日経ビジネス
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THE NEXT X 変革の未来

新たな企業価値創造に向け、戦略的にX(トランスフォーメーション)に
取り組むための着眼点と方法論に焦点を当てDXの本質に迫る

<対談>早稲田大学ビジネススクール 入山章栄 氏 × グーグル・クラウド・ジャパン 平手智行 氏
Vol.01

日本企業の課題と求められる変革
DXへとつながる
データ経営の本質とは

<対談>
早稲田大学ビジネススクール 入山章栄 氏
×
グーグル・クラウド・ジャパン 平手智行 氏
デジタルトランスフォーメーション(DX)の要諦となるテーマは「データ経営」の実現だ。経営者はその重要性を理解しながらも実践フェーズまで到達していない日本企業は多い。その原因はどこにあるのか、またデータ活用から大きな成果を引き出すためにはどのようなアプローチが必要か。『両利きの経営』で知られる気鋭の経営学者である入山章栄氏とグーグル・クラウド・ジャパン 日本代表の平手智行氏がデータ経営の本質について語り合った。

デジタル化を目的にすると
データ経営は成功しない

グーグル・クラウド・ジャパン合同会社 日本代表 平手智行 氏
グーグル・クラウド・ジャパン合同会社
日本代表
平手智行

――今、データ経営が求められる理由、日本企業の課題はどこにあるとお考えでしょうか。

平手日本企業の経営者の方たちはデータ活用の必要性を実感しています。コロナ禍で場所にとらわれないデジタル化のメリットを体験したことで、ユーザーの利便性、効率性への要求が高まっているからです。IDGの調査データによれば、日本企業の57%がデータを活用したデジタル戦略を計画中、あるいは実行中です。しかし、対応済みと回答した企業は7%にすぎません。

早稲田大学 ビジネススクール 教授 経営学博士 入山章栄 氏
早稲田大学 ビジネススクール
教授 経営学博士
入山章栄

入山データ経営が実現できていない理由は大きく2つあります。一つはデジタルは手段や道具であり、目的ではないことを理解していないからです。目的がないままデジタル化を進めてもうまくいきません。もう一つは、日本企業はこれまでの成功体験があり、変化を苦手としてきたことです。しかし、コロナ禍に直面して意識が変わってきました。テレワークによってオフィスが不要になるなど、従来の常識が思い込みだったことに気づき、デジタル化の重要性が理解されるようになりました。

平手プロセスの可視化も大きなポイントです。流通小売業のお客様では、物理店舗とEコマースの比率の変化に伴い、需要予測が困難になったため、双方の在庫管理を連動させてリアルタイム化を進めるなど、物理店舗運営とバーチャルを連動させる企業も出てきました。リアルタイムで実店舗の状況を確認し、在庫があれば買いに行きたいというニーズに応えたりしています。

入山人間は本質的に面倒臭がり屋なので、楽なことを知ると元には戻れません。日常的に電子マネーを使っている人が現金取引を求められると苦痛を感じたりします。

平手ユーザーは無駄を許容しませんからね。今後はさらにシビアになってくると思います。

戦略・データ・システム
その中心に“人”を置く

――活用できるデータが少ない企業もあり、日本企業はデジタル化に乗り遅れていると指摘されています。

平手日本ではDXという言葉にとらわれすぎているのかもしれません。欧米ではDXという言葉は使わずに具体的なユースケースとして“モバイル・ファースト”や“クラウド・ファースト”が語られています。モバイルやクラウドというデジタル活用の形態ではなく、人を中心としたビジネスへの変化としてDXを捉えているのです。

入山明確なビジョンやミッションがあり、それを実現する手段としてDXを位置付けているということですね。

カルチャーアッドがイノベーションの鍵です
カルチャーアッドがイノベーションの鍵です

平手日本では自社の製品やサービスを中心にビジネス戦略、システム、データを回していこうとしていますが、それではDXは成功しません。人を中心に置いて考えていくことが重要です。例えば、CRM(顧客関係管理)は顧客の満足度を高めるためのシステムですが、顧客である人が中心にいなければ、自社のためのCRMになってしまっています。

入山同感です。しかし、日本企業がそれを理解するのは大変です。

平手成功事例に学ぶことが大切だと思います。すでに米国では9割の企業がデータ経営に取り組んでいて成功事例も数多くあります。今では他社の成功事例を分析して自社に合うものを取り入れるために検討するフェーズに入っています。

弊社では日本のお客様と一緒に事例を真剣に研究し、データ経営への道筋を探る活動を活発に行っています。

DXに必要な多様性は
ダイバーシティから

――固定観念にとらわれている日本企業はどこからデータ経営に入っていくべきでしょうか。

入山「どこから」という発想が出てくること自体がアウトです。初期の出来事がその後の出来事に大きな影響を与える“経路依存”に陥っています。どこからではなく、全体を変えていくしかないのです。

ビジョンを実現する手段としてDXを位置付けることが重要
ビジョンを実現する手段としてDXを位置付けることが重要

平手日本企業は長く続いた高度経済成長の中で、行動と判断が暗黙知として蓄積されてきました。それ自体は悪いことではありませんが、組織として成功体験を積んできた上司のほうが部下よりも経験値が高いという固定観念が根付いてしまったことが問題です。

今は多様化の時代です。特にデジタルの世界では上司であっても知らないことが多く、これまでのマネジメント手法が通用しづらくなっています。常に新たな専門性が求められ、多様な文化を取り込むカルチャーアッドが必要とされます。その第一歩がダイバーシティなのです。

入山一般的にダイバーシティというと女性や外国人を活用することのように思われていますが、デジタル化に対応して成長力を高めていくために重要であるということですね。

平手ダイバーシティによって新たな文化やスキルを取り込むカルチャーアッドから新しい価値創出やイノベーションへとつながっていきます。常に新しい専門性が求められる現代では日本企業においても重要な施策の一つになっていくのではないでしょうか。

グーグル ・クラウド・ジャパン合同会社 日本代表
平手智行(ひらて・ともゆき)

1961年生まれ。87年、日本IBMに入社。アジア太平洋地区経営企画、米IBM戦略部門を経て、2006年、日本IBM執行役員と米IBMバイスプレジデントに就任。国内では通信、メディア、流通、公益などの業種別事業やサービス事業を担当。11年末に退職し、米ベライゾンのエリアバイスプレジデント、ベライゾンジャパン社長に転身。15年7月、米デル バイスプレジデント兼デル代表取締役社長に就任。19年8月、デルとEMCジャパンの代表取締役会長に。同11月から現職。

早稲田大学ビジネススクール教授 経営学博士
入山章栄(いりやま・あきえ)

慶應義塾大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所で主に自動車メーカー・国内外政府機関への調査・コンサルティング業務に従事した後、2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院よりPh.D.を取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授。13年より早稲田大学大学院 早稲田大学ビジネススクール准教授。19年より現職。主な著書は『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(英治出版)、『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』(日経BP社)など。

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