柏木孝夫氏(以下敬称略): 「パリ協定」の発効で、各国の温暖化抑制に向けた取り組みは待ったなしとなっています。注目すべきが水素エネルギー。再生可能エネルギーから製造でき、発電効率が高く、二酸化炭素(CO2)を発生しない水素は究極のエコエネルギーであり、今後、日本は水素社会を実現していくことが求められています。
小渕さんが会長を務める自民党議員連盟「FCV(燃料電池自動車)を中心とした水素社会実現を促進する研究会」(通称:水素議連)は2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックにおいて、日本の水素・燃料電池分野の技術や取り組みを世界に発信し、「水素によるおもてなし」を実現しようと東京都の小池百合子知事に提言されたそうですね。

「ぜひ実現したい具体策の一つが、福島県内で再生可能エネルギーを使って製造した水素を東京に持ってきてエネルギー源とすること。選手村で使うほかにFCVやバス、できれば船にも使いたい。聖火リレーに使うトーチにも取り入れたいですね」(小渕氏)
小渕優子氏(以下敬称略): 東京オリンピック・パラリンピックは日本の技術や取り組みを世界に披露する絶好の場です。私たち水素議連は競技会場、選手村、ホテル、商業施設、交通手段を水素エネルギーによって運営することで、オリンピック・パラリンピックを水素関連の製品・技術を輸出するための「水素ショーケース」としたいと動いています。小池知事は水素議連の前会長。よい連携ができると思います。
水素議連には水素やエネルギーに関心が高い議員が100人以上集まり、活発に議論しています。私は2016年10月に会長に就任しましたが、こんなに頻繁に開かれる議連はなかなかないと思いますね(笑)。色々なところに視察に行ったり、企業の方からレクチャーを受けたりしながら水素社会に対する認識を深めているところです。
私たちは自民党政務調査会内の資源エネルギー戦略調査会水素社会推進委員会(渡辺博道委員長)とも密接に連携しています。水素議連で議論したことを委員会に持ち込み、党の決裁にしてもらうという道筋も出来上がっているのでスピーディーに物事が進みます。責任は重大ですが、やりがいがあります。
柏木: 再生可能エネルギーによって発電した電力を水素に変えておけば、いつでも燃料電池で発電できます。太陽光発電や風力発電は天候による変動性が高いのが難点ですが、その調整機能を果たせます。BCP(事業継続計画)性にも優れていますから、オリンピックやパラリンピックのような一大イベントには重要な役割を果たすことができますね。
小渕: 水素議連の提言は、これから東京都でもよく議論していただきたいと思いますが、ぜひ実現したい具体策の一つが、福島県内で再生可能エネルギーを使って製造した水素を東京に持ってきてエネルギー源とすること。選手村で使うほかにFCVやバス、できれば船にも使いたい。聖火リレーに使うトーチにも取り入れたいですね。東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所での原発事故に苦しんだ福島で、環境に優しい技術を使ってつくり出したエネルギーを東京で使うことには、とても大きな意味があります。福島復興を世界に発信しつつ、水素社会実現のモデルケースを構築したいと考えています。