柏木孝夫氏(以下敬称略):技術の進展によって、国土のあり方も変わってきています。地域のもてるダイバーシティ(多様性)を引き出しながら、ICT(情報通信技術)によって国土のネットワーク化を図っていけば、別に情報を一極に集中させる必要はありません。その一方で、構築した既存のインフラも、40年も栄えてくれば、もう老朽化しますから、強靭化が求められます。
増田さんは、建設省にいらっしゃって、その後に総務大臣や岩手県知事を歴任された立場から、いわゆる箱物行政についてどのようにお考えでしょうか。道路や橋がどんどん出来た結果、あまり車が通らないような道路も多くあります。地域の活性化が一過性で終わってしまうのでは、公共事業を起こす意味がない。毎日利用する生活支援機能を果たすインフラとはどうあるべきかを考える必要があると思うのです。
例えばエネルギーで言うと、強靭化はコージェネレーション(熱電併給)システムなど分散型エネルギーの導入で実現し、多様性は、それぞれ地産地消のローカルエネルギーを取り込むことで得られます。太陽光や風力、地熱やバイオマスに由来する再生可能エネルギーを導入し、その不安定性はコージェネで補完し、それらをネットワーク化して、スマートグリッドやスマートコミュニティを構築していくというように、民間が投資しやすい形の公共事業があるのではないでしょうか。

「投資インセンティブを与えるような制度づくりが、これから非常に重要になってくると思います」(増田氏)
増田寛也氏(以下敬称略):「民間が投資しやすい」という条件が、いま最も必要とされています。つまり、かつての公共事業のような効果をもたらす仕掛けです。ですが、かつての公共事業は、ある時期から、産業支援と生活支援がだんだんとごちゃ混ぜになり、うまく機能しなくなってしまいました。
産業支援で遠隔地から物事を動かすという構図は、当時の日本にとっては正解で、国土をネットワーク化することでたくさん産業が興ってきたので良かった。けれども、それから徐々に産業支援から生活支援へと移り、その生活支援も同じような考え方で全国津々浦々に実行し、やがて山奥にまで同じように投資し始めたあたりから過剰になってきてしまいました。所得の分配ばかり気にし過ぎていたために、むしろ環境を破壊したり、返済が困難な借金を増やしてしまったりしたわけです。
これだけ財政赤字が積み上がってしまったけれども、一方では、まだ色々なインフラのネットワークが求められています。柏木先生がおっしゃったように、そのインフラに対して時代にふさわしい技術が伴い、例えばICTが組み込まれたり、エネルギーならば効率の良い分散型電源が導入されたりするようになれば、財政赤字の解消にもつながってくるでしょう。それを民間資金で行っていくために、投資インセンティブを与えるような制度づくりが、これから非常に重要になってくると思います。
柏木: 国土を形成していく上では、ダイバーシティを取り入れ、強靭化を図ることが求められています。エネルギー面から、民間が投資しやすくなることを条件にして考えると、まさにスマートコミュニティの構築が合致するんですね。
スマートコミュニティといっても、現状では電力の自由化が部分的にしかなされていないので、まだ十分なお金の流れができません。けれども、それぞれの地域で、全面自由化を踏まえて今から準備を始めていくことが重要だと考えます。
エネルギーインフラとしては、例えば、市庁舎とごみ焼却炉などを連携させて、排熱パイプラインを敷くと良いのですが、コストなどの面から、なかなか工事が難しい。ですが、総務省は、かつての郵政省と自治省が一体になっているわけですから、郵政省が管轄していた洞道(とうどう)と呼ばれる地下設備を利用する方法も考えられます。
昔は洞道に通信線がたくさん入っていましたが、光ファイバーに置き換えたことでスペースの余裕ができました。そこに排熱パイプラインや電力の自営戦も通して、「ファイバー&熱パイプ&ワイヤー」とすればいいでしょう。その上にコージェネなどを導入している民間の建物があれば、その排熱をパイプラインに流したり、発電した電気を自営線に流したりすることもできます。そうすると託送料を徴収できますから、公共事業として運用しても、それなりのゲインがあります。
それで子育てしやすい環境を整えれば、子どもや若い人が地域に増える。そんな全体の仕掛けが必要だと考えます。
増田: それが実現すると、街もかなりコンパクトになって、職住近接のような形になるかもしれませんね。