インタビュー

[コージェネ普及セミナー対談] これからの日本のエネルギー ~エネルギーミックスと分散型電源~(前編)

[コージェネ普及セミナー対談] これからの日本のエネルギー ~エネルギーミックスと分散型電源~(前編)
2015年7月8日(水)公開
取材・構成・文/小林佳代 写真/加藤康
 

昨年4月、東日本大震災と東京電力福島第1発電所の事故後、初めてとなる「エネルギー基本計画」が閣議決定された。その方針を基に、経済産業省の総合資源エネルギー調査会・長期エネルギー需給見通し小委員会は現実的かつバランスの取れたエネルギー需給構造の将来像(エネルギーミックス)を、今年1月から議論してきた。このほど「長期エネルギー需給見通し(案)」を公表し、一般から意見を募るパブリックコメントを経て、近く正式決定する。日本のエネルギーを取り巻く環境はどう変わるのか。消費者の生活にどんな影響があるのか。同小委員会の委員でもある東京工業大学特命教授の柏木孝夫氏と、キャスターで環境・エネルギー分野での活動も多い千葉大学客員教授の木場弘子氏の2人が、エネルギーシステムの将来像や我々の暮らしの変化などについて議論した。

自給率、コスト、CO2の問題を同時に解いたベストミックス案

「来年には電力を選べる時代になるのですから消費者もしっかり勉強して正しい知識を得ないといけませんね」(木場氏)
「来年には電力を選べる時代になるのですから消費者もしっかり勉強して正しい知識を得ないといけませんね」(木場氏)

木場弘子氏(以下敬称略):柏木先生とは9年ほど前、経済産業省が主催するシンポジウムで一緒に全国を回った経験があります。それから10年足らずですが、東日本大震災や東京電力福島第1発電所の事故を経て、エネルギーを取り巻く環境は大きく変わりました。今日はじっくり、その辺のお話をお聞きしていきたいと思います。

 まずはエネルギーミックスについてです。現実的かつバランスの取れたエネルギー需給構造の将来像を検討するため、今年1月から経済産業省の長期エネルギー需給見通し小委員会で有識者の方々が「2030年時点の望ましい電源構成(エネルギーミックス)」を議論してきました。

 この小委員会は先日、ベストミックス案を含む「長期エネルギー需給見通し(案)」を公表しました。柏木先生は、この小委員会の委員でもあります。日本のエネルギーミックスはどうなるのか、将来像について改めてご説明をお願いします。

柏木孝夫氏(以下敬称略):この小委員会ではまず2030年に電力をどれぐらい使うのかの予測から始めました。GDP(国内総生産)の伸びを平均1.7%と予想し、2030年の実質GDPを711兆円と推計しました。普通はGDPが増えればエネルギー使用量が伸びますが、これを高効率な省エネ機器やエネルギーマネジメントシステム、LED照明の導入など最大限の省エネ対策を実施することで18%節電。2030年の電力使用量は約1兆キロワット時と見通しを立てました。

 ここから、どういうベストミックスを実現するか。問題は3つありました。第1にエネルギー自給率、第2に電力コスト、第3に二酸化炭素(CO2)排出量です。

 第1のエネルギー自給率について言うと、震災前は2割程度でしたが、震災後、原発が止まってしまったため、今は6%に落ち込んでいます。

木場: 短期間でずいぶん下がってしまいました。6%というエネルギー自給率はOECD(経済協力開発機構)加盟34ヵ国中、下から2番目という低い水準だそうですね。

柏木: そうです。エネルギー自給率6%では国の体裁を成しません。不測の事態が起きた時に何もできませんから。サッカーで言えばレッドカードです。エネルギー自給率25~50%でやっとイエローカードのレベル。とにかく、今の6%という自給率を何とか25%ぐらいまで引き上げたい。これが第1の命題です。

 第2は電力コスト。震災後、家庭用の電力料金は2割上がっています。産業用の電力料金は3割上昇し、企業の国際競争力にも影響しています。なるべく電力料金を上げないエネルギーミックスを考えるというのが第2の命題です。

 第3のCO2に関しては、他の国の状況と考え合わせて、2020~2030年にエネルギー起源のCO2排出量を25%ぐらいは削減したい。これが先進国の責務だととらえています。

 この3つの命題を解決できるようなエネルギーミックスを作らなくてはいけなかったわけです。

 
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プロフィール
木場弘子(きば・ひろこ)氏

木場弘子(きば・ひろこ)
キャスター
千葉大学 客員教授
岡山市生まれ。千葉大学教育学部を卒業後、1987年、TBSにアナウンサーとして入社。同局初の女性スポーツキャスターとして『筑紫哲也ニュース23』など多数のスポーツ番組を担当。92年、与田剛氏(NHKプロ野球解説者)との結婚を機にフリーランスに転じ、現在はテレビ出演、コーディネーター、講演や執筆活動など多方面で活躍する。教育や環境・エネルギーに関わる活動が多い。2001年、千葉大学教育学部非常勤講師に就任。2007年、洞爺湖サミット・クールアースアンバサダー、2007年第1次安倍政権で規制改革会議、2008年、福田、麻生政権で教育再生懇談会メンバーとなる。2013年より千葉大学客員教授。生活者の視点を大切に経済産業省や環境省、国土交通省など5つの省庁で審議会メンバーを務めている。

柏木孝夫(かしわぎ・たかお)氏

柏木孝夫(かしわぎ・たかお)
東京工業大学 特命教授
コージェネ財団 理事長
1946年東京生まれ。70年、東京工業大学工学部生産機械工学科卒。79年、博士号取得。東京工業大学工学部助教授、東京農工大学工学部教授、東京農工大学大学院教授などを歴任後、2007年より東京工業大学ソリューション研究機構教授、12年より特命教授・名誉教授。11年よりコージェネ財団理事長。経産省の総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会長などを歴任し長年、国のエネルギー政策づくりに深くかかわる。現在、同調査会の省エネルギー・新エネルギー分科会長、基本政策分科会委員などを務める。総務省が2014年11月に立ち上げた「自治体主導の地域エネルギーシステム整備研究会」の座長も務める。主な著書に「スマート革命」「エネルギー革命」「コージェネ革命」など。