
「水素発電まで実現できれば水素も量が出るようになる。量が出るようになればコストが安くなる。コストが安くなれば一気に普及することが期待できますね」(柏木氏)
柏木: 原発事故で疲弊してしまった福島が新エネルギーで生き返る。素晴らしい取り組みですね。福島には風力発電やメガソーラー発電をつくる計画もあります。そこで生まれた再生可能エネルギーから水素をつくり、福島原発で空いているケーブルを使って輸送すれば、新たな国民負担なしに東京に運ぶことができます。福島には産業が生まれ、雇用が生まれ、収入が生まれる。東京などエネルギーを多く消費する都市から福島への所得再配分になります。復興のための重要な施策であり、脱炭素へ向けた一歩です。
事故が起きたから「もう原発はいらない」というのは現実的ではありません。経済性、供給安定性、環境性をバランスよく考慮しながら新たなエネルギーシステムを構築していくことが必要です。オリンピック・パラリンピックを機に、原子力をベース電源として新しいエネルギーを取り入れたモデルを作り上げることは大いに意義があります。
小渕: そう思います。原発を止めてしまったら果たして代替エネルギーはどうするのか。エネルギーシステムに関しては、感情論に陥らず、現実的、具体的に議論を進めることが必要です。政治家として日本のエネルギーシステムの今の姿と将来像とをしっかりと皆さんに届けていきたいと思います。水素議連ではオリンピック・パラリンピックの先も見据え、2030年をメドに水素発電を実現したいと考えています。
柏木: 水素発電まで実現できれば水素も量が出るようになる。量が出るようになればコストが安くなる。コストが安くなれば一気に普及することが期待できますね。
経済産業省は水素や燃料電池の普及をフェーズ1~3に分けて道筋を描いています。燃料電池、FCV、水素ステーションを普及させ、水素利用を飛躍的に拡大させるのがフェーズ1。水素発電を本格導入するのがフェーズ2。再生可能エネルギー由来の水素を利用し、CO2フリー水素供給システムを確立するのがフェーズ3です。
既にフェーズ2の取り組みも出始めています。大林組と川崎重工業は2018年に、水素を燃料としてつくった電気と熱を神戸市の一部地域に供給する実証事業を開始します。地域電源として水素発電を導入するのは世界初の試み。こういう大がかりな事業も進み始めています。