インタビュー

[特別対談]電力自由化と新たな経済成長 電力小売り全面自由化がもたらすインパクトと分散型エネルギーシステムの可能性(後編)

[特別対談]電力自由化と新たな経済成長 電力小売り全面自由化がもたらすインパクトと分散型エネルギーシステムの可能性(後編)
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2016年3月16日(水)公開
構成・文/桜井敬三 写真/加藤康
 

前回に続き、電力自由化をはじめとするエネルギーシステム改革によって、エネルギー産業はもとより、経済および産業全体の競争力強化を推し進める経済産業省資源エネルギー庁の日下部聡長官と、この改革にも深くかかわってきたエネルギーシステム研究の第一人者である東京工業大学の柏木孝夫特命教授が、電力自由化がもたらす新たな成長の可能性について議論・提言する後編。柔軟な政策の重要性や、分散型エネルギーの可能性などに話は及ぶ。

分散型がイノベーションのフロンティアに

柏木孝夫氏(以下敬称略): 今回の自由化での新規参入者は、いきなり大規模な電源はつくりにくい。また、メリットオーダーで、効率が低く、稼働率の上がらない電源は脱落していくでしょう。となると、熱も使えて効率の高いコージェネのような分散型が増える可能性は高いと思います。

 これまでは市場が十分に機能しておらず、コージェネの余剰電力を適正な価格で販売することができませんでした。自由化によって市場が機能し、デジタル革命できめ細かな制御も可能になる。技術開発によって発電効率は上がり、デマンドレスポンスも導入するなどして、うまく制御すると、余剰電力の売電による収入がかなり見込めるようになります。コージェネ導入の初期投資のペイバックタイムも短くできるでしょう。自由化を機に、分散型でも効率の高いものは、経済性が良くなり投資が進む可能性があります。

 昨年策定されたエネルギーミックスの中で、デマンドサイドで使う電力量が9808億kWhで、それを全て大規模集中型で供給すれば発電量は1兆650億kWhとなっています。コージェネの場合は、9808億kWhの中に置かれることになります。そのうちの1190億kWh、12%超を供給するという数値目標が初めて明記されたわけです。これは非常に画期的なことです。

 コージェネの電力がデマンドサイドに入り、うまくコミュニティの中で機能し出すと、より多くの再生可能エネルギーを取り込めるようにもなってくる。再生可能エネルギーの不安定性を、コージェネによってうまく調整できるからです。

 BCP(事業継続計画)の観点でもコージェネの注目度は上がっています。

 あの原発事故の際にも、六本木ヒルズは停電の心配がなかった。特定電気事業として、全ての電力を自前のガスコージェネで賄っていたからです。その点が評価され、この地区のビルの稼働率は上昇し、デベロッパーもエネルギーの自立をより積極的に評価されるようになったと聞いています。

 BCPの観点から、企業が万が一の際にも事業を継続できるようにすることで、その不動産の価値が下がらないということが言えるわけです。いわゆるノンエナジーベネフィットですね。

「分散型エネルギーは、イノベーションの大きなフロンティアになる可能性があります」(日下部氏)
「分散型エネルギーは、イノベーションの大きなフロンティアになる可能性があります」(日下部氏)

日下部聡氏(以下敬称略): これまで自家発を整備してきた業種というのは、病院であったり、ホテルであったり、それから通信会社、鉄道、素材系などですね。自らの営業活動や顧客との信頼関係のために、必ず何らかの備えが必要な業種が自衛的に導入してきた。

 ですから、蓄電やコージェネによって将来に備えることへのインセンティブは潜在的にあるでしょう。必ずそれをやらなければいけない業種はもともとあったし、東日本大震災の経験を踏まえれば、その備えは、企業価値において決してマイナスにはならない。これはコストではなくて、投資の一環だと考えるような産業群が増えつつあります。

 家庭でも、エネファームだとか、プラグインハイブリッドカーだとか、価格だけで考えれば割高であっても、いざという時に自家発として使えることを評価する人が少しずつ増え始めています。

 こうした今の状況は、イノベーションのチャンスですね。分散型エネルギーは、イノベーションの大きなフロンティアになる可能性があります。

 
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プロフィール
日下部 聡(くさかべ さとし)氏

日下部 聡(くさかべ さとし)
経済産業省 資源エネルギー庁 長官
1960年生まれ。82年、横浜国立大学経済学部卒、通商産業省(現・経済産業省)入省。89年、米国ロチェスター大学留学。97年、資源エネルギー庁公益事業部公益事業制度改正審議室長。2002年、経済産業政策局産業組織課長。10年7月、大臣官房審議官(経済産業政策局担当)。同年10月、内閣官房内閣審議官(国家戦略室)。12年、大臣官房総括審議官。13年、官房長。15年7月より現職。

柏木 孝夫(かしわぎ たかお)氏

柏木 孝夫(かしわぎ たかお)
東京工業大学 特命教授/名誉教授
コージェネ財団 理事長
1946年東京生まれ。70年、東京工業大学工学部生産機械工学科卒。79年、博士号取得。東京工業大学工学部助教授、東京農工大学工学部教授、東京農工大学大学院教授などを歴任後、2007年より東京工業大学ソリューション研究機構教授、12年より特命教授・名誉教授。11年よりコージェネ財団理事長。経産省の総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会長などを歴任し長年、国のエネルギー政策づくりに深くかかわる。現在、同調査会の省エネルギー・新エネルギー分科会長、基本政策分科会委員などを務める。主な著書に「スマート革命」「エネルギー革命」「コージェネ革命」など。

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