柏木孝夫氏(以下敬称略):増田さんが出版された書籍「地方消滅」では、若者が子育て環境の悪い東京圏へ移動し続けることでもたらされる、地方での深刻な人口減少や、都市での高齢化などの問題を浮き彫りにし、日本国民に強いインパクトを与えました。実際のデータによる試算から、「このままでは2040年までに896の自治体が消滅しかねない」と、衝撃の予測を突きつけています。
先日、トヨタ自動車の豊田章一郎名誉会長と会食する機会があって、「日本が抱える一番の課題は何か」と聞いたところ、即座に一言で「人口問題」とお答えになりました。車が売れなくなるという問題もあるとは思いますが、それよりも懸念されていたのは、国力の衰退です。
2020年に東京オリンピック・パラリンピックの開催が予定されていることもあり、どうしても人口が東京一極に集中せざるを得えません。それに対して増田さんの書籍では、今後どのように地方創生、地域創生へと導いていけるのか、その戦略について提言されています。このような地方消滅の危機に直面している日本において、その問題の本質は、何にあるのでしょうか。

「人口が集積しているような拠点をまずは強くしていくのです。経済がそこで回りだし、生活の基盤が安定してくれば、地域の人たちがそこでの暮らしに価値を見出すようになる」(増田氏)
増田寛也氏(以下敬称略):文明が進んできた影響もあるのだと思いますが、全国的に子供の出生数が非常に低下していて、深刻な状況です。この問題から目をそらさず、解決に向けて真剣に取り組まなければなりません。
2013年の出生率は1.43と、なんとか回復傾向にあるものの、2005年に1.26まで下がった事もありました。また、出生率が上がっているといっても、実際に生まれてくる子供の数は、年々減少しています。母親たるべき女性が減ってきているので、出生率が上がっても、出生数は増えません。本当に日本は、土俵際まで追い詰められているのです。
本書を世に出すにあたり、この状況をぜひ国民のみなさんに危機感として受け止めてもらいたいと、まず思いました。この問題を解決していくためには、やはり国土のあり方や、市町村ごとに今後どのように地域づくりを行っていくかなどについて、論じなければなりません。東京には今後もっともっと発展して力をつけてほしいのですが、東京すらも再生産力が乏しくて、このままではむしろ衰退に向かう可能性も高いのです。
柏木: この書籍にも書いてありましたね、東京にも目を向けて適切な対策を打っていかなければならないと。
増田: 東京でも高齢者だけが激増して、成長への投資ができないような状況になっていきます。やはり日本の地方を良くしていかないと、解決はないと思います。
国土構造論とか国土政策論について、皆さんにも目を向けてほしいという願いもあり、この本を出版しました。結論から言うと、地方でもある程度、的を絞る必要があると考えます。賛否両論あるのですが、人口が集積しているような拠点をまずは強くしていくのです。そして、拠点が強くなることで、経済がそこで回りだし、生活の基盤が安定してくれば、地域の人たちがそこでの暮らしに価値を見出すようになる。そうすれば、次第に価値観が変わって、とにかく東京、という考えから解放されるのではないかと思います。