
「来年には電力を選べる時代になるのですから消費者もしっかり勉強して正しい知識を得ないといけませんね」(木場氏)
木場弘子氏(以下敬称略):柏木先生とは9年ほど前、経済産業省が主催するシンポジウムで一緒に全国を回った経験があります。それから10年足らずですが、東日本大震災や東京電力福島第1発電所の事故を経て、エネルギーを取り巻く環境は大きく変わりました。今日はじっくり、その辺のお話をお聞きしていきたいと思います。
まずはエネルギーミックスについてです。現実的かつバランスの取れたエネルギー需給構造の将来像を検討するため、今年1月から経済産業省の長期エネルギー需給見通し小委員会で有識者の方々が「2030年時点の望ましい電源構成(エネルギーミックス)」を議論してきました。
この小委員会は先日、ベストミックス案を含む「長期エネルギー需給見通し(案)」を公表しました。柏木先生は、この小委員会の委員でもあります。日本のエネルギーミックスはどうなるのか、将来像について改めてご説明をお願いします。
柏木孝夫氏(以下敬称略):この小委員会ではまず2030年に電力をどれぐらい使うのかの予測から始めました。GDP(国内総生産)の伸びを平均1.7%と予想し、2030年の実質GDPを711兆円と推計しました。普通はGDPが増えればエネルギー使用量が伸びますが、これを高効率な省エネ機器やエネルギーマネジメントシステム、LED照明の導入など最大限の省エネ対策を実施することで18%節電。2030年の電力使用量は約1兆キロワット時と見通しを立てました。
ここから、どういうベストミックスを実現するか。問題は3つありました。第1にエネルギー自給率、第2に電力コスト、第3に二酸化炭素(CO2)排出量です。
第1のエネルギー自給率について言うと、震災前は2割程度でしたが、震災後、原発が止まってしまったため、今は6%に落ち込んでいます。
木場: 短期間でずいぶん下がってしまいました。6%というエネルギー自給率はOECD(経済協力開発機構)加盟34ヵ国中、下から2番目という低い水準だそうですね。
柏木: そうです。エネルギー自給率6%では国の体裁を成しません。不測の事態が起きた時に何もできませんから。サッカーで言えばレッドカードです。エネルギー自給率25~50%でやっとイエローカードのレベル。とにかく、今の6%という自給率を何とか25%ぐらいまで引き上げたい。これが第1の命題です。
第2は電力コスト。震災後、家庭用の電力料金は2割上がっています。産業用の電力料金は3割上昇し、企業の国際競争力にも影響しています。なるべく電力料金を上げないエネルギーミックスを考えるというのが第2の命題です。
第3のCO2に関しては、他の国の状況と考え合わせて、2020~2030年にエネルギー起源のCO2排出量を25%ぐらいは削減したい。これが先進国の責務だととらえています。
この3つの命題を解決できるようなエネルギーミックスを作らなくてはいけなかったわけです。