
――データ経営に取り組もうと考えたきっかけは何だったのでしょうか。
池照カインズは創業から40年の間に3回大きく変化してきました。幅広い商品を扱う日本型ホームセンター、プライベートブランドの開発、そして今回の「IT小売業」宣言です。今回の変革はテクノロジーを駆使する海外の小売業に対する危機感から始まりました。
うまく動き出した要因として大きかったのは、デジタル人材の採用と専門組織を立ち上げたことです。失敗を許容する文化があったことも幸いでした。
小池デジタル変革(DX)は成果が見通せないため、そういう文化は大事ですね。一方でヤマハ発動機のような製造業では「失敗は許されない」という風土があるのではないでしょうか。

三宅確かにそうです。ただ、今後は失敗から学んで新しい価値を生み出していく必要があります。その意識を持ってDX、そしてデータ経営を推進していきたいと思っています。当社がデータ経営への取り組みを始めたのは2016年8月です。全社横断のデジタル活用を推進するためにデジタル戦略グループを立ち上げました。その翌年には前任のフェローを中心に、経営層とデジタル活用について半年かけて議論し、ビジネスファーストでDX戦略を描くことを決めました。その第一歩が、10年先を見据えた予知型経営と戦略思考型経営に移行していくためのデータ統合です。
――データ経営を実践するうえで、実際にどのようにデータを活用するのか、例を教えてください。

池照私たちは成長するための経営戦略の観点からデータ経営に取り組みました。戦略とは経営の意志です。それがないと、どうデータ活用すべきなのかが見えてきません。当社のビジネスでは、価格や機能へのこだわりはもちろんありますが、それだけではなく、もうひと工夫必要というのが出発点です。特に私たちは顧客目線に立つためにデータを活用しています。
三宅当社もお客様とつながるためにデジタルを活用しています。もともとのビジネスモデルはディーラーを経由したB2B2Cでしたが、今はアプリでお客様とダイレクトにつながることができます。適切なタイミングで求められる情報を提供するとともに、お客様のペインポイント(想定顧客の悩みの種)を知り、新しい製品やサービスに役立てていこうと考えています。
――現場の人たちによるデータ活用を推進するにはどうしたらいいでしょうか。

池照大事なのは、戦略を平易な言葉で丁寧に伝えることです。2万人のカインズメンバー(従業員)が理解できるようにするためには、シンプルな内容であるべきです。誰もが簡単に伝えられるものでなければ戦略は動きません。チャート1枚にまとめるなど伝え方を工夫しています。
三宅教育やOJTによるサポートだけでなく、現場でデジタルを取り入れた事例を広く共有し、デジタル戦略部の伴走なしでもデータ活用できるようにデータ分析の民主化を進めています。それをいかに支援できるかが鍵になります。
小池データを活用すれば、いろいろな面白いチャレンジができるんだと現場の人たちが感じるような雰囲気も大事ですね。

――現場にはデジタル人材が必要になりますね。人材については、どのようにお考えでしょうか。
池照データ分析のプロをそろえるのではなく、「商売人」に道具を使うスキルを身につけさせることが基本です。それも、いきなり広くあまねくではなく、自ら前進していけそうな人にマンツーマンで丁寧に指導していきます。2〜3カ月たつと自分でプログラミングしたりデータを分析したりできるようになり、周囲にもいい影響を及ぼすようになります。データを見ることは「儲けのメカニズム」を知ること。それがわかると楽しくなってくるはずです。

三宅当社ではピラミッド型のレベル別の教育プログラムを提供しています。上位層にいる人がそれぞれの組織でデータ活用を引っ張れるよう、デジタル戦略部でOJTを受けた後で現場に戻ってもらうなど、組織間の人材交流を進めています。一方では採用活動も重視しています。そのために当社のDXへの取り組みを積極的に発信し、多くの人に興味を持ってもらうことを戦略的に進めています。
小池データ経営の実践を目指す企業は増えていますが、目的が明確になっていない企業も少なくありません。経営の意志と決定、時間軸も重要です。今日お話をうかがった2社はそのあたりを理解しながら上手にデータ経営を実践しています。キーワードはデータの民主化です。さらに大きな成果につながることを期待しています。

写真左:ヤマハ発動機株式会社
IT本部 フェロー
三宅貴浩(みやけ・たかひろ)氏
写真中央:株式会社カインズ
執行役員 最高イノベーション責任者
兼 最高デジタル責任者 兼 デジタル戦略本部長
池照直樹(いけてる・なおき)氏
写真右:グーグル・クラウド・ジャパン合同会社
上級執行役員 カスタマーエンジニアリング担当
小池裕幸(こいけ・ひろゆき)氏
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