インタビュー

新春特別対談
脱炭素社会実現のためのエネルギーシステム
「システム思考」で最新技術を社会に実装(後編)

基礎研究は強いが実用化がうまくない

「2018年9月に発生した地震によって、北海道内の全域が停電する『ブラックアウト』が起きてしまったのは衝撃的でした。再生可能エネルギーを安定的に大規模インフラにつなげる技術開発は急務であり、私たちに与えられた使命は極めて大きいと受け止めています」(柏木氏)
「2018年9月に発生した地震によって、北海道内の全域が停電する『ブラックアウト』が起きてしまったのは衝撃的でした。再生可能エネルギーを安定的に大規模インフラにつなげる技術開発は急務であり、私たちに与えられた使命は極めて大きいと受け止めています」(柏木氏)

柏木: SIPでは時速60㎞で走行中の電気自動車(EV)に給電効率90%で電力伝送することを目標としています。「磁気共鳴」「磁界共振」と呼ばれるワイヤレス給電を研究開発中です。ノーベル物理学賞を受賞した名古屋大学の天野浩教授がガン治療用に使っていた磁性体を活用した研究も進んでいます。ガン治療とワイヤレス給電に同じものを活用するとは、科学技術の基礎研究は本当に幅広い分野で応用が可能になるものだと実感します。

赤石: 日本は基礎研究では強いのに、実用化がうまくない。製品化の段階で米国&中国に取られてしまった例は枚挙にいとまがありません。太陽光も風力もシステムのつくり込み方でヨーロッパや中国に太刀打ちできず負けました。悔しくて仕方がないですね。

 ワイヤレス給電も基礎研究で日本は決して負けてはいません。問題はシステムとして考えること。時速60㎞で走るEVに電力伝送するのに仮に15分かかるとすれば、道路15㎞分に磁性体を埋め込まなくてはなりません。素材は何がいいのか、修理が必要な時にはどう入れ替えるのか、道路のどの部分を使うのかなども考えて設計する必要があります。ここまで実現して初めて、日本を変え、世界を変えることができると思います。

柏木: 「第5次エネルギー基本計画」には、再生可能エネルギーの主力電源化が盛り込まれています。気象に左右され、変動成分の高い再生可能エネルギーを大規模インフラの中に取り込むには、電圧・周波数を一定規模に保つことが必要。それができなければ停電してしまいます。SIPで「ユニバーサルスマートパワーモジュール」の開発を実現し、パワーエレクトロニクス(電圧・周波数等を変換する半導体・回路技術等)の技術を発展させることも重要な課題です。

 2018年9月に発生した地震によって、北海道内の全域が停電する「ブラックアウト」が起きてしまったのは衝撃的でした。北海道は再生可能エネルギーの発電量が全体の23%に達しています。再生可能エネルギーを安定的に大規模インフラにつなげる技術開発は急務であり、私たちに与えられた使命は極めて大きいと受け止めています。

赤石: 北海道の電力システムには設備や装置を複数用意する「冗長構造」がなくブラックアウトが起きてしまいました。通信の世界には冗長構造があります。エネルギーに先行する情報通信の動向を見ながら、対応策を講じていく必要があります。

 
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プロフィール
赤石 浩一(あかいし こういち)氏

赤石 浩一(あかいし こういち)
内閣府 政策統括官(科学技術・イノベーション・原子力担当)
1985年東京大学法学部卒業後、通商産業省(現経済産業省)入省。2004年経済産業省資源エネルギー庁エネルギー政策企画室長、05年経済産業省通商政策局米州課長を経て06年日本機械輸出組合ブラッセル事務所長に就任。07年経済産業省商務情報政策局情報政策課長、11年経済産業省大臣官房会計課長(併)監査室長、12年経済産業省大臣官房審議官(環境問題担当)、13年内閣官房副長官補室日本経済再生総合事務局次長、14年経済産業省大臣官房審議官(通商政策局担当)を務める。17年内閣官房内閣審議官(内閣官房副長官補付)(併)内閣府大臣官房審議官(科学技術・イノベーション担当)を経て18年7月より現職。

柏木 孝夫(かしわぎ たかお)氏

柏木 孝夫(かしわぎ たかお)
東京工業大学 特命教授/名誉教授
コージェネ財団 理事長
1970年東京工業大学工学部生産機械工学科卒。79年博士号取得。東京工業大学工学部助教授、東京農工大学工学部教授、東京農工大学大学院教授などを歴任後、2007年より東京工業大学ソリューション研究機構教授、12年より特命教授/名誉教授。11年よりコージェネ財団理事長。経済産業省の総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会長などを歴任し長年、国のエネルギー政策づくりに深くかかわる。現在、同調査会の省エネルギー・新エネルギー分科会長、基本政策分科会委員などを務める。主な著書に『コージェネ革命』『超スマートエネルギー社会5.0』など。