
――企業のAI活用について、今、どのような状況にあるとみていますか。
三上2025年はAIエージェント元年と言われる年でした。これまで個別業務のツールだったAIですが、いまやAIエージェントが複雑なビジネスプロセスをこなします。ただ、まだ企業の業務プロセスには、それほど組み込まれてはいません。2026年は、リアルにエージェントが動くようになります。AIがビジネスプロセスに組み込まれ、これまで以上に人に寄り添い一緒に働く、いわば「協調の時代」に入ったと言っていいでしょう。
――企業の経営者やリーダーはどのようにAIと向き合っていくべきでしょうか。また、Google Cloudはどのように貢献していくのでしょうか。
三上少しずつでもAI活用を始めることが大切です。この数カ月、日本の代表的な企業の経営トップの方々にお会いして元気をいただきました。皆さんビジネスプロセスをAIレディに変えて、それを世界に広めていくという意欲にあふれていたからです。今やらなければ、アジアを含め諸外国に置いていかれるという強い危機感を抱いておられ、すぐにでもAIをビジネスに取り入れて、新しい価値創造に挑もうという意識をもたれています。
私たちGoogle Cloudは、AIのリーディング企業として最先端の技術や知見をビジネスの現場に還元し、日本企業の挑戦と発展を支えたいという強い想いを共有しています。
そのために全社で共通の志やパーパスを議論し、「AIの力でともに創ろう、ワクワクする日本の未来を。」というビジョンを掲げました。日本の強さと最先端技術の架け橋となり、お客様やパートナー様とともに希望に満ちた未来を創り上げられるよう貢献していくことをお約束しています。

――企業のAI活用を促すために、Google Cloudとしてはどのような取り組み方を考えていますか。
三上各業界を代表するお客様と進めている新たな取り組みにおけるベストプラクティスを広く発信し続けることで、他のお客様にとってもよい刺激となり、次へと広がっていくはずです。具体的な事例がないとワクワク感が伝わりません。AIはすでに社会インフラの近い領域での採用が広がっています。例えば、三菱UFJフィナンシャル・グループ様では、新しいミッションクリティカルなデジタル基盤で採用いただいていますし、札幌市様では全庁的なコラボレーション基盤として導入されました。今までの事例と異なる点は、これら先行する組織が「AIを信頼し、組織全体で活用する」ことを決断している点です。
こうした事例を積み上げていくために取り組みたいことが3つあります。まず、お客様ごとに真摯に向き合っていくこと。次に、より多くのお客様にソリューションを提供していくためのパートナーエコシステムの拡大、そしてソリューション開発を担う開発者のスキルアップにつながるコミュニティーの育成です。パートナーエコシステムについては、2025年にはNTTデータ様とKDDI様との戦略的パートナーシップに加え、NEC様、富士通様、日立製作所様、SCSK様をはじめとする日本の大手システムインテグレーターとの連携を大幅に強化し、土台が整いました。今後もパートナー様との協業をより深く強固にしていきます。
――Google Cloudの優位性はどこにあるとお考えですか。
三上Google Cloudの強みはプロセッサーからAIモデル、アプリケーションまで垂直統合で全てを提供できる点と、同時にオープン性を確保している点です。Google以外のAIモデルも大抵は利用できます。ベンダーロックインを防ぐとともに、用途ごとの適性を考えてAIモデルを選んで利用できます。
もう一つ、お客様が重視されるのが、データの主権を確保するために、データを自国内あるいは同盟国内などに置くソブリンクラウドの考え方です。「Google Distributed Cloud」は指定の場所にGoogle Cloudを持っていくソブリンクラウドを実現します。パートナー様を通して提供していくことでこの領域での貢献を加速していきます。
――2026年の注目の技術、サービスは何でしょうか。
三上まず最新モデルの「Gemini 3」を搭載した 「Gemini Enterprise」です。テキストだけでなく画像、音声、動画を含むあらゆる情報を処理する高度なマルチモーダル能力と、精度の高い推論能力を備えています。Google Workspaceはもちろん、Microsoft SharePoint、Salesforce、ServiceNowなど企業内に散在する多様な情報源を横断的、かつ深く理解し、構造化データ、非構造化データを経営資源として活用できます。
さらに、「Agent2Agentプロトコル(A2A)」や「Agent Payments Protocol(AP2)」によりAIエージェントが連携し、企業内でサイロ化されたデータをつなげるようになります。過去のやり取りや業務フローを学習することで、AIはより人間のように思考し、意思決定を含めた複雑なタスクを部門を越えてこなせるわけです。そこに人の手を加えてよりよいものにすることで、ビジネスプロセスに効果的に生かせるようになります。
こうしたところでもパートナー様の力が重要になります。様々なデータを取り込みやすくしたり、推論の結果をより扱いやすい形にしたりするソリューションが必要になるからです。そうしたAIエージェントのチューニングや、ソリューション開発をパートナー企業が担います。パートナー様のエンジニアにGoogleのAIを使ってもらい、独自のサービスをつくってもらうことが重要です。トレーニングやコミュニティー活動を通して支援していきます。

グーグル・クラウド・ジャパン合同会社
日本代表
三上 智子(みかみ・ともこ)氏
2025年10月1日付けでグーグル・クラウド・ジャパンの日本代表に就任。以前は日本マイクロソフトに20年間在籍し、執行役員常務として法人向け生成AI事業などを牽引。インディアナ大学でMBAを取得し、地方銀行の社外取締役も歴任するなど、経営・DX推進の豊富な経験を持つ。現在はGoogle Cloudのビジネスを統括している。
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