柏木孝夫氏(以下敬称略):経済産業省の審議会が見直しを進めてきた「エネルギー基本計画」は、安倍政権が進める成長戦略にも大きくかかわる重要なものと考えています。私も委員の一人として議論に加わってきました。上田長官は今回の基本計画の見直しは、どのような点がポイントだとお考えですか。

「今回のエネルギー基本計画では、政策の大きな方向性を示すことが重要だと考えていました」と話す上田氏
上田隆之氏(以下敬称略):日本のエネルギー政策は東日本大震災後、揺れに揺れてきました。多くの国民が、今後、エネルギー政策はどういう方向に進むのかと不安に思っています。今回のエネルギー基本計画では、政策の大きな方向性を示すことが重要だと考えていました。
そこで、石油・石炭、ガス、原子力、再生可能エネルギーと、エネルギー源ごとの役割を分析し直し、位置付けを示しました。その上で、3.11の反省を踏まえ、石炭がダメになっても石油がある、石油がダメになってもガスがある、という具合に、エネルギーの供給構造を多層的かつ柔軟なものとすることに注意を払いました。
柏木: おっしゃる通り、強靱なエネルギー供給ネットワークを構築することは非常に重要だと思います。エネルギー源にはそれぞれ光と影があります。石炭にはCO2(二酸化炭素)という影があり、原子力には放射能という影がある。ただ、影ばかり見ていても良いエネルギーシステムは構築できません。良い部分を生かした供給ネットワークを構築していくことが重要です。
エネルギー基本計画はエネルギーシステムのバイブルです。今回の基本計画からは今後のエネルギー産業政策のあり方も見えると感じています。
電力は、2016年をメドに家庭用も含めた小売りが全面自由化されます。今後は、ガスの自由化の議論も進みます。時を同じくしてなのか、どちらかが先になるのかは分かりませんが、いずれはどちらも全面自由化されるでしょう。実現すれば、エネルギー間の垣根はなくなり、総合的なエネルギー企業が登場すると考えられます。エネルギー産業に大きなパラダイムシフトを起こせるはずです。