
――最初にウーブン・バイ・トヨタの成り立ちや背景について教えてください。
ヤントヨタは自動車会社からモビリティカンパニーに変革し、モビリティを単なる移動手段を超えた、人々の生活を支える存在にしようとしています。ウーブン・バイ・トヨタはそのために設立された組織で、「モビリティ変革のドライバー」になることをミッションとしています。
これからの自動車メーカーは、車両を開発・製造し、販売するだけでなく移動体験を提供することが求められています。自動車からモビリティへという100年に一度の大きな変革です。2018年、豊田章男トヨタ自動車社長(当時)は、そういった移動体験と新たな価値を提供する「モビリティカンパニーへの変革」を宣言しました。
私は投資銀行でソフトウェア開発に携わった後、2019年にウーブン・バイ・トヨタに入社しました。自動車会社の変革に向けた大きなエネルギーを感じてワクワクしたからです。ただ、変革は簡単ではありません。ウーブン・バイ・トヨタは巨大な船であるトヨタ本体から適度な距離を保ち、トヨタにイノベーションをもたらす小回りの効くタグボートとして、失敗を恐れず試行錯誤を重ねています。
――具体的には、どのような取り組みがあるのでしょうか。
ヤンモビリティの未来を考えた場合の問題解決に向けて、必要な機能や仕組みの開発に取り組んでいます。最初はモビリティとは何かを探求するところからでした。現在は、(1)ソフトウェアづくりプラットフォームArene、(2)自動運転・先進運転支援システム(AD/ADAS)、(3)ウーブン・シティ、そして(4)AIとクラウドのためのプラットフォームの4つの領域を手がけています。
例えばソフトウェアづくりプラットフォームのAreneについては、安全・安心で高品質なソフトウェアを継続的に開発できる基盤開発に取り組んでいます。トヨタのグローバル車種である新型RAV4の開発にAreneが採用され、ソフトウェア定義車両(Software Defined Vehicle:SDV)に向けた大きな一歩を踏み出しました。

――AIとクラウドという分野ではどのような取り組みを行っているのでしょうか。
ヤンモビリティには人を運ぶだけでなく、物流などいろいろな役割があり、そこには大きな可能性があります。イノベーションを生み出すには、多様なプレーヤーを集めてエコシステムをつくっていく必要があります。
そのために、AIとクラウドを駆使して、開発やシミュレーションに取り組める環境を整えようとしています。例えば、新型RAV4の開発においては、クラウド上で共同作業をできるようにし、デジタル上の開発「現場」を生み出し、開発効率の向上に貢献しました。
――イノベーションを促すにはどんなことが課題になるのでしょうか。
ヤンプラットフォームの啓蒙と教育です。プラットフォームをつくっても、それを使ってもらわなければ意味がありません。中には使う準備ができていない人もいるかもしれない。だからプラットフォームづくりは啓蒙・教育活動とセットで考える必要があります。
――パートナーとしてGoogle Cloudを選んだ理由をお聞かせください。
ヤンGoogle Cloudを選んだ最大の理由は、カスタマーフォーカスの姿勢を持っていたことです。私たちは様々なクラウド会社とお付き合いしていますが、Google Cloudのチームは単に製品・サービスを売るのではなく、私たちのビジョンや課題を真剣に理解しようと努めてくれました。また、拡張性や柔軟性が高く私たちが開発しているプラットフォームとの相性がいいことも重要なポイントでした。技術力だけでなく、パートナーシップの精神を持って私たちに寄り添ってくれる点が、他社にはない大きな魅力だと感じています。
浅井日本市場においてGoogle Cloudは後発です。他社が大きなシェアを持つ中で、トヨタのようにすでにいろいろなパートナーシップを持っている会社に採用してもらうのは簡単ではありません。PoC(実証実験)を重ねて、現場に寄り添いながら一緒に課題解決を進めていきます。今回のケースはシミュレーション環境の最適化や技術開発支援で、効率性とコストを両立させることができたと思います。

――今後のパートナーシップについてどのようなことを期待していますか。
ヤン大切なのは単なるベンダーと顧客という関係ではなく、互いにフィードバックし合いながら、ともに成長していくパートナーシップを続けることです。技術を一緒に磨き、課題を一緒に乗り越えていくことにより、未来のモビリティ社会により貢献できると信じています。
浅井ウーブン・バイ・トヨタとともにモビリティの未来に向けてチャレンジし続け、テクノロジーの力で人々の生活をより安全に、快適に、楽しくする。それが私たちの共通目標だと思っています。
――この活動を続け、拡大していくには、人材育成が不可欠です。
ヤン私たちが求めるのは「言われたことをこなすだけ」の人ではありません。自ら考え、行動し、失敗から学び、成長していける人材です。テクノロジー分野では職人のように何年もかけてスキルを磨く人たちが大きな力になります。失敗を恐れず、挑戦できる文化をつくることはイノベーションを生み出すために不可欠です。大切なのは、小さな失敗を早く経験することです。そういう環境を提供して人材を育成していきます。
浅井私たちGoogle Cloudも、常に進化を目指す中で、「賢く失敗する」という考え方を大切にしてきました。この、挑戦から学ぶ姿勢が、貴社が目指される変革の一歩一歩を、ともに考え、サポートさせていただくうえでの共通点となれば幸いです。

ウーブン・バイ・トヨタ株式会社
Vice President and Head of Cloud & AI
ジャック・ヤン 氏
グーグル・クラウド・ジャパン合同会社
執行役員 自動車産業事業本部長
浅井 隆志(あさい・たかし)氏
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