提供:Google 協力:日経BP 総合研究所

THE NEXT X 変革の扉

テクノロジーによる社会の未来への貢献を目指すグーグル。
「AI の力で解き放とう、日本の可能性」というビジョンに基づく日本における取り組みを紹介する

<対談>東京大学 薬学部 薬品作用学教室 教授 ERATO 池谷脳AIプロジェクト 総括 池谷 裕二氏 × グーグル・クラウド・ジャパン合同会社 上級執行役員 カスタマーエンジニアリング担当 小池 裕幸氏
Vol.16

“苦手”はAIに任せる時代
使いこなすセンスを磨こう

<対談>
東京大学 池谷 裕二氏
×
グーグル・クラウド・ジャパン 小池 裕幸 氏
自然言語を使って対話型で様々な処理を実行する生成AI(人工知能)の登場により、AIはぐっと身近になり、今後も私たちとAIの“距離”はさらに縮まっていくだろう。そんな中で、人間はどのようにAIと向き合い、メリットを享受していくべきか。脳生理学を専門領域としながら「脳とAI」をテーマに研究を重ねてきた東京大学 薬学部教授の池谷裕二氏と、AI活用のパイオニアとして生成AIを含む法人向けAI/MLソリューションを提供するGoogle Cloudの小池裕幸氏が話し合った。

AIを活用することで
能力の限界を突破できる

池谷 裕二 氏
東京大学
薬学部 薬品作用学教室 教授
ERATO 池谷脳AIプロジェクト 総括
池谷 裕二

――池谷さんがリードされている「AIと人間を融合するプロジェクト」とはどのようなプロジェクトでしょうか。

池谷人間は自分が思っている以上の能力を持っています。それをAIで引き出そうというのが「脳AI融合プロジェクト」です。例えば、英語とスペイン語を聞かせて脳の反応をAIで解析すると、明確な違いが見られます。2つの言語の内容を理解できているかどうかは別として、脳は聞き分けているわけです。

 日本人には聞き分けにくい英語の「R」と「L」の発音も、実は脳では聞き分けられています。これをAI解析して情報として身体にフィードバックできれば、学習効果を得られます。このようにAIの助けを借りることで、限界を突破したり、技能習得をスピードアップできると考えています。

――AIと脳が融合して人間の能力を拡張できると、どんなことが起こるのでしょうか。

池谷AIに代行してもらったり、私たちの能力が高まったりすることで、様々な作業の効率が上がります。とはいえ、人間の本質は変わりません。効率が上がって余裕が生まれれば、おそらく、それを前提としてもっと別の仕事をするようになるでしょう。

小池AIを活用することによって教育に必要な時間が短くなるわけですから、できることは増えますね。その分、もっと高い質や価値の提供につながる高度な仕事にシフトしていくのではないでしょうか。AIの使い方も進化していくはずです。

池谷Google検索をはじめとするネット検索が社会に浸透したことで人間の検索能力は向上しました。今、人間は人類史上最強の検索能力を持っています。これと同様に、AIの進化・浸透によっても新たな能力を得られるでしょうね。

苦手なことを他に任せて
人間は進化してきた

小池 裕幸 氏
グーグル・クラウド・ジャパン合同会社
上級執行役員
カスタマーエンジニアリング担当
小池 裕幸

――検索能力は上がったかもしれませんが、記憶力は低下している気もします。

池谷確かに記憶力は低下しているかもしれません。でもそれは、決して悪いことではありません。人間はもともと暗記することが苦手です。だから文字を発明したのです。記憶する代わりに書きとめるようになりました。

 こうした苦手なところを他に任せることで人間は進化してきました。それに伴って脳の使い方は変わってきました。ですから、今の人間の脳は狩猟の時代とは違いますし、江戸時代とも違っています。

――AIが発達していったとき、人間にはどのような能力が求められるのでしょうか。

池谷最適なものを選ぶ「センス」です。私は学生に、英語の論文を書くときには「生成AI」を使うよう指導しています。苦手な英語で苦しむ必要はないからです。ただ、生成AIが候補を出してきても選ぶのは人間ですから、できあがる英文にはセンスが表れます。センスの差はAIでは埋められません。

小池確かに生成AIはいくつでもサンプルを提示してくれますが、必ずしも正しい情報を提供してくれるとは限りません。そのAIとうまくコラボレーションしていくには、利用者側もそれなりの知識がなくてはなりませんし、サンプルの中から情報を選択するセンスが問われますね。

 製造業でもAIの活用が進んでいますが、匠の持つセンスをどう実現するかが難しいところです。ただ、ある程度のことができることで熟練者になるまでの期間を短縮することはできます。AIと訓練の合わせ技がセンスを磨く近道といえるかもしれません。

人間が使いやすいように
AIは進化し続けている

東京大学 池谷 裕二氏 × グーグル・クラウド・ジャパン 小池 裕幸 氏

――医学の領域でもAIの活用は進んでいるのでしょうか。

池谷まだ発展途上ですが、特定の分野ではAI活用で大きな成果が得られています。象徴的だったのが、新型コロナウイルス感染症の新薬の開発です。膨大な数の化合物のデータの中からわずか90分で効果のある成分の候補を見つけ出すことができたといわれています。

 創薬は、膨大なライブラリーから候補を見つけ出して、一つひとつ実験して検証するのが従来の手法でした。それが、2022年あたりからコンピューターシミュレーションでその期間を短縮できるようになりました。AIが学習することで効果のある薬を見つけやすくなっています。

小池Googleでは、DeepMindが医学界と共同で創薬のためのAI「AlphaFold」を開発したり、医療用の大規模言語モデルの「Med-PaLM 2」を提供したりしています。これは医師の強みである豊富な知識に近づくために、膨大な論文をひたすら記憶させ、根拠とともに回答することで医学界に貢献できるものにしていこうというチャレンジです。

池谷人間の役に立つためのAIを追求しているわけですね。

小池生成AIの中身は日々進化しています。それを実現しているのが、人間からのフィードバックによってAIを賢くするRLHF(Reinforcement Learning from Human Feedback)という最先端の学習手法です。人間にフィットした回答ができるように微調整しながら進化させています。

東京大学
薬学部 薬品作用学教室 教授
ERATO 池谷脳AIプロジェクト 総括
池谷裕二(いけがや・ゆうじ)氏

1989年東京大学理科一類入学。1998年に東京大学大学院薬学系研究科で博士号を取得し、コロンビア大学客員研究員を経て2014年より現職。脳の可塑性・脳の潜在的な能力の大きさを研究テーマとし、サイエンス、ネイチャー姉妹誌、米国科学アカデミー紀要ほか多くの学術誌で論文が掲載されている。文部科学大臣表彰若手科学者賞、日本学術振興会賞、日本学士院学術奨励賞などを受賞。『進化しすぎた脳』『海馬 脳は疲れない』など一般向けの著書多数。

グーグル・クラウド・ジャパン合同会社
上級執行役員
カスタマーエンジニアリング担当
小池裕幸(こいけ・ひろゆき)氏

1987年4月に日本アイ・ビー・エム(株)に入社。製造業担当のシステムズ・エンジニア、プロジェクト・マネージャーを経験。COO補佐を経て、ITインフラのセールス部門、数々の新規プロジェクトをマネージャー職として担当。2010年執行役員 ITS デリバリー担当、執行役員 IBMクラウド担当、執行役員テクニカル・リーダーシップに従事。2020年5月より、現職グーグル・クラウド・ジャパン合同会社 上級執行役員 技術部門担当の職に就く。

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