柏木孝夫氏(以下敬称略):電力の自由化はこれまでも段階的に進んできました。小売りの部分自由化で、現在、契約電力50kW以上の需要家に対しては、既存の電力会社だけでなく、新規参入した「新電力(特定規模電気事業者)」も電力を供給できるようになっています。
しかし、現在のところ、新電力が獲得したシェアは3.5%に過ぎません。50kW以上となると大がかりで、ベース電源となるような大規模電源を持っていないと、新規に電力事業に進出しにくかったからです。
今後、家庭まで含めて全面自由化されれば、いろいろなビジネスモデルが生まれ、経済活性化につながると期待できます。既に民間企業の間では、全面自由化を念頭に置いて新しいビジネスモデルを開発しようという動きが一気に広がってきています。

「自由化によって、家庭用サービスと法人用サービスを統合した新しいビジネスが出てくるはずです」と上田氏は話す
上田隆之氏(以下敬称略):かつての通信の自由化と同様のことが起きると思います。通信自由化では、新たな通信事業者がたくさん誕生しました。今、通信事業者は固定電話、携帯電話、テレビ、インターネットと幅広い事業を総合的に手掛けています。エネルギー分野でも、自由化によって、家庭用サービスと法人用サービスを統合した新しいビジネスが出てくるはずです。
カギになると考えているのが情報通信技術です。需要家のニーズが供給事業者にきっちり伝わってこそ、新しいビジネスモデルが生まれるからです。30分、1時間といった単位で需要家がどれぐらいの電力を使っているかという情報を正確に把握することが重要で、そのために必要なのが「スマートメーター」です。全戸に導入することを目標に掲げています。
例えば、夜にたくさんの電気を使う人には、夜の電気料金が安い事業者が電力を供給する。「高くても再生可能エネルギーによる電気だけを買いたい」という人には再生可能エネルギーのメニューを持つ事業者が電力を供給する。スマートメーターを通じて、今まで隠れていたニーズが供給事業者に伝われば、そのニーズに対応できる事業者が電力を供給するシステムが構築できるようになります。
柏木: 確かに、コージェネや再生可能エネルギーの普及を進める上でも、きめ細かなエネルギー制御を可能にするスマートメーターは要となる存在です。この分野で、日本は世界市場に向けた成長戦略を立てる必要があると思います。一時期、それぞれの電力会社が自らの供給エリアだけに適用できるスマートメーターを開発するような動きがありましたが、それでは国際的な競争には勝てません。