドをきめ細かく制御すれば、電気料金が高い時に売り、安い時に買って貯めるといったことができる。家庭でも「エネファーム」を導入すれば、売るものができる。快適に暮らせる上にちょっとしたお小遣い稼ぎにつながるかもしれません。機器に投資した後のペイバックタイムも短くなります。コージェネがコミュニティや家庭で機能するようになると、より多くの再生可能エネルギーを取り込めます。

小渕: 私の選挙区は山の中の村や町が多く、有事の際には孤立する危険性があります。それぞれの自治体は危機感を持って非常用電源を確保しておこうと動いています。分散型エネルギーシステムにはそういう面での期待も大きいですね。固定価格買い取り制度が導入された当初は太陽光発電に対する関心が高まっていましたが、最近はバイオマス発電にも人気が集まっています。

 
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プロフィール
小渕 俊光(ふじき としみつ)氏

小渕 優子(おぶち ゆうこ)
元経済産業大臣
自由民主党 衆議院議員
自民党議員連盟「FCV(燃料電池自動車)を中心とした水素社会実現を促進する研究会」(通称:水素議連)会長
1973年群馬県生まれ。96年成城大学経済学部卒業。2006年早稲田大学大学院修了。1996年東京放送入社。99年衆議院議員秘書を経て2000年衆議院議員に当選。06年文部科学大臣政務官、08年内閣府特命担当大臣(少子化対策・男女共同参画・公文書管理・青少年問題・食育)、10年自民党人事委員長、11年自民党幹事長代理に就任。12年第2次安部内閣で財務副大臣を務める。13年衆議院文部科学委員長を経て14年第2次安部改造内閣で経済産業大臣および内閣府特命担当大臣(産業競争力・原子力経済被害・原子力損害賠償・廃炉等支援機構)に。16年10月に水素議連会長に就任。群馬県第5区で当選7回。

柏木 孝夫(かしわぎ たかお)氏

柏木 孝夫(かしわぎ たかお)
東京工業大学 特命教授/名誉教授
コージェネ財団 理事長
1946年東京生まれ。70年、東京工業大学工学部生産機械工学科卒。79年、博士号取得。東京工業大学工学部助教授、東京農工大学工学部教授、東京農工大学大学院教授などを歴任後、2007年より東京工業大学ソリューション研究機構教授、12年より特命教授/名誉教授。11年よりコージェネ財団理事長。経済産業省の総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会長などを歴任し長年、国のエネルギー政策づくりに深くかかわる。現在、同調査会の省エネルギー・新エネルギー分科会長、基本政策分科会委員などを務める。主な著書に「スマート革命」「エネルギー革命」「コージェネ革命」など。

News & Topics

経済産業省の総合資源エネルギー調査会基本政策分科会が取りまとめた「第5次エネルギー基本計画(案)」が公開され、当財団としてパブリックコメントを提出いたしました。その結果および「第5次エネルギー基本計画におけるコージェネの位置づけ」について、資料を取りまとめております。

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