ため池にクヌギ林にシイタケにサンショウウオ!
APUパワーで、大分・国東半島を世界農業遺産へ

APU アジア太平洋学部准教授
ヴァファダーリ・メッヘリージ・カゼムさん

大分県国東半島宇佐地域(豊後高田市、杵築市、宇佐市、国東市、姫島村、日出町)が、2013年5月世界農業遺産(GIAHS: Globally Important Agricultural Heritage Systems、ジアス)に認定されました。世界農業遺産とは、食糧の安定確保を目指す国際組織「国際連合食糧農業機関(FAO)」が、伝統的な農業や文化、土地景観の保全と持続的な利用が図られている地域に対して認定するものです。この認定を推進したのが、APUのアジア太平洋学部准教授 ヴァファダーリ・メッヘリージ・カゼム先生です。

世界農業遺産の条件をすべて満たしていた国東(くにさき)モデル

私は、FAOの世界農業遺産のサイエンティフィックメンバーです。ある地域が世界農業遺産に認定されるには、食の安全、生物多様性、農業の景観、そして農業で生計を立てられることが求められます。

大分県の国東(くにさき)半島では、とてもユニークな農業がずっと続けられています。国東半島は山がちな土地で平野が少ないうえ、雨も少ない。このため慢性的な水不足で農業にはけっして向いている土地ではありません。そこで地元の農民たちは、谷の上流部からため池をいくつもつくり、地域の田畑に分配することで水不足に対応する農地開発を行ってきました。

2014年に大分県姫島村で地元の人々向けに開催された世界農業遺産認定に関するワークショップの様子

大分県国東・宇佐地域で地元の人々向けに開催された世界農業遺産認定に関するセミナーの様子

一方、ため池の周りは、手入れを施したクヌギの森にして、ため池が崩れないように土留めとする一方、定期的に間伐を行って「ほだ木」をとり、シイタケの大量生産システムを構築しました。

また、畳の原材料としてイグサ以上に貴重な七島藺(シチトウイ)を育て、高級な畳の原材料として販売しています。

さらにため池で水系管理を行い、クヌギの森の手入れで森林管理を行うことで、生き物が豊かに暮らす環境が維持され、生物多様性の面で優れた地域にもなっています。貴重種のオオイタサンショウウオがその象徴ですね。

こうして森林と水系を管理すると、その下流部にあたる海辺の自然も豊かになります。ミネラルたっぷりの水が流れ込み、プランクトンが豊富に育ち、魚種が増える。

かくして国東半島では、人の手を介して農業と漁業と自然とがつながった調和した生態系が実現しました。

これは絶対に世界農業遺産になる。

そう思って私は活動を開始したのです。ではより詳しく国東半島のお話をいたしましょう。

世界農業遺産に認定された国東半島宇佐地域の農林水産循環

さきほども指摘しましたが、大分県北東部の国東半島を中心とした4市1町1村で構成される国東半島宇佐地域は、中央部の両子山系から放射状に伸びた尾根と深い谷から成り、平野部がとても狭くなっています。瀬戸内式気候で雨が少ないうえ、雨水が浸透しやすい火山性の土壌であるため、古くから農業用水の確保に苦労してきました。

そこで、古来この地の人々は、ため池をつくり、それを連結させて少ない水を平等に効率よく分配する仕組みをつくってきました。上下の池をつなぐ水路を必要に応じて開閉することで、必要な田畑に水を確保できるようにしているのです。昔は約6000のため池がありましたが、現在残っているのは約1300です。

そのようにして少ない水を賢く利用しながら、山あいでも水田農業を営んできました。15世紀に宇佐八幡宮の荘園として開発された「田染荘(たしぶのしょう)小崎(おさき)の農村景観」は、中世の荘園の姿が現在に継承されていることが評価され、2010年に国の重要文化的景観に選定されています。

この地域の森はクヌギの人工林です。クヌギは、12~13年で成木となり伐採して利用しますが、伐採後の切り株から自然とまた芽が出てくるため、伐採や萌芽した芽の間引き、下草の整備などを継続するだけで、森が維持されます。また、クヌギは根をしっかりと張り巡らせるので、山の保全にもつながります。

さらに、落葉樹なので落ち葉が土壌を肥やし、土壌の保水性も高まります。その土壌を通る水も滋養に富み、多彩な生態系を育んでいます。例えば、絶滅危惧種に指定されているオオイタサンショウウオや、環境省のレッドリストに掲載されているイワギリソウやコシャクシギなど、140種もの希少な動植物が、国東半島では生息しているのです。

コシャクシギ
日本では春と秋に、数少ない旅鳥として渡来する

イワギリソウ
山間の岩壁に生える多年草。「岩桐草」という名前があります

オオイタサンショウウオ
平地や丘にある森や竹林、田んぼの中にくらし夜に行動します

伐採したクヌギは、昔は木炭にされていましたが、現在では原木シイタケの栽培に利用されています。シイタケは大分県を代表する農産品で、干しシイタケの生産量は国内シェアの48%を占め、2位宮崎県の18%を大きく引き離しています(※)。品質の高いシイタケを栽培するためには、適切な散水が欠かせません。特に冬は気温が低いため水分が必要ですが、その時期この地では降水量が少ないのです。そこで、ため池の水が活躍します。クヌギの森とため池は、シイタケ栽培に必要不可欠な存在なのです。
※ 平成24年特用林産基礎資料(林野庁)

国東半島宇佐地域のもう1つの名産品が、七島藺です。七島藺は、高級畳表として名高い琉球畳の原材料です。一般的なイグサよりも耐久性が高く、柔道場や伝統的建造物の畳表に使用されています。この七島藺は、水の利用時期や作業の繁忙期が稲作と重ならないことから大分県各地で栽培されてきましたが、現在は、国東市が唯一の産地となっています。

登録後もシステムを維持するために、コミュニティーリーダーを発掘

世界農業遺産の発掘と登録は、金沢

日本へは、APUの博士課程の学生として来ました。その後2008年から国連大学と金沢大学でポストドクター研究員を務め、2011年からAPUに先生として戻りました。

金沢に居たときは、能登の里山里海の世界農業遺産認定に協力しました。故国イランのカシャーンの地下水システムも農業遺産にしました。

世界農業遺産に認定されれば、国内だけでなくグローバルな知名度も高まり、観光客も来るし、農産物も売れる可能性が広がります。地域も元気になる。

ただし、世界農業遺産に登録されるには、かなり実践的な活動が必要です。論理や概念だけでは理解できず、実際にコミュニティーと一緒に協働しなければなりません。そのためには、まず現地に通って、地域の人たちと交流しないと。これは、石川県の能登半島でもこの国東半島も、そして世界の国々でも同じです。

国東にも8ヵ月くらいずっと通いました。今はもうみんなをよく知ってるからあちこち行けるけど、最初はみんなびっくりしてましたね。

2013年4月、大分県6市町村長(豊後高田市、杵築市、宇佐市、国東市、姫島村、日出町)や
関係機関の代表、有識者などでつくる「国東半島宇佐地域世界農業遺産推進協議会」が設立され、
総会が開催された際の様子。認定申請に向け、協議会が一丸となって取り組むことが確認されました。
総会の後には、国連大学による講演会も開催されました

世界農業遺産に登録はできたけど、この後も、数年に一度、FAOや政府がその後の取り組みについて審査に来ます。それまでにアクティビティを立ち上げないといけない。私はアドバイザーなどの手伝いはできますが、実際のアクティビティは、地域の人たちが自分自身でしないと、持続していくことはできません。

そのために、コミュニティーリーダーを見つける必要があります。そこで、シイタケ農家であり、研究者でもあり、英語も分かる林先生をヘッドハントして、コミュニティーリーダーになっていただきました。リーダーはつくられるものではないので、見付けました。トレジャーハンティングです(笑)。

地域が元気になり、次世代が誇りを持てる地域づくりを推進

世界農業遺産推進協議会 会長 林浩昭さん

世界農業遺産の認定により、農家も元気に

私はここで生まれ、親父がシイタケをつくってお金を出してくれて、大学に行かせてもらいました。1995年から東京大学大学院農業生命科学研究科助教授をしていましたが、2004年に辞めて帰郷し、シイタケと稲作の農業を始めました。

3年前にカゼム先生にお会いして、世界農業遺産というものがあると教えてもらいました。それなら国東にこういうシステムがあるという話をして、彼が体系づけてくれたわけです。

私たちは、国東の農業のモデルは頭の中で分かってはいるけど、それが世界的に大事なことかどうかはまったく分かりません。しかし、カゼム先生は世界中の農業者を見ているので、これはちゃんとFAOに報告すれば通ると言ってくれました。

FAOの関係者がため池を見に来たんですよ。ちょうどそこで、シイタケをつくっていたんです。みんなすごく喜んでね。

認定されたことによって農家の人も元気になって、最近は森もちゃんと下草刈りなどをして、整備されています。

子どもたちには地域の素晴らしさを知ったうえで、
世界に羽ばたき戻ってきてほしい

協議会では、現在子どもたちの教育や、農家や伝統的な芸能の支援、ため池の維持管理などを行っています。

特に重要なのが子どもたちの教育です。小学校から高校まで、世界農業遺産を勉強して、地元の人たちがどんなことをやってきたか、それが世界に通じるかというようなことを学びます。

最終的には、ここの子どもたちが世界中に羽ばたいて、世界中の人と関わって、またここに帰ってきて、何か新しいことを始めてほしい。キーワードは循環です。

>> 外から人を呼び込む仕組みをつくる

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それを教えてくれたのはAPUでした
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困ったら絶対に助けてくれる、私も助ける
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大分と別府に貢献していきたい
  ものすごく多くのチャンスがあって、自分の可能性を広げられる
それがAPU
入学と同時に「英語」漬けで、APUからポルトガルの大学へ で、分かった。うちの大学のグローバルぶりは世界一!   獣医さん志望だった私が、九州別府の国際大学とタイを往復するようになったわけ
別府のスナックから、新しい町の魅力を発信するプロジェクト、APU学生の「地域創生」、ご期待下さい!   僕が仲間と作った大分県CMと、APUのプロモーションビデオ、日本の皆さん、タイの皆さん、世界の皆さん、見てください
オープンキャンパスでAPUの説明をした高校生が翌年入学してきてくれて、再会したときの喜び、忘れられません   夢は、2020年東京オリンピックの通訳!
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