経済産業省 大臣官房 政策評価広報課長
東京オリンピック・パラリンピック(総合調整担当)
前田 泰宏さん

経済産業省の前田泰宏さんは、経産省が主宰する人づくりの研究会でAPUの今村副学長と同席したのをきっかけに、APUの取り組みを深く知るようになったそうです。現在、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催の準備に奔走する前田さんは、日本人が海外の人とコミュニケーションをとる力をもっと身に付ける必要がある、と痛感しています。APUは、その意味で2020年対策の先行事例。すでにオリンピックさながら80ヵ国の留学生が別府にあるキャンパスに集結して、日本人学生と共に生活しています。日本よ、APUをお手本にしよう。前田さんが期待する、未来の日本におけるAPUの役割とは?
私は現在、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックの下準備の仕事をしています。
今から50年前、1964年の東京オリンピックの開催時に、日本はハードウェアを整備しました。新幹線が開通し、さまざまな体育施設ができ、道路が拡幅され、高速道路が建設されました。
では、今度のオリンピックで日本は何を次世代に残せばいいのでしょう。それはかつてのようなハードウェアではない。ヒューマンウェア、人間の力です。人づくりの仕組みです。
具体的にはどんな仕組みか。世界中から集まるあらゆる国の人々と、コミュニケーションを、歓待できるような日本の人々を育てる仕組みでしょう。
そこでAPUです。
2000年の開学以来、APUは、留学生が全学生の50%、教員の50%も外国人、その上、80ヵ国近くの国から集まっている。
何かに似ていませんか? オリンピックであり、パラリンピックです。世界中の国々から代表選手とお客さんが、開催地である2020年の日本に集まってくる。
APUのキャンパスは、そんな未来の日本をすでに体現しているともいえます。
近年、日本ではグローバル人材を育成する目的で、複数の大学が誕生したり、国際関係学部が新設されたりしています。
2000年に開学したAPUもそんな大学の1つですが、九州・大分県の別府市という地方都市をすでにオリンピック開催地のような国際的な場に変えてしまった。
APUに期待しているポイントは主に次の3つです。
第1に「人づくり」の先行事例になっていただきたい。
オリンピックを契機にさらに世界中からさまざまな国の人々が集まってきてくれる。そんな魅力的な日本の未来を目指すにあたって、冒頭申し上げたように、今までの大学教育などではなし得なかった、海外から日本を訪れる人々を歓待できる国際的なコミュニケーション力を持った「人づくり」が急務です。APUは、まさにその先行事例。日本の学生が多様な留学生と交わることで、単に英語力を磨くだけではなく、「外国の人とのお付き合い」を肌で学んでいます。APUの取り組みを国としてもぜひ参考にさせていただきたく思っています。
第2に、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催時においては、ぜひAPUの留学生の方々、日本人学生の方々に国際ボランティアなどのかたちで、ご協力を仰ぐスキームをつくっていきたい、と考えています。
オリンピック・パラリンピックでは、世界中の国々から人が集まります。一方、APUには、常時80ヵ国前後の留学生が在籍しています。当然そのすべての国の選手やお客さんが日本にいらっしゃるでしょう。ぜひ、マッチングを行い、オリンピックのホスピタリティの向上に生かしていただければ、と。
第3に、多様な国々からやってきたAPUの留学生のみなさんには、ぜひ、日本人ではなかなか見えない「日本ならではの、日本の魅力」と、「日本ならではの、日本の欠点」とをご指摘いただきたいと思っています。日本の魅力の再発信と、日本の欠点の改善のきっかけをつくりたい、ということです。
自分の国の長所というのは、案外自国民にとっては「当たり前」すぎて見えなかったりするものです。ところが海外から日本を訪れた方に聞くと、「新幹線が数分置きに時刻表通りに次々と到着し、発車するのに驚いた」「渋谷のスクランブル交差点で、四方八方からたくさんの人が交差するのに、誰もぶつからないのにびっくりした」となる。私たち日本人にとっては「当たり前」のことが、外国人の目には「日本ってすごい!」と「魅力」や「長所」に映る。
一方、日本の設備というのは、世界有数の先進国にもかかわらず、非常に内向きだったりします。外国語表示どころか、英語表示すら満足にされていないため、海外からの旅行者が道に迷ったり、電車の乗り換えに苦労したり、という話は枚挙に暇がありません。また、バリアフリーなどの対応もまだまだ遅れている面があります。こういった「短所」についても、「外国人の目」で厳しく指摘いただき、2020年までに改善する材料とさせていただきたいと思います。
これまでの日本の大学の評価はややもすると「偏差値」的なモノサシに頼り過ぎていた側面がありました。偏差値教育というのは、与えられた課題をある一定時間に処理させたり、正解がある課題を的確にこなしたりという、「情報処理」「事務処理」的な仕事の能力を磨くには実に効果があります。
けれども、日本はとっくの昔に成長期を終え、変革期を迎えています。正解のない場で、まったく新しい何かを生み出さなければ、世界で生き抜くことはできません。課題を自ら発見し、新しい解を自ら生み出す。偏差値教育が苦手とする分野です。では、例えば教育の場でどうすれば課題発見、これは課題解決の能力を伸ばすことができるのか?
APUの実践は、その先進事例です。つまり、文化や言語の違う人々でコミュニティを形成し、共に学び、共に遊び、共に暮らし、時にはケンカをし、時には一緒に何かをつくる。異質な人たちと交わり、異質な人たちと新しい文化をつくる。APUの学生たちは日々そんな課題発見、課題解決に取り組んでいる、ともいえます。
2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催は1つの契機です。日本が国際的な感覚を身に付け、世界の人々を呼び込み、世界の人々と新しい市場をつくるチャンスです。APUの卒業生たちが日本と世界をつなぐパイロットの役割を果たしてくれるのでは、と、私は期待しています。
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