インタビュー

新春特別対談
脱炭素社会実現のためのエネルギーシステム
「システム思考」で最新技術を社会に実装(後編)

海外生まれの自然エネルギーを日本に持ち込む

柏木: 経済産業省は、私が座長を務める「水素・燃料電池戦略協議会」での議論を踏まえ、2017年12月に「水素基本戦略」を発表しました。世耕弘成経産相がこの戦略を英訳しサウジアラビアに持って行ったところ、非常に関心が高かったそうです。

 サウジアラビアのような産油国は貴重な資源である原油を付加価値の高い用途に向ける「ノーブル・ユース」を望むようになっています。原油は石油化学産業の原料として使い、太陽光や風力から生み出す電気を輸出する国へと転換しようとしている。太陽光や風力からつくった電力を使い、水を分解して水素を製造し、CO2と反応させてメタンガス化すればLNG(液化天然ガス)として船で運ぶことができます。日本の水素戦略を活用できます。

赤石: 私も資源エネルギー庁や外務省にエネルギー外交戦略を大きく見直す時期がきたのではないかと伝えています。例えば太陽光、風力ともふんだんな国・地域はあります。そこでエネルギーをつくり日本に持ち込むという発想を持つべきです。

 SIPの「革新的炭素資源高度利用技術」では、生産活動から排出されるCO2を炭素資源として利活用する技術を研究しています。これが実現すれば、エネルギー外交だけでなく素材外交にもつながってきます。

柏木: ゼオライトにCO2を吸着する性質があることを生かし、コンクリートの代用品として活用する動きもあります。CO2を「Capture(回収)」「Utilization(利用)」する「CCU」の取り組みを進める時代になってきましたね。

赤石: かつて京都議定書で定めた温室効果ガス削減目標を達成するために、CO2を「Storage(貯留)」する「CCS」が議論された時期がありました。しかし、日本には貯留の場所がなく、研究開発の成果は十分に活かされていません。CCUが可能になればガラリと状況は変わります。

柏木: CCUの一環として「スマートアグリカルチャー」の事例も出てきています。あるスマートシティではコージェネを中心とする分散型エネルギーシステムを構築。電気、熱に加えて排ガス中のCO2を温室に送り込んでいます。夜でも光合成ができるので、通常の半分の期間でイチゴやトマトが実る。こうした付加価値ビジネスを生み出せば、地方創生にも結びつきます。

赤石: 地方版スマートシティをどうつくっていくか。それらを政府が目指す超スマート社会「ソサエティー5.0」のプラットフォームにどう結びつけていくか。ここからが勝負といえます。日本の最先端のテクノロジーを「System of the Systems」に仕立てて輸出すれば、地方は発展し、日本経済は成長し、世界の様々な問題を解決することができる。日本の貢献は極めて大きなものとなります。

柏木: そういう未来を念頭に置き、引き続きSIPに取り組んでいきます。

海外生まれの自然エネルギーを日本に持ち込む

 
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プロフィール
赤石 浩一(あかいし こういち)氏

赤石 浩一(あかいし こういち)
内閣府 政策統括官(科学技術・イノベーション・原子力担当)
1985年東京大学法学部卒業後、通商産業省(現経済産業省)入省。2004年経済産業省資源エネルギー庁エネルギー政策企画室長、05年経済産業省通商政策局米州課長を経て06年日本機械輸出組合ブラッセル事務所長に就任。07年経済産業省商務情報政策局情報政策課長、11年経済産業省大臣官房会計課長(併)監査室長、12年経済産業省大臣官房審議官(環境問題担当)、13年内閣官房副長官補室日本経済再生総合事務局次長、14年経済産業省大臣官房審議官(通商政策局担当)を務める。17年内閣官房内閣審議官(内閣官房副長官補付)(併)内閣府大臣官房審議官(科学技術・イノベーション担当)を経て18年7月より現職。

柏木 孝夫(かしわぎ たかお)氏

柏木 孝夫(かしわぎ たかお)
東京工業大学 特命教授/名誉教授
コージェネ財団 理事長
1970年東京工業大学工学部生産機械工学科卒。79年博士号取得。東京工業大学工学部助教授、東京農工大学工学部教授、東京農工大学大学院教授などを歴任後、2007年より東京工業大学ソリューション研究機構教授、12年より特命教授/名誉教授。11年よりコージェネ財団理事長。経済産業省の総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会長などを歴任し長年、国のエネルギー政策づくりに深くかかわる。現在、同調査会の省エネルギー・新エネルギー分科会長、基本政策分科会委員などを務める。主な著書に『コージェネ革命』『超スマートエネルギー社会5.0』など。