インタビュー

新春特別対談 脱炭素社会実現のためのエネルギーシステム 「システム思考」で最新技術を社会に実装(前編)

新春特別対談 脱炭素社会実現のためのエネルギーシステム 「システム思考」で最新技術を社会に実装(前編)
2018年12月26日(水)公開
構成・文/小林佳代 写真/加藤康
 

地球温暖化対策の枠組み「パリ協定」の発効、電力・ガスの完全自由化など、エネルギーを取り巻く環境は大きく変化しつつある。我が国では大規模電源にコージェネレーション(熱電併給)システムや再生可能エネルギーなどで構成する分散型電源を調和させ、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などのデジタル技術できめ細かく需要を制御する環境性・経済性・安定性の高いエネルギーシステムの構築が求められている。

政府は国家プロジェクト「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の一つの課題に「脱炭素社会実現のためのエネルギーシステム」を挙げ、有望技術の開発・導入に動く。日本が構築すべき新しいエネルギーシステムのあり方について、SIPを担当する内閣府の赤石浩一政策統括官(科学技術・イノベーション・原子力担当)とエネルギーシステム研究の第一人者として国のエネルギー政策に長年かかわってきた東京工業大学の柏木孝夫特命教授/名誉教授が語り合った。

「パリ協定」発効はイノベーション創出の良い機会

柏木孝夫氏(以下敬称略): 2018年7月、「第5次エネルギー基本計画」が閣議決定されました。第4次計画を決定した2014年からの4年の間に「パリ協定」が発効し、国内で電力・ガスが完全自由化するなど、エネルギーを巡る環境は大きく変わりました。特にパリ協定の発効で、世界は「低炭素」から「脱炭素」へと走り始めた観があります。内閣府政策統括官として、この流れをどう見ていますか。

赤石浩一氏(以下敬称略): パリ協定は日本にとって非常に良い枠組みだと思います。京都議定書は制限的、規制的な枠組みをメーンとするものでした。目標を達成しないと罰せられることから、各国とも目標を低く設定し、それをクリアすることに躍起になってしまった。日本もそうです。低い目標にとどめた上で、省エネや温室効果ガス排出量の少ない原子力へのシフト、「クリーン開発メカニズム(CDM)」で数合わせをすることばかりに目が向いていました。これではイノベーションは生まれません。

 パリ協定には罰則などの規定はありません。京都議定書とは発想が逆になり、各国とも高い目標をつくることに力を注いでいます。こうした状況はイノベーションを創出する上で極めて重要だと思います。

柏木: 高い目標なくしてイノベーションは生まれないということですね。イノベーションは技術開発だけで創出できるものではありません。社会・経済システムの構造改革につなげ、新たな付加価値を生み出す流れをつくることが必要です。それには縦割り組織での対応では限界があり、省庁横断での取り組みが求められます。

「パリ協定には罰則などの規定はありません。京都議定書とは発想が逆になり、各国とも高い目標をつくることに力を注いでいます。こうした状況はイノベーションを創出する上で極めて重要だと思います」(赤石氏)
「パリ協定には罰則などの規定はありません。京都議定書とは発想が逆になり、各国とも高い目標をつくることに力を注いでいます。こうした状況はイノベーションを創出する上で極めて重要だと思います」(赤石氏)

赤石: まさに、そこがこれから最も変化が求められる部分だと思います。パリ協定は産業革命前と比べた世界の平均気温の上昇を「1.5℃以内」にとどめることを目指しています。「2℃以内」を目指す場合とは全く異なる対応が必要です。エネルギー・環境問題に限定した取り組みで終わるのではなく、大々的に包括的に省庁横断的に取り組み、社会・経済構造を変えなくてはなりません。

 こうした背景も踏まえ、今、政府は「ソサエティー5.0」を提唱しています。IoT(モノのインターネット)、ロボット、人工知能(AI)、ビッグデータ等の新たな技術をあらゆる産業や社会生活に取り入れてイノベーションを創出し、一人ひとりのニーズに合わせる形で社会的課題を解決する超スマート社会をつくり、世界をリードしていこうという考えです。この構想を具体化するにはデジタルプラットフォームをつくらなくてはなりません。

 エネルギーは、その大きな柱となります。

 
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プロフィール
赤石 浩一(あかいし こういち)氏

赤石 浩一(あかいし こういち)
内閣府 政策統括官(科学技術・イノベーション・原子力担当)
1985年東京大学法学部卒業後、通商産業省(現経済産業省)入省。2004年経済産業省資源エネルギー庁エネルギー政策企画室長、05年経済産業省通商政策局米州課長を経て06年日本機械輸出組合ブラッセル事務所長に就任。07年経済産業省商務情報政策局情報政策課長、11年経済産業省大臣官房会計課長(併)監査室長、12年経済産業省大臣官房審議官(環境問題担当)、13年内閣官房副長官補室日本経済再生総合事務局次長、14年経済産業省大臣官房審議官(通商政策局担当)を務める。17年内閣官房内閣審議官(内閣官房副長官補付)(併)内閣府大臣官房審議官(科学技術・イノベーション担当)を経て18年7月より現職。

柏木 孝夫(かしわぎ たかお)氏

柏木 孝夫(かしわぎ たかお)
東京工業大学 特命教授/名誉教授
コージェネ財団 理事長
1970年東京工業大学工学部生産機械工学科卒。79年博士号取得。東京工業大学工学部助教授、東京農工大学工学部教授、東京農工大学大学院教授などを歴任後、2007年より東京工業大学ソリューション研究機構教授、12年より特命教授/名誉教授。11年よりコージェネ財団理事長。経済産業省の総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会長などを歴任し長年、国のエネルギー政策づくりに深くかかわる。現在、同調査会の省エネルギー・新エネルギー分科会長、基本政策分科会委員などを務める。主な著書に『コージェネ革命』『超スマートエネルギー社会5.0』など。

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