柏木: 2020年以降の地球温暖化対策を定めたパリ協定が発効したことにより、世界は一気に「低炭素」から「脱炭素」へと向かい始めています。今後、日本はあらゆる技術を結集し、さらなるイノベーションを起こし、CO2排出を抑制するエネルギーシステムを考えていかなくてはなりません。その手段として水素の普及は不可欠です。
小渕: 日本はオーストラリア政府と共同でCO2フリー水素の製造・輸送事業を推進しています。オーストラリア国内にある未利用資源の褐炭から水素を製造し日本まで輸送しようという事業です。水素の製造工程で排出したCO2は回収・貯留する「CCS」を進めようとしていますが、個人的に少し引っかかるところもあります。とらえ方によっては、「水素を買ってCO2を置いていく。日本はおいしいところだけ持って行く」とも取れるからです。
柏木: 私は内閣府に設置された「エネルギー・環境イノベーション戦略推進ワーキンググループ」の委員長を務めていますが、2050年に向けて策定した「エネルギー・環境イノベーション戦略」の中では、中長期的革新技術として、回収したCO2を「Storage(貯留)」するのではなく「Utilization(利用)」する「CCU」を取り上げています。例えば植物工場を併設して光合成に利用するとか、ケミカル工場をつくってプラスチックを製造するとか。CCSをベースにしながらCCUに挑戦する手もあるのではないかと思います。
小渕: CO2を利用するという発想は前向きでとてもいいですね。ストンと腹落ちします。
柏木: 既にCCUの成功事例も出ています。JFEエンジニアリングのグループ会社であるJファームが北海道苫小牧につくった植物工場では、コージェネシステムを導入した分散型エネルギーシステムを構築し、電気と熱に加えて、排ガス中のCO2を有効活用しています。トマトなどの商業生産を行っていますが、糖度が増すので付加価値もつきます。一次産業の活性化は地方創生にもつながります。非常に意義のある取り組みだと思います。
小渕: 私が会長を務める「FCV(燃料電池自動車)を中心とした水素社会実現を促進する研究会」では水素利用の入口として身近なFCVを考えていますが、同時並行で野菜の栽培など他の分野にも広げて水素の可能性を見せることも大事ですね。これからも水素に関わっている企業の方たちの意見を聞きながら議論を深め、自民党の資源・エネルギー戦略調査会に積極的に提言を上げ、成長戦略に組み込みながら水素社会実現を目指していきたいと思います。
柏木: 子育て中でもあり、老若男女に幅広くコミュニケーションを取れ、発信できる小渕さんならではの視点を生かしつつ、広く国民に浸透する戦略を構築していただけることを期待しています。