柏木孝夫氏(以下敬称略):東京電力福島第1原子力発電所の事故を受けて、「もう日本に原子力発電所はいらない」「再生可能エネルギーを目一杯導入すればいい」と言う人がいます。しかし、それは現実的ではありません。政府が2015年に策定した「エネルギーミックス」は経済性、供給安定性、環境性という3つのポイントをバランスよく考慮して出した解だと認識しています。その上で、再生可能エネルギーの将来性、可能性についてどう考えていますか。

「福島の5地域で地産地消型のスマートコミュニティをつくることができれば横展開は容易です。水素、送電網整備の実証実験など、いろいろなチャレンジをしていきたいですね」(藤木氏)
藤木俊光氏(以下敬称略):経済性、供給安定性、環境性の3つをきれいに満たすエネルギー源は日本には残念ながら存在しません。そもそも日本にはほとんど資源がないのですから、贅沢なことは言えない。あらゆる電源の特徴を活かしながらうまくやっていくことが必要です。ただ、その中で再生可能エネルギーは伸びしろのある電源だと思っています。コストもまだまだ下げる余地はあります。天候などに左右され不安定なのが難点と言われていますが、ICT(情報通信技術)や蓄電池などを活用することで多少の改善はできます。
エネルギーミックスでは30年に再生可能エネルギーが全発電電力量の22~24%を占めることを想定しています。2割を超える電力量を担うということは大変なことで、責任も大きくなります。再生可能エネルギーの関係者には、「いろんな工夫をして短所を直しながら、中核電源として、この国を担うことを考えていってほしい」と伝えています。
17年はネガワット(省エネ)取引も始まります。先ほど、経済性、供給安定性、環境性の3つを満たす電源はないと言いましたが、実はネガワットはそれが可能です。使わない手はありません。個々で実行する省エネは小さなものですが、うまくつなぎ合わせて意味ある単位にしていくことが重要です。
柏木: ネガワット取引が始まればキャッシュの流れも生まれますね。エネルギー自由化が進んでいますからポジワット(創エネ)でもキャッシュの流れができています。ダブルでキャッシュの流れができる。ということは、コージェネなどの機器を導入した後のペイバックタイムがぐっと短くなります。6、7年かかると「導入できない」とか、「補助金がないと難しい」という声が出ますが、仮に3年になるならば、導入しようと思う人は増えるはず。コージェネを核とした分散型エネルギーシステム構築に弾みがつきそうです。
政府の予算を見ると、再生可能エネルギーと福島復興とを関係づけるプロジェクトが多いと感じます。例えば未来の新エネルギー社会を先取りするモデルとすべく、会津若松市、新地町、相馬市、浪江町、楢葉町でスマートコミュニティの構築を進めていますね。狙いは何ですか。
藤木: スマートコミュニティについては、10年から横浜市、豊田市、けいはんな学研都市、北九州市の4カ所で実証を進めてきました。
様々な試みが取り入れられ、多くの成果が出ました。ただ、これら4つの地域は大都市で、もともとアドバンテージを持っています。日本のほかの町、ほかの地域で展開可能かというと、ややハードルが高い。
その点、人口規模がずっと小さい福島の5地域で地産地消型のスマートコミュニティをつくることができれば横展開は容易です。しかも福島は新しいまちづくりを進めようとしているところですから、大きなポテンシャルがある。水素の実証実験、送電網整備の実証実験など、いろいろなチャレンジをしていきたいですね。