
――2024年はどのような1年でしたか。
平手生成AIは、「試す」から汎用業務で「使う」フェーズへと移り、さらに昨年の後半には、「企業がコア業務に組み込んで、責任をもって使う」段階へと一気に進化しました。弊社は、お客様とご一緒に生成AIのユースケースを構築し、事例集を作成したり、ピッチコンテストのイノベーションアワードを開催するなど生成AI活用の加速を実施しました。生成AIの業務利用は、国内でもまさに本格化しています。
――「試す」から「使う」フェーズに急速に移り変わった要因についてはどのようにお考えでしょうか。
平手4つのエリアでの生成AIの進化が強く影響しています。一つはマルチモーダルです。テキストのほか、音声や画像、動画など多様な非構造化データを扱え、より詳細なデータ分析が可能になりました。加えて、自然言語を使えるため、AIの専門知識やスキルがなくても容易に生成AIを活用できるようになりました。まさに現場におけるAIの民主化です。
2つ目はロングコンテキスト対応です。2時間ほどの動画や、PDFなら1500ページ、会話なら20時間を超える情報が一度に取り込めるので、情報の量と種類が飛躍的に拡大し、回答の精度が著しく向上しました。人間が多種多様な情報をもとに判断する動作と同じです。今後さらに大量のデータの読み込みを可能にする発表もしています。
3つ目はハルシネーション対策です。生成AIが間違った回答をしてしまうハルシネーションが不安視されていましたが、企業や組織固有のデータをRAG(検索拡張生成)やグラウンディングにより生成AIに組み合わせることで、再現性のある、企業が業務として責任ある答えが出せるようになりました。
4つ目は情報セキュリティーです。検知や対策において、生成AIの活用で企業のサイバー防御力が大きく向上しています。今後は、生成AI自体に対するデータポイズニングなどの外部攻撃も増加しており、企業としての対応が急がれる問題となっています。

――安心して生成AIが活用できるようになった今、どのような領域や用途で活用していけばいいのでしょうか。
平手一つは顧客体験の高度化です。例えばEC(電子商取引)サイトでの商品検索で、生成AIを使ってあいまい検索を補助することで、ヒット率を高められます。顧客がイメージにあった商品を見つけやすくなり、50%以上とも言われている検索離脱率を大幅に下げることができます。膨大な種類の部品を扱う商社や流通業のお客様において、実際にそうした仕組みを構築されています。社内の生産性向上も有力な領域です。年間約40万件もの問い合わせに対応しているある金融業のお客様は、自社内のデータを参照させるRAGを使うことで、問い合わせ対応時に参照する情報の精度を高めています。マルチモーダルも大きなポイントです。大手テレビ局のお客様ではアーカイブされた動画を検索しやすくするため、タグ付けを生成AIで自動化することで、数十分かかっていた作業を数分で完了でき、また多様なタグを付けられるようになったため、あらゆる切り口からの検索が可能になりました。このように、個人ベースでの生産性向上という域を超え、企業の基幹業務など、より大きな領域への展開が進み始めています。
重要なのは、いかに迅速に生成AIを活用したビジネスモデルを実装できるかです。AIを様々な用途で使う場合、1種類のAIモデルではカバーできません。それぞれのAIモデルには得意な領域があって、利用する際にはその特徴を見極めて使い分ける必要があります。そして今後は、AIモデルを使い分けながらアプリケーションをつくり、それぞれを業務に合わせて組み合わせ、連携させたAIエージェントを利用していくことになります。そのためにエンドツーエンドのプラットフォームであるVertex AIを提供しています。Vertex AIは、対象業務に最適なAIモデルを選べる「モデルガーデン」、モデルのチューニングなどを行うための「モデルビルダー」、モデルをAIエージェントとして完成させる「エージェントビルダー」の3つのレイヤーで構成されます。これらをGoogle Cloudのプラットフォーム上で連結して利用することにより、セキュア(安心・安全)な環境で業務をつないでビジネスモデルを実装していくことができます。
――進化した生成AIは日本企業にどのようなメリットをもたらすのでしょうか。
平手これまで活用が現場にとどまっていた、音声や画像など、様々な種類の非構造化データを、企業全体のデータとして活用できることで差別化が可能になります。
業務の効率化と顧客体験の高度化の視点でユースケースを具体的に描けば、その企業や組織固有のデータと組み合わせることにより、企業が責任を持って使える新たな取り組みの実現可能性は、生成AIの活用で大きく向上します。
これらの変革にスピーディーに取り組めるかが企業の競争力を左右します。生成AIをコア業務へ組み込むことで、マネタイズが具体化し、売り上げと利益への貢献が進みます。セキュリティー環境の強化にも、生成AIの活用が効果的であることが確認されています。
人口減少という課題を抱える日本にとって業務効率化は必須と言われており、新しい製品やサービスの開発は、国内にとどまらず、多言語機能で世界市場に向けて日本から発信していくことにも貢献できると考えています。

グーグル・クラウド・ジャパン合同会社
日本代表
平手智行(ひらて・ともゆき)氏
1961年生まれ。1987年、日本IBMに入社。2006年、日本IBM執行役員と米IBMバイスプレジデントに就任。2011年末に退職し、米ベライゾンのエリアバイスプレジデント、ベライゾンジャパン社長に転身。2015年7月、米デル バイスプレジデント兼デル代表取締役社長に就任。2019年8月、デルとEMCジャパンの代表取締役会長に。同11月から現職。
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