インタビュー

特別対談[前編] これからのエネルギー産業と高まるコージェネへの期待

特別対談[前編] これからのエネルギー産業と高まるコージェネへの期待
2014年1月6日(月)公開
構成・文/小林佳代 写真/加藤康
 

中長期的な国のエネルギー政策の方向性を決める新たな「エネルギー基本計画」の策定に向け、経済産業省の審議会「総合資源エネルギー調査会基本政策分科会」(分科会長:三村明夫 日本商工会議所会頭)は、その前身の審議会から足掛け2年にも及ぶ熟議を重ね、2013年末に意見をとりまとめた。国のエネルギー政策は、2011年の東京電力・福島第一原子力発電所の事故を契機に、大幅な見直しを迫られた。その一方で、その後の慢性的な電力供給の不安、火力発電の燃料費の高騰、米国発のシェールガス革命による世界市場の激変などから、安定供給の重要性が再認識された。これからのエネルギー産業は、どこへ向かい、何を目指すべきなのか。上田隆之 資源エネルギー庁長官と、柏木孝夫 コージェネレーション・エネルギー高度利用センター理事長に議論していただいた。

エネルギー供給構造を多層的かつ柔軟に

柏木孝夫氏(以下敬称略):経済産業省の審議会が見直しを進めてきた「エネルギー基本計画」は、安倍政権が進める成長戦略にも大きくかかわる重要なものと考えています。私も委員の一人として議論に加わってきました。上田長官は今回の基本計画の見直しは、どのような点がポイントだとお考えですか。

「今回のエネルギー基本計画では、政策の大きな方向性を示すことが重要だと考えていました」と話す上田氏
「今回のエネルギー基本計画では、政策の大きな方向性を示すことが重要だと考えていました」と話す上田氏

上田隆之氏(以下敬称略):日本のエネルギー政策は東日本大震災後、揺れに揺れてきました。多くの国民が、今後、エネルギー政策はどういう方向に進むのかと不安に思っています。今回のエネルギー基本計画では、政策の大きな方向性を示すことが重要だと考えていました。

 そこで、石油・石炭、ガス、原子力、再生可能エネルギーと、エネルギー源ごとの役割を分析し直し、位置付けを示しました。その上で、3.11の反省を踏まえ、石炭がダメになっても石油がある、石油がダメになってもガスがある、という具合に、エネルギーの供給構造を多層的かつ柔軟なものとすることに注意を払いました。

柏木: おっしゃる通り、強靱なエネルギー供給ネットワークを構築することは非常に重要だと思います。エネルギー源にはそれぞれ光と影があります。石炭にはCO2(二酸化炭素)という影があり、原子力には放射能という影がある。ただ、影ばかり見ていても良いエネルギーシステムは構築できません。良い部分を生かした供給ネットワークを構築していくことが重要です。

 エネルギー基本計画はエネルギーシステムのバイブルです。今回の基本計画からは今後のエネルギー産業政策のあり方も見えると感じています。

 電力は、2016年をメドに家庭用も含めた小売りが全面自由化されます。今後は、ガスの自由化の議論も進みます。時を同じくしてなのか、どちらかが先になるのかは分かりませんが、いずれはどちらも全面自由化されるでしょう。実現すれば、エネルギー間の垣根はなくなり、総合的なエネルギー企業が登場すると考えられます。エネルギー産業に大きなパラダイムシフトを起こせるはずです。

 
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プロフィール
上田隆之(うえだ・たかゆき)氏

上田隆之(うえだ・たかゆき)
経済産業省 資源エネルギー庁 長官
1980年3月東京大学法学部卒業後、通商産業省(現経済産業省)に入省。資源エネルギー庁電力・ガス事業部ガス市場整備課長、同庁省エネルギー・新エネルギー部長などを経て2008年7月大臣官房審議官(エネルギー・環境担当)に。2010年3月総括審議官、同年7月大臣官房長、2011年8月製造産業局長、2012年9月通商政策局長を歴任。2013年6月より現職。

柏木孝夫(かしわぎ・たかお)氏

柏木孝夫(かしわぎ・たかお)
一般財団法人 コージェネレーション・エネルギー高度利用センター 理事長
東京工業大学 特命教授、東京都市大学教授
1970年東京工業大学工学部生産機械工学科卒業。大学院博士課程を経て79年博士号取得。東京工業大学工学部助教授、東京農工大学工学部教授、東京農工大学大学院教授などを歴任後、2007年より東京工業大学ソリューション研究機構教授、2012年より特命教授。2013年より東京都市大学教授も兼務。経産省の総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会長などを歴任し国のエネルギー政策づくりに深くかかわる。現在、総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会長、同調査会基本政策分科会委員などを務める。