提供:Google 協力:日経BP 総合研究所

THE NEXT X 変革の扉

テクノロジーによる社会の未来への貢献を目指すグーグル。
「AI の力で解き放とう、日本の可能性」というビジョンに基づく日本における取り組みを紹介する

<対談>東京大学 薬学部 薬品作用学教室 教授 ERATO 池谷脳AIプロジェクト 総括 池谷 裕二氏 × グーグル・クラウド・ジャパン合同会社 上級執行役員 カスタマーエンジニアリング担当 小池 裕幸氏
Vol.17

AIの振る舞いにはワケがある
行動を進化させる“気づき”に

<対談>
東京大学 池谷裕二 氏
×
グーグル・クラウド・ジャパン 小池裕幸 氏
AI(人工知能)を活用し、苦手とする作業を回避したり効率化することで、人間の行動は変化していく。実はAIがもたらす効果はそれだけではなく、人間が本来やるべきことへの気づきを与えてくれることもある。では、将来的にはどのような変化が起こるのか。社会とAIの関わりも含めた脳生理学を専門とし、「脳とAI」をテーマに研究を重ねてきた東京大学 薬学部教授の池谷裕二氏と、生成AIを含む法人向けAI/MLソリューションを提供するGoogle Cloudの小池裕幸氏の対談第2幕。

人間か、AIか
教師にするならどちらを選ぶ?

池谷 裕二 氏
東京大学
薬学部 薬品作用学教室 教授
ERATO 池谷脳AIプロジェクト 総括
池谷 裕二

――前回(第16回)はAIを活用していくことで人間自身が進化できるというお話をうかがいました。一方で、AIが社会に浸透していくことにリスクはないのでしょうか。

池谷私は特にリスクは感じません。AI活用という選択肢が出てくることで、今までの社会に隠れていたリスク、言い換えると人間に欠けていることや、明確に意識できていないことが浮き彫りになってくるのではないかと思っています。ある大学で「生成AIと人間、教師にするならどちらがよいか」とアンケートをとったところ、少なからぬ学生が生成AIを選んだそうです。その主な理由は「ばかげた質問もできるから」というものでした。教育者として、この結果には考えさせられました。私たちは授業の中でも、「ここまでの内容でわからないことは?」などと問いかけます。しかし学生たちは、初歩的な質問をして嫌な顔をされたり叱られたりすることを避けて、わかったふりをしてしまいがちです。結果として、内容をきちんと理解できないままです。それでは学生が成長しません。

 精神科のカウンセリングでも7割が「AIが相手のほうがいい」と答えたそうです。理由は「何でもさらけ出せるから」。こうした結果からも、人間は学ぶことがありそうです。

小池なるほど。人間に足りない部分をAIから教えられるというわけですね。普段はAIに学習させる側に立つケースに関わることが多いため、そういう見方は新鮮です。

池谷多くの人はAIと人間を区別して接しています。ロボットのように見ている場合には、相手がAIであることで、迷惑をかけることに罪悪感を持たずにすむ、ということもあると思います。

AIとのコラボレーションから
人間の“苦手”を再発見

小池 裕幸 氏
グーグル・クラウド・ジャパン合同会社
上級執行役員
カスタマーエンジニアリング担当
小池 裕幸

――人間とAIのコラボレーションからも人間の強みや弱みが見えてくるかもしれませんね。

池谷チームで対抗戦をするゲームのメンバーにAIを加えたら興味深い現象が現れました。AIも最初はうまくプレーできませんが、あっという間に学習して上達します。そして、どのメンバーよりもうまくなったAIがとった行動は、リーダー役ではなく、他のメンバーをひたすらサポートする、というものでした。これはAIが優しい心を持っているからではなく、そうしたほうが勝てる確率がアップするからです。人間同士の意思疎通ができていないところをAIがカバーしてくれていたのです。これも人間が苦手なところをAIが補ってくれるという事例です。

小池生成AIが台頭するとAI活用のハードルが下がっていきますから、人とAIがコラボレーションする場面はどんどん増えていくはずです。それに伴って、AIから多くの学びを得られるかもしれませんね。

――今後、AIはどのような領域に広がることが期待できそうでしょうか。

小池例えば生成AIを、単なる雑談相手として接するのではなく、仕事で使うアプリケーションに組み込めば、より効率よく仕事をこなせるようになります。むしろアプリケーションをつくることで本当の価値がわかってもらえると思います。

池谷医療などは浸透し始めている領域です。それ以外にもAIを活用できるはずなのに、まだ便利さを認識されていない領域はたくさんあります。例えば教育現場がそうです。GIGAスクール構想でICT活用の環境が整ってきていますが、教員の意識が追いついていません。農業など1次産業も、人手不足、食料自給率といった課題を乗り越えるには、もっとAIを活用していくべきだと思います。いずれも、AIを利用する側の意識改革が必要です。

AI倫理の尊重は大前提
利便性を理解した利用者層から拡大

――AI活用では、情報格差や個人情報の扱いなどの課題があります。

池谷過渡期としては情報格差やリテラシーの格差の問題は避けては通れないでしょう。利便性を優先するか、利便性を多少犠牲にしてもプライバシー保護を重視するかなど、一人ひとりの考え方が違うのですから、AI活用の姿勢やリテラシーに格差が生まれても仕方ありません。

 今、自宅でスマートスピーカーを使用していますが、日常会話が記録され分析されていることがわかっていながら、その設定をオフにはしていません。私が必要とするものをリコメンドしてくれるなど、そのほうが私にとって都合がいいからです。それを気持ち悪いと考える人もいるでしょう。そういう人は設定をオフにすればいいのです。利便性やリテラシー強化とのトレードオフです。ただ個人的には、みんながAIを積極的に使うように、社会が変わってほしいと思っています。

小池製品やサービスを提供する側として、どういう考え方にも対応できるように選択肢を用意しています。機会を均等に提供し、オプトインに承諾してくれた方にはそれに見合った利便性を提供したいと考えています。

 GoogleではAI利用における7つの基本方針(※)を掲げ、社会における有益性、公平性、安全性、説明責任、プライバシー・デザイン原則の適用、科学的卓越性の探求、技術提供を果たせるように、AIを人間のコントロール下に置くようにしています。AI倫理を正しく認識しながら最先端のテクノロジーを提供していきます。

(※)AI利用における7つの基本方針:https://japan.googleblog.com/2018/06/ai-principles.html

東京大学
薬学部 薬品作用学教室 教授
ERATO 池谷脳AIプロジェクト 総括
池谷裕二(いけがや・ゆうじ)氏

1989年東京大学理科一類入学。1998年に東京大学大学院薬学系研究科で博士号を取得し、コロンビア大学客員研究員を経て2014年より現職。脳の可塑性・脳の潜在的な能力の大きさを研究テーマとし、サイエンス、ネイチャー姉妹誌、米国科学アカデミー紀要ほか多くの学術誌で論文が掲載されている。文部科学大臣表彰若手科学者賞、日本学術振興会賞、日本学士院学術奨励賞などを受賞。『進化しすぎた脳』『海馬 脳は疲れない』など一般向けの著書多数。

グーグル・クラウド・ジャパン合同会社
上級執行役員
カスタマーエンジニアリング担当
小池裕幸(こいけ・ひろゆき)氏

1987年4月に日本アイ・ビー・エム(株)に入社。製造業担当のシステムズ・エンジニア、プロジェクト・マネージャーを経験。COO補佐を経て、ITインフラのセールス部門、数々の新規プロジェクトをマネージャー職として担当。2010年執行役員 ITS デリバリー担当、執行役員 IBMクラウド担当、執行役員テクニカル・リーダーシップに従事。2020年5月より、現職グーグル・クラウド・ジャパン合同会社 上級執行役員 技術部門担当の職に就く。

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