柏木: 原子力発電所の事故の影響というのは、ずいぶん大きかった。それによって、技術の進展が加速したとう面もあります。そして、それまではエネルギーにあまり関心がなかったような一般的な消費者の関心が高まっている。この時期だからこそ、自由化による経済効果は、大いに期待できますね。
日下部: 実は2000年当時、私は小売りの部分自由化を始めるための議論に関わっていました。当時の参入者はというと、素材系の大企業の自家発だったわけです。想定していたのは火力発電で、具体的には重油だとか、残渣油だとかを燃料とする火力発電です。
当時から、スマートメーターの議論もありましたが、それは意味がないという意見が大半でした。ピークに合わせて電気料金を変えても、需要家は反応しない、節電するようなことはないと考えられていました。なぜなら電気は必需財だから。
その後、発電技術が多様化し、需要家サイドが意外と料金に感応的に行動するようになってきた。当時からの技術の変化は大きいですね。

「こうした発電システムの多様性も、今回の自由化によるインパクトを大きくするのだと思います」(柏木氏)
柏木: かつては、電源といえば熱機関でしたから、大きなものでないと効率が上がらなかった。ところが今では、燃料電池のような技術が開発され、実用化されています。電気化学反応で発電し、規模のメリットはあまりない。光電変換で発電する太陽電池もそうですね。大きくなったからといって、効率が上がるわけではない。
こうした発電システムの多様性も、今回の自由化によるインパクトを大きくするのだと思います。
日下部: もともと電気事業法の体系というのは、ある特定の技術を与件としています。それは、大規模な火力発電所や原子力発電所をつくり、規模の経済性で安く大量の電力を供給する技術だった。従って、独占も許容した。と同時に、通産省が間に入って料金を規制し、交渉力のない消費者を守ったのです。
ところが、1980年代から90年代にかけて、自家発を持つ企業が増えて、ガスタービンなどの技術革新が起り、数十万kWの規模でも、相当程度に安く供給できるようになった。IPP(独立発電事業者)が登場し、自家発を持つ大企業が参入できるだけの競争力を持つようになったので、部分自由化が始まったわけです。
現在は、さらに技術が進んで、新たな発電形態が実用化されています。ですから、全面自由化するには非常によいタイミングだと思います。
これからは送配電の高度な技術も必要になるでしょう。デジタル化やIoT(モノのインターネット)という、違う分野の技術との融合で、新たなブレークスルーが起きてくる。
柏木: 送配電をインテリジェント化、スマート化する。それから、デマンドサイドに分散型が入り、不安定な太陽光や風力も取り込み、デジタル革命も進んで、スマートコミュニティができてくる。これらをうまく融合させることで、日本が世界に誇れる先進的なエネルギー需給構造のグランドデザインを示せるんじゃないでしょうか。
日下部: 行政の機能は、おそらく二つあって、一つは、エネルギー事業への参入障壁を、どのエネルギー源でもフラットにしていくこと。今度の自由化によって、かなりフラットになります。ですから、そこはきちんと進めていく。
それから、もう一つは、仕組みを変えていくこと。技術が変われば、仕組みが変わるのだと、私は考えています。行政が硬直的だと批判を受けるとするならば、技術が変わったけれども、仕組みが変わらない場合でしょう。そこは変えなければなりません。