インタビュー

[新春特別対談]地方創生とエネルギー(全3回) 地方消滅を救い、新たな成長をもたらす分散型エネルギーシステムを核とする街づくり(1)

[新春特別対談]地方創生とエネルギー(全3回) 地方消滅を救い、新たな成長をもたらす分散型エネルギーシステムを核とする街づくり(1)
2015年1月7日(水)公開
構成・文/中村実里 写真/加藤康
 

地方での人口減少や、都市での高齢化の進行による「地方消滅」の危機について警鐘を鳴らす、総務大臣や岩手県知事を歴任し、現在は野村総合研究所顧問を務める増田寛也氏。エネルギーシステム研究の第一人者として、国のエネルギー政策に長年、深く関わり続け、コージェネ財団(一般財団法人コージェネレーション・エネルギー高度利用センター)の理事長も務める、東京工業大学特命教授の柏木孝夫氏。お二人に、地方消滅の危機を回避し、新たな成長をもたらすための、エネルギーを中心とした街づくりや地域活性化策について議論していただいた。

人口減少と地方消滅の危機

柏木孝夫氏(以下敬称略):増田さんが出版された書籍「地方消滅」では、若者が子育て環境の悪い東京圏へ移動し続けることでもたらされる、地方での深刻な人口減少や、都市での高齢化などの問題を浮き彫りにし、日本国民に強いインパクトを与えました。実際のデータによる試算から、「このままでは2040年までに896の自治体が消滅しかねない」と、衝撃の予測を突きつけています。

 先日、トヨタ自動車の豊田章一郎名誉会長と会食する機会があって、「日本が抱える一番の課題は何か」と聞いたところ、即座に一言で「人口問題」とお答えになりました。車が売れなくなるという問題もあるとは思いますが、それよりも懸念されていたのは、国力の衰退です。

 2020年に東京オリンピック・パラリンピックの開催が予定されていることもあり、どうしても人口が東京一極に集中せざるを得えません。それに対して増田さんの書籍では、今後どのように地方創生、地域創生へと導いていけるのか、その戦略について提言されています。このような地方消滅の危機に直面している日本において、その問題の本質は、何にあるのでしょうか。

「人口が集積しているような拠点をまずは強くしていくのです。経済がそこで回りだし、生活の基盤が安定してくれば、地域の人たちがそこでの暮らしに価値を見出すようになる」(増田氏)
「人口が集積しているような拠点をまずは強くしていくのです。経済がそこで回りだし、生活の基盤が安定してくれば、地域の人たちがそこでの暮らしに価値を見出すようになる」(増田氏)

増田寛也氏(以下敬称略):文明が進んできた影響もあるのだと思いますが、全国的に子供の出生数が非常に低下していて、深刻な状況です。この問題から目をそらさず、解決に向けて真剣に取り組まなければなりません。

 2013年の出生率は1.43と、なんとか回復傾向にあるものの、2005年に1.26まで下がった事もありました。また、出生率が上がっているといっても、実際に生まれてくる子供の数は、年々減少しています。母親たるべき女性が減ってきているので、出生率が上がっても、出生数は増えません。本当に日本は、土俵際まで追い詰められているのです。

 本書を世に出すにあたり、この状況をぜひ国民のみなさんに危機感として受け止めてもらいたいと、まず思いました。この問題を解決していくためには、やはり国土のあり方や、市町村ごとに今後どのように地域づくりを行っていくかなどについて、論じなければなりません。東京には今後もっともっと発展して力をつけてほしいのですが、東京すらも再生産力が乏しくて、このままではむしろ衰退に向かう可能性も高いのです。

柏木: この書籍にも書いてありましたね、東京にも目を向けて適切な対策を打っていかなければならないと。

増田: 東京でも高齢者だけが激増して、成長への投資ができないような状況になっていきます。やはり日本の地方を良くしていかないと、解決はないと思います。

 国土構造論とか国土政策論について、皆さんにも目を向けてほしいという願いもあり、この本を出版しました。結論から言うと、地方でもある程度、的を絞る必要があると考えます。賛否両論あるのですが、人口が集積しているような拠点をまずは強くしていくのです。そして、拠点が強くなることで、経済がそこで回りだし、生活の基盤が安定してくれば、地域の人たちがそこでの暮らしに価値を見出すようになる。そうすれば、次第に価値観が変わって、とにかく東京、という考えから解放されるのではないかと思います。

 
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プロフィール
増田寛也(ますだ・ひろや)氏

増田寛也(ますだ・ひろや)
野村総合研究所 顧問
東京大学公共政策大学院 客員教授
日本創成会議 座長
1951年東京生まれ。77年、東京大学法学部卒。同年、建設省入省。95年から2007年まで3期、岩手県知事を務める。07年から08年まで総務大臣。09年より野村総合研究所顧問、東京大学公共政策大学院客員教授。11年より日本創成会議座長。主な著書に「地方消滅」(編著)、「地域主権の近未来図」「「東北」共同体からの再生」(共著)など。

柏木孝夫(かしわぎ・たかお)氏

柏木孝夫(かしわぎ・たかお)
コージェネ財団 理事長
東京工業大学 特命教授
東京都市大学 教授
1946年東京生まれ。70年、東京工業大学工学部生産機械工学科卒。79年、博士号取得。東京工業大学工学部助教授、東京農工大学工学部教授、東京農工大学大学院教授などを歴任後、2007年より東京工業大学ソリューション研究機構教授、12年より特命教授。13年より東京都市大学教授も兼務。11年よりコージェネ財団理事長。経産省の総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会長などを歴任し長年、国のエネルギー政策づくりに深くかかわる。現在、同調査会の省エネルギー・新エネルギー分科会長、基本政策分科会委員などを務める。また、総務省の「自治体主導の地域エネルギーシステム研究会」の座長も務める。主な著書に「スマート革命」「エネルギー革命」など。