インタビュー

新春特別対談
脱炭素社会実現のためのエネルギーシステム
「システム思考」で最新技術を社会に実装(前編)

ブロックチェーン技術でエネルギーを最適制御

柏木: 今までのエネルギーシステムは需要ありきの発想で大規模電源一辺倒につくってきました。しかし、自由化という波の中では市場原理で稼働率の悪い大規模電源は淘汰され、再生可能エネルギーやコージェネを取り込んだ分散型電源へと移行していきます。実はエネルギーの需要の中で電気が占める割合は4割に過ぎず、6割は熱が占めます。

 コージェネが生み出す熱を合理的に利用する方法を考えることが効率的なエネルギー需給構造を構築する上で非常に重要です。

赤石: 東京・港区の六本木ヒルズは開業時に、6360kW×6機という大規模コージェネを稼働させ、エリア内のオフィスビルやホテル、商業施設に熱や電力を提供しています。東日本大震災でもビル内の電力は一切止まりませんでした。環境性、BCP(事業継続計画)機能の高さが際立っています。こうした取り組みを広げ、まちづくり、都市づくりにつなげていくことが重要だと思います。

 最近では片山さつき地方創生担当相が国家戦略特区制度を活用し、最先端技術を取り入れた「スーパーシティ構想」を推進する方針を示しています。コージェネを含む技術の進歩を踏まえ、まちづくりそのものをリデザインするということが、エネルギー効率を向上し、地球温暖化を食い止め、人々が幸せに暮らしていくために求められています。

柏木: 今後、再生可能エネルギーやコージェネを取り込んだまちづくりを進める際には、仮想通貨で有名なブロックチェーンのテクノロジーを活用すべきだと思います。太陽光、風力、コージェネなどと接続した複数のコンピューターが互いに管理するデータを共有し、デマンドサイドに伝え、総合的に検証し全体最適化を行うのです。「風力発電の電力をこの家に売る」という具合に、電力カラーリング(由来別制御)も可能になります。大規模エネルギーシステムと分散型エネルギーシステムとをブロックチェーンのテクノロジーで結び最適制御する。これが現時点での脱炭素社会のグランドデザインになるのではないでしょうか。「System of the Systems」の発想で、こうした脱炭素型のまちづくりを実現できれば、強力な輸出アイテムにもなり、日本の経済成長の牽引役となり得ます。

赤石: ブロックチェーン中心にエネルギーの最適ネットワークが完成する方向に進むのは間違いないと思います。私はかつて経済産業省で情報政策を担当していましたが、情報通信の世界とエネルギーの世界とはアナロジーがあると感じました。情報はエネルギーの少し先を行っています。

 例えば電気は巨大な高圧線に送電線がつながり、魚の背骨のような構造になっています。通信もかつてはそうでした。それが1990年代のインターネット登場後は、円を幾つも組み合わせる円形構造に変わりました。コージェネを中心とした地産地消のエネルギーシステムはまさに円形構造です。

 情報の世界で起きたことを考えれば、今後、エネルギーの世界ではプライバシーの問題が出てくるでしょう。その次はセキュリティー。さらにはアクセスコントロールが問題になり、新しい切り口で競争政策が議論されるようになるはず。一歩先を行く情報通信の世界を追えば、数年後から10年後のエネルギーの姿が見えてきます。

ブロックチェーン技術でエネルギーを最適制御

 
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プロフィール
赤石 浩一(あかいし こういち)氏

赤石 浩一(あかいし こういち)
内閣府 政策統括官(科学技術・イノベーション・原子力担当)
1985年東京大学法学部卒業後、通商産業省(現経済産業省)入省。2004年経済産業省資源エネルギー庁エネルギー政策企画室長、05年経済産業省通商政策局米州課長を経て06年日本機械輸出組合ブラッセル事務所長に就任。07年経済産業省商務情報政策局情報政策課長、11年経済産業省大臣官房会計課長(併)監査室長、12年経済産業省大臣官房審議官(環境問題担当)、13年内閣官房副長官補室日本経済再生総合事務局次長、14年経済産業省大臣官房審議官(通商政策局担当)を務める。17年内閣官房内閣審議官(内閣官房副長官補付)(併)内閣府大臣官房審議官(科学技術・イノベーション担当)を経て18年7月より現職。

柏木 孝夫(かしわぎ たかお)氏

柏木 孝夫(かしわぎ たかお)
東京工業大学 特命教授/名誉教授
コージェネ財団 理事長
1970年東京工業大学工学部生産機械工学科卒。79年博士号取得。東京工業大学工学部助教授、東京農工大学工学部教授、東京農工大学大学院教授などを歴任後、2007年より東京工業大学ソリューション研究機構教授、12年より特命教授/名誉教授。11年よりコージェネ財団理事長。経済産業省の総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会長などを歴任し長年、国のエネルギー政策づくりに深くかかわる。現在、同調査会の省エネルギー・新エネルギー分科会長、基本政策分科会委員などを務める。主な著書に『コージェネ革命』『超スマートエネルギー社会5.0』など。