柏木孝夫氏(以下敬称略): 今回の自由化での新規参入者は、いきなり大規模な電源はつくりにくい。また、メリットオーダーで、効率が低く、稼働率の上がらない電源は脱落していくでしょう。となると、熱も使えて効率の高いコージェネのような分散型が増える可能性は高いと思います。
これまでは市場が十分に機能しておらず、コージェネの余剰電力を適正な価格で販売することができませんでした。自由化によって市場が機能し、デジタル革命できめ細かな制御も可能になる。技術開発によって発電効率は上がり、デマンドレスポンスも導入するなどして、うまく制御すると、余剰電力の売電による収入がかなり見込めるようになります。コージェネ導入の初期投資のペイバックタイムも短くできるでしょう。自由化を機に、分散型でも効率の高いものは、経済性が良くなり投資が進む可能性があります。
昨年策定されたエネルギーミックスの中で、デマンドサイドで使う電力量が9808億kWhで、それを全て大規模集中型で供給すれば発電量は1兆650億kWhとなっています。コージェネの場合は、9808億kWhの中に置かれることになります。そのうちの1190億kWh、12%超を供給するという数値目標が初めて明記されたわけです。これは非常に画期的なことです。
コージェネの電力がデマンドサイドに入り、うまくコミュニティの中で機能し出すと、より多くの再生可能エネルギーを取り込めるようにもなってくる。再生可能エネルギーの不安定性を、コージェネによってうまく調整できるからです。
BCP(事業継続計画)の観点でもコージェネの注目度は上がっています。
あの原発事故の際にも、六本木ヒルズは停電の心配がなかった。特定電気事業として、全ての電力を自前のガスコージェネで賄っていたからです。その点が評価され、この地区のビルの稼働率は上昇し、デベロッパーもエネルギーの自立をより積極的に評価されるようになったと聞いています。
BCPの観点から、企業が万が一の際にも事業を継続できるようにすることで、その不動産の価値が下がらないということが言えるわけです。いわゆるノンエナジーベネフィットですね。

「分散型エネルギーは、イノベーションの大きなフロンティアになる可能性があります」(日下部氏)
日下部聡氏(以下敬称略): これまで自家発を整備してきた業種というのは、病院であったり、ホテルであったり、それから通信会社、鉄道、素材系などですね。自らの営業活動や顧客との信頼関係のために、必ず何らかの備えが必要な業種が自衛的に導入してきた。
ですから、蓄電やコージェネによって将来に備えることへのインセンティブは潜在的にあるでしょう。必ずそれをやらなければいけない業種はもともとあったし、東日本大震災の経験を踏まえれば、その備えは、企業価値において決してマイナスにはならない。これはコストではなくて、投資の一環だと考えるような産業群が増えつつあります。
家庭でも、エネファームだとか、プラグインハイブリッドカーだとか、価格だけで考えれば割高であっても、いざという時に自家発として使えることを評価する人が少しずつ増え始めています。
こうした今の状況は、イノベーションのチャンスですね。分散型エネルギーは、イノベーションの大きなフロンティアになる可能性があります。