インタビュー

新春特別対談
脱炭素時代のエネルギーシステム
“シェアリング”発想で
蓄電システム構築を[前編]

電池で蓄電できるのは半日まで

「パリ協定」の発効で世界の潮流は変わりました。各国ともそれまでの「低炭素」から「脱炭素」へと一気に走り始めています。先進国は過去、化石燃料を使い文化資産を作り上げてきた経緯があります。途上国も同様に発展していく権利がある。先進国と途上国の間の「衡平性」も保ちつつ、脱炭素を実現するエネルギーシステムを考えていかなくてはなりません。(柏木氏)
「パリ協定」の発効で世界の潮流は変わりました。各国ともそれまでの「低炭素」から「脱炭素」へと一気に走り始めています。先進国は過去、化石燃料を使い文化資産を作り上げてきた経緯があります。途上国も同様に発展していく権利がある。先進国と途上国の間の「衡平性」も保ちつつ、脱炭素を実現するエネルギーシステムを考えていかなくてはなりません。(柏木氏)

柏木: 「パリ協定」の発効で世界の潮流は変わりました。各国ともそれまでの「低炭素」から「脱炭素」へと一気に走り始めています。先進国は過去、化石燃料を使い文化資産を作り上げてきた経緯があります。途上国も同様に発展していく権利がある。先進国と途上国の間の「衡平性」も保ちつつ、脱炭素を実現するエネルギーシステムを考えていかなくてはなりません。

 脱炭素型電源として頭に浮かぶのは太陽光発電、風力発電などの再生可能エネルギー。各国とも再エネを最大限取り込むようなエネルギービジョンをつくることでサステナビリティを実現しようとしています。日本政府も2018年に閣議決定した「第5次エネルギー基本計画」で再エネの主力電源化を打ち出しました。ただ再エネには気象によって変動する弱点があります。私は電圧を人間の血圧、周波数を脈にたとえて説明しています。人間は血圧が高すぎたり低すぎたり、また脈が乱れた時には倒れたり具合が悪くなったりします。それと同じで電力も電圧が高すぎたり低すぎたり、周波数が乱れたりすればうまく流れず停電してしまいます。調整するための蓄電システムが不可欠です。

吉野: おっしゃる通り、再エネを普及させるには、変動をカバーする仕組みが必要です。国際連系線で広域に融通し合える欧州連合(EU)などと異なり、島国の日本は他国と連系することができません。国内でも地域によって周波数が50Hzと60Hzに分かれていて電力系統の規模が小さい。なにがしかの蓄電システムが必要になります。

柏木: 具体的にどのような蓄電システムを構築すべきでしょうか。

吉野: 何ワットの電力を何時間または何日間ためるのか、その時間軸がカギとなります。現在、短いスパンでは1時間という需要があると思います。太陽光や風力で発電した電力を1時間ため、その間の変動を平準化するのです。半日という需要もあるでしょう。これならば、太陽光が稼働する昼間に発電した電力を蓄電できます。一方、長いスパンでは季節変動を平準化するために半年という需要があります。電池で対応できるのは1時間または半日まで。半年に対応するには別の貯蔵法を試みた方がいいかもしれません。そう考えると、だいたいどれぐらいの電池が必要なのかのイメージができます。

 蓄電システムを構築する上で課題となるのがコストです。電池は電気をためて平準化するという重要な役割を果たしますが、付加価値がつくものではありません。コストが高すぎれば普及は難しくなります。そこで重要なキーワードがシェアリング。電気をためるだけでなく、他の用途でも使う想定で蓄電システムを構築するのです。そうすればコストの負担は半分で済みます。

 具体的な手段の1つがEV。相当な量の蓄電ができますから、蓄電システムとして使わない手はありません。ある時はクルマとしてモビリティーに使う。ある時は蓄電システムとして使う。こういうシェアリングの発想を取り入れると、コストの問題も解決できるのではないかと思います。

 
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プロフィール
吉野 彰(よしの・あきら)氏

吉野 彰(よしの・あきら)
産業技術総合研究所ゼロエミッション国際共同研究センター長
旭化成名誉フェロー
1948年生まれ。70年京都大学工学部石油化学科卒業、72年京都大学大学院工学研究科石油化学専攻修士課程修了。同年旭化成工業(現旭化成)入社。97年イオン二次電池事業グループ長、2001年電池材料事業開発室室長、03年グループフェローに就任。05年大阪大学大学院工学研究科博士(工学)取得。10年技術研究組合リチウムイオン電池材料評価研究センター(LIBTEC)理事長(現任)、15年旭化成顧問などを経て17年名城大学大学院理工学研究科教授(現任)、同年旭化成名誉フェロー(現任)を歴任。19年ノーベル化学賞受賞。20年1月産業技術総合研究所ゼロエミッション国際共同研究センター長に就任。

柏木 孝夫(かしわぎ たかお)氏

柏木 孝夫(かしわぎ たかお)
東京工業大学 特命教授/名誉教授
コージェネ財団理事長
1946年東京都生まれ。70年東京工業大学工学部生産機械工学科卒。79年博士号取得。80~89年米商務省NBS招聘研究員、88年東京農工大学工学部教授などを経て2007年東京工業大学大学院教授に就任。12年東京工業大学特命教授に。18年内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期 エネルギー・環境分野プログラムディレクターに就任。専門はエネルギー・環境システム。03年日本エネルギー学会学会賞(学術部門)、08年文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)など受賞多数。経済産業省総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会長、同調査会総合部会委員等でも活躍。著書に『スマート革命』『エネルギー革命』『コージェネ革命』『超スマートエネルギー社会5.0』など。