住友商事株式会社 人事部 部長代理 採用チーム長 髙橋 勇さん

総合商社、住友商事には、なんとAPUの一期生が入社しています。しかも、いきなり海外はタイの現地法人に。国際的な教育環境で4年間を過ごすAPUのキャンパスは、総合商社の仕事場の空気とそっくり、と同社の人事部で採用チームを率いる髙橋勇さんは語ります。APUの卒業生の仕事ぶりは? そしてこれから欲しい人材は? ストレートに話していただきました。
APUの卒業生を初めて採用したのは、2003年度。APUの開学が2000年ですから最初の卒業生ですね。タイの現地法人、タイ住友商事にタイ国籍のAPU卒業生が入社しました。
それを皮切りに、海外拠点では韓国、ベトナム、インドネシア、シンガポール、台湾、モンゴルと、アジアを中心にほぼ毎年、これまでに18人のAPUの卒業生が、世界中の現地法人・事業会社に入社しています。
私自身、2009年から2014年までシンガポールに駐在していたのですが、そこの同じ部でも、APUの卒業生で中国系の女性が働いていました。
2013年と2015年には、日本の住友商事本社でも、APUの卒業生を新卒採用しています。
APUについては、開学当初から注目していました。商社向きの人材が、絶対いるぞ、と思ったからです。
総合商社は、文字通り、世界が舞台のビジネスです。英語ができるのは当たり前、英語が通じない国でもビジネスに結びつける、柔軟なコミュニケーション能力とタフな胆力が求められます。
APUは学生の半分が留学生。しかも世界中から集まっている。そんな大学で4年間を過ごした学生は、留学生も日本人学生も、当社の海外組織で働くことに興味があり、海外でもタフに働ける人材がたくさんいるに違いない、と。
ちなみに住友商事の場合は、本社採用とは別に、各現地法人が独自採用をずいぶん昔から行っています。そこで注目するのが、日本の大学や大学院に各国から留学している留学生です。彼ら彼女らは、日本で勉強と生活の経験がある。グローバルにビジネスを展開している当社にとって、優秀な留学生は当社のネットワークの中で働いていただくのにうってつけの人材です。
その意味で、開学のときから多数の留学生を積極的に日本に呼び込んだAPU は、人事担当としてずっと注目していたわけです。
私自身も、2007年、2008年、2009年と3年にわたって人事担当として、九州別府のAPUキャンパスに足を運び、会社説明を行いました。会社説明会に集まった学生たちの顔ぶれを見て、すごく既視感を覚えました。というのも、住友商事の海外拠点の環境とそっくりだったからです。
私が働いていたシンガポールの拠点も、全体で300人程度、当然シンガポール人もいれば、マレーシア、インド、中国、そして日本などいろいろな国籍を持つメンバーが働いていました。グローバルな職場に臆せず飛び込み、異なる文化背景を理解した上でチームワークができる。これは、APUで学んだ人材の強みだと思います。
さらに、一緒に働くことでAPUの卒業生ならではの特長を、もう1つ発見しました。それは外国籍の卒業生たちが皆、「和の心を持っている」こと。
外国籍の方であっても、日本人的な配慮、気配りができるんです。1を伝えると、2、3と先を読んで行動してくれる。いわゆる、気が利く人が多いと感じます。日本で暮らし、日本で学び、日本人の仲間がたくさんできて、さらにいうとAPUでの寮生活や別府の旅館でのアルバイトなど、大学生活全般を通して学んだのでしょうね。恐らく私以外の住友商事の人間も、それを感じていると思います。
総合商社の仕事をひと言で表現すると、「新しいビジネスモデルをつくる」です。扱う商品、展開する国はなんでも・どこでもあり。最近では、新興国での環境ビジネス、インフラ整備などに興味を持って受けてこられる学生さんが多いですね。それも1つのビジネスです。
ビジネスをつくる上で大切なことを、住友商事では「創造・発信・協働」という3つのキーワードで表しています。アイデアを生み出し、情熱を持って発信し、周りのひとを巻き込んでゴールに向かって行動する。そんなひとが、住友商事が求める人材です。
このうち、「発信」と「協働」はAPUの卒業生が備えている資質だと思います。さまざまな国のひとが集まる環境の中では、自分の考えを発信することも、それぞれの意見を尊重した上で協力して物事を進めることも不可欠です。日本人だけの集団のように、暗黙の了解で物事を進めることはできませんからね。
そして、APUの卒業生は多文化環境で起こるさまざまなトラブルやいさかいごと、ギャップを乗り越えてきた経験も持っています。価値観の違いによるトラブルを乗り越えてきた経験を語ってくれたことは、採用の選考でも魅力的なポイントでした。我々の普段の仕事でも、多様な背景を持つメンバーと一緒になって、高い成果を出すことが求められます。その経験を大学時代にしているというのは大きいですよ。
2013年、初めて本社に入社したAPUの卒業生は、韓国籍の方。今回、インタビューに登場してもらうという話もあったのですが、実は彼、いまアフリカはガーナに駐在しているのでちょっと難しいかなと(笑)。住友商事では、入社10年で3つの異なる業務を経験してもらいます。そして、そのうち1つは必ず海外です。入って2年目で海外駐在というのは早い方。発電などインフラビジネスを担当しています。当社でも期待の星の1人です。
さて、入社してから伸びるひとの特徴を述べます。私見ですが3つあるな、と感じています。
第1に「大変なことを楽しんでいるひと」。商社って派手に見えるかもしれないけれど、地道で泥臭い仕事が多くあります。トラブルも多い。海外の現地法人に行って、新規事業の立ち上げに関わったら、トラブルがビジネスの中心になります。そんな状況をむしろ楽しめる人。伸びている人材に共通する点ですね。
第2に「素直なひと」。若いひとほど、これしかやりたくない、と自分の殻に閉じ籠もってしまう傾向があったりするのですが、自分の殻を脱ぎ捨てて、むしろあらゆることから吸収しようというタイプのひとが、伸びています。
第3に「経験から学ぶひと」。住友商事では、入社1年目2年目からどんどん現場で、場合によっては海外で仕事を任せます。当然、失敗もしますが、折り込み済みです。失敗から学ぶことができる人材が育つからです。逆にいうと伸びる人材は、失敗も含むさまざまな経験を自分の血肉にできるひとですね。
そこで、APUも含め大学生の方々に要望すること。
日本の学生に関しては、まず、自分で課題を発見し、解決することを鍛えてほしいと思います。最近の学生さんはとても優秀です。勉強もちゃんとしている、語学力もけっこうある。ただ、やや保守的になり過ぎている、失敗を恐れ過ぎる、周囲を見渡し過ぎるきらいがちょっとあります。もしかするとここ20年の不況がそうさせたのかもしれません。
ただ、現実の社会では、不況がずっと続いたがゆえに、いままでにないビジネスを考えたり、いままでに開拓していない市場を発見したり、といったベンチャースピリットが、企業人全てに求められるようになっています。優等生であるがゆえに、自分から一歩前に出ない、リスクを冒さない、というのは、もったいない。もっと飛んだり跳ねたりしていいんじゃないか、と思っています。
留学生に関しては、こと当社の入社に関していうと、鍛えていただきたい点はたった1つ。日本語力です。当社は入社試験において、日本人学生も留学生もいっさい差をつけません。同じ条件で試験を受けていただきます。つまり日本語の試験が基本になります。入社してからチームを組むのは日本人がまだまだ多い。国内のクライアントと話す機会もたくさんある。高度な日本語力は商社の仕事において必須です。せっかく他の能力が高いのに、日本語力がもうひとつなために、入社にいたらないケースがけっこうあります。大学4年間で、ぜひ日本語力に磨きをかけていただきたいですね。
世界中で新しいビジネスモデルをつくっていくということは、世界中で起業するということ。
我々は、本気で社員全員を経営者として育てようとしています。住友商事は800を超える事業会社が世界中にあり、若い社員の多くが経営者として派遣されていきます。そして現地での経営者としての経験を元に、今度は自分で生み出したビジネスで、次の会社をつくっていくことになります。入社に際して国籍はまったく問いません。世界を舞台に起業してみたい、という気概を持った学生さんは、ぜひ当社にチャレンジしてほしいと思っています。なにより、APUの日本人学生たちに、もっともっとエントリーしてもらいたいですね。
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だからイノベーションが生まれ続けるんです |
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