──エネルギー基本計画については、経済産業省の総合資源エネルギー調査会総合部会で、「生産・調達」「流通」「消費」という3段階に分けて議論されています。各段階において、何が論点として挙げられているのでしょうか。また、産業や経済に与える影響や、ビジネスチャンス創出の可能性について教えてください。
佐藤: まず生産・調達においては、再生可能エネルギーの導入を加速させるのと同時に、石炭や天然ガスを燃料とする日本の高効率な火力発電技術をさらに推進していく必要があります。例えば、磯子の発電所では、世界最先端といえる日本の技術で、高効率な石炭火力発電を実現しています。仮に、この技術を米国、中国、インドに展開したとすると、二酸化炭素排出量を15億トンも削減できるようになり、これは、日本での年間の総排出量に相当する大規模な削減量です。今後、エネルギーの高効率化を求める諸外国に対し、日本の技術を結集させたインフラを売り込み、輸出していくことが、日本の競争力を高め、それが成長産業になると期待しています。

佐藤政務官は、「小売りの自由化と発送電分離を併せて進めていくことで、産業全体としての競争力が高まる」と話す
流通の過程では、電力システム改革が要になります。まず2016年を目標に小売りの自由化を開始し、次の段階で発送電分離を実行する工程を組み立てています。小売りを自由化すると、色々な電力会社が参入して競争が促され、電気料金の低下につながるという消費者メリットも出てくるでしょう。また、発送電分離により、送電網の中立性および独立性を維持することで、基本的に誰もがアクセスできるようになると、発電側の競争も促されます。小売りの自由化と発送電分離を併せて進めていくことで、すでに自由化されている産業向けなどでも価格を押し下げる効果を期待でき、産業全体としての競争力が高まることにもつながると考えます。
これによって、電力を主軸とする新しいタイプのサービスを提供できる可能性が生まれます。仮定の話ですが、例えば電話会社が電力事業に参入して、電話サービスと電力サービスとのセットで安価に提供する。あるいは、ガス会社と電力会社が共同し、ガスと電力の供給をセット提供するなど、色々な組み合わせによって消費者向けサービスの利便性が高まったり、料金を低下したりすることが期待されます。家庭部門でのメリットが生まれるだけでなく、産業部門における競争力の大幅な向上にもつながるでしょう。
──「消費」は、従来にない新たな取り組みですね。コージェネレーション(熱電併給)や自然エネルギーなどの分散型システムを活用するスマートコミュニティ(次世代型環境配慮地域)も推進されています。
佐藤: これまでの需給政策では、需要を所与として供給能力を高めるという目線が主軸でした。ところが最近は需要にも焦点をあて、いわゆるデマンドコントロールによって、うまくエネルギーのピークをシフトしたり、カットしたりして、分散させることを政策の重要な柱としています。例えば、ピーク時は電気料金を高めに設定し、夜間は安くするなどメリハリのある料金設定を提示することによって、消費者が自らピークをコントロールする。そうすることで、全体としてのピーク分散につながり、供給側もより安価なコストで電力を供給できる仕組みができるのです。コージェネや自然エネルギーなどの分散型システムの活用も重要と考え、それぞれ補助金やFIT(固定価格買い取り制度)などの導入促進策で政府も強力に支援していきます。
そして、これを支える産業が、スマートメーター(次世代電力量計)とともにスマートグリッド(次世代電力網)で欠かせない技術となるHEMS(住宅エネルギー管理システム)やMEMS(マンションエネルギー管理システム)、BEMS(ビルエネルギー管理システム)といったエネルギーマネジメントシステムです。電力だけでなく、コージェネなどから供給される熱の有効利用もマネジメントし、総合的なエネルギー利用効率を高めます。
さらに、これらを統括するスマートコミュニティを形成するような広がりも十分に期待できます。現在、全国4地域(横浜市、豊田市、けいはんな学研都市、北九州市)でスマートコミュニティの実証事業を展開していますが、その結果、2割もの電力のピークカットを実現しているケースもあります。コージェネによる総合エネルギー利用効率向上の効果も確認されているようです。