インタビュー

新春特別対談
脱炭素時代のエネルギーシステム
“シェアリング”発想で
蓄電システム構築を[前編]

太陽光、風力に続く第3の再エネが求められる

柏木: 2040年にはクルマの販売台数のうち55%ぐらいがEVになるという推計も出ています。様々な分野から集めたデータをベースとすれば、シェアリングの発想でEVと蓄電の双方に活用できる「VtoX」が普及していくでしょう。例えば、「Vehicle to Supermarket」で、太陽光で発電した電力をためたEVがスーパーマーケットまで移動して冷凍機の電源となるという具合です。多様なシェアリングビジネスが生まれることが期待できます。

 EVの課題は航続距離です。長距離を走るには大容量の電池の搭載が必要で、コストや安全性の問題が出てきます。短距離はEV、長距離は燃料電池車といった使い分けも必要になると思いますが、いかがですか。

吉野: IoTやAI、5Gなどの技術を取り込んだ未来のクルマ社会は「CASE:Connected(コネクティッド)、Autonomous/Automated(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)」という言葉で表現されます。世界がこの方向に移っていった時には、簡単に乗り継ぎができるようになります。EVの電池が切れそうになっても、次のクルマに乗り換えればいい。30秒もあれば乗り換えできます。クルマも個人所有ではなく、シェアリングの領域に入っていくということだと考えています。

 そういう世界を考えると、1回の充電で1000kmなどというべらぼうな距離を走る必要はありません。どうしてもクルマに1000km乗りたいという人は途中で乗り継げばいいのです。この辺りに、IoTやAI、5Gの技術などを取り込んだ未来のサステナブル社会の一端が見えるように感じています。

柏木: 所有ではなく使用を前提とし、乗り継ぎや電池の入れ替えが容易にできる社会に変わっていくということですね。家庭用に近場を走行するクルマを所有し、遠出する時にはカーシェアリングを利用するなど、使い方、乗り方も多様化していくかもしれません。

 日本はこれまで大規模電源を中心に電力を安定的に供給してきました。今後はこうしたEVや再エネやコージェネレーション(熱電併給)システムを取り入れ、デジタル技術でディマンドをきめ細かく制御する分散型エネルギーシステムが大規模電源と共存する構図になります。その際、いかに強靱性を保つかは重要な課題です。

コロナ禍の中、対談はリモートで行われた。写真は対談中のキャプチャー
コロナ禍の中、対談はリモートで行われた。写真は対談中のキャプチャー

吉野: 現在、再エネで実用化されているのは太陽光と風力が中心ですが、太陽光は夜間には稼働しないので昼夜のバランスを保つのがどうしても難しい。もう1つ、できれば昼夜関係なく電力を供給できる再エネが必要だと思います。地熱かバイオマスかわかりませんが、第3の再エネが求められます。

柏木: 再エネはひとまとめで語られがちですが、実はいろいろな種類があります。太陽光や風力のように気象の変動を受けるものには蓄電池と組み合わせるなど何らかのシステムを構築することが必要。一方、地熱や水力は一定の電力を供給できるのでベース電源になり得ます。

 バイオマスは再エネの中では蓄電システムに近い役割を果たす存在。燃料を使いながら調整できる再エネとなる可能性がありますね。こうしたいろいろな役割を理解した上でエネルギーシステムの在り方を考えていくことが重要だと思います。

 
前ページ前ページ 123 次ページ次ページ
 
インタビュー 記事一覧
 
 
 
プロフィール
吉野 彰(よしの・あきら)氏

吉野 彰(よしの・あきら)
産業技術総合研究所ゼロエミッション国際共同研究センター長
旭化成名誉フェロー
1948年生まれ。70年京都大学工学部石油化学科卒業、72年京都大学大学院工学研究科石油化学専攻修士課程修了。同年旭化成工業(現旭化成)入社。97年イオン二次電池事業グループ長、2001年電池材料事業開発室室長、03年グループフェローに就任。05年大阪大学大学院工学研究科博士(工学)取得。10年技術研究組合リチウムイオン電池材料評価研究センター(LIBTEC)理事長(現任)、15年旭化成顧問などを経て17年名城大学大学院理工学研究科教授(現任)、同年旭化成名誉フェロー(現任)を歴任。19年ノーベル化学賞受賞。20年1月産業技術総合研究所ゼロエミッション国際共同研究センター長に就任。

柏木 孝夫(かしわぎ たかお)氏

柏木 孝夫(かしわぎ たかお)
東京工業大学 特命教授/名誉教授
コージェネ財団理事長
1946年東京都生まれ。70年東京工業大学工学部生産機械工学科卒。79年博士号取得。80~89年米商務省NBS招聘研究員、88年東京農工大学工学部教授などを経て2007年東京工業大学大学院教授に就任。12年東京工業大学特命教授に。18年内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期 エネルギー・環境分野プログラムディレクターに就任。専門はエネルギー・環境システム。03年日本エネルギー学会学会賞(学術部門)、08年文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)など受賞多数。経済産業省総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会長、同調査会総合部会委員等でも活躍。著書に『スマート革命』『エネルギー革命』『コージェネ革命』『超スマートエネルギー社会5.0』など。