日経ビジネス
提供:Google Cloud
 協力:日経BP総合研究所 イノベーションICTラボ

THE NEXT X 変革の未来

新たな企業価値創造に向け、戦略的にX(トランスフォーメーション)に
取り組むための着眼点と方法論に焦点を当てDXの本質に迫る

<対談>早稲田大学 ビジネススクール 教授 経営学博士 入山章栄 氏 × グーグル・クラウド・ジャパン合同会社 日本代表 平手智行 氏
Vol.04

失敗の共有がイノベーションを生む
データ経営を成功に導く
企業文化とは

<対談>
早稲田大学ビジネススクール 入山章栄 氏
×
グーグル・クラウド・ジャパン 平手智行 氏
「データ経営」を実現するために、企業はどのようなスタンスで企業文化を醸成していくべきか。多くの失敗を経験しながらも常にイノベーティブな企業であり続けるGoogleの取り組みをベースに、気鋭の経営学者である入山章栄氏とグーグル・クラウド・ジャパンの日本代表である平手智行氏が語り合った。

ユーザー中心の視点から
新たな価値が生まれる

グーグル・クラウド・ジャパン合同会社 日本代表 平手智行 氏
グーグル・クラウド・ジャパン合同会社
日本代表
平手智行

――データ経営を成功させるために、ITにはどのような役割が求められるのでしょうか。

平手今求められている変革とこれまでのITでは価値観が違います。例えば、銀行における従来型の勘定系システムはSoR(System of Record)が一般的です。ただ、マイクロサービス化できればSoE(System of Engagement)にもなります。勘定系の日々のトランザクションからリスクを分析して細分化し、それに見合った商品を推奨することで競争力を生み出すことができるのです。そこではいかにユーザーに寄り添ったデータがつくれるかが鍵になります。

早稲田大学 ビジネススクール 教授 経営学博士 入山章栄 氏
早稲田大学 ビジネススクール
教授 経営学博士
入山章栄

入山銀行の持つ金融機能を事業会社に提供するエンベデッドファイナンスが注目されていますが、効果を上げるにはつなぎ役のイネーブラーがポイントになります。Google Cloudであれば金融機関と事業会社の間をつなぐことができそうですね。

平手例えば家を建てる場合に工務店と打ち合わせをしますよね。その情報が連携されれば、金融機関はデータを分析し、ユーザーのニーズや資産力に合わせて、デザイナーやメーカーなどもプロアクティブに提案できるようになり、よりパーソナライズされた金融サービスを生み出せる可能性があります。こういう発想が必要ではないでしょうか。

全社員が貫き続けてきた
Googleの9つの原則

――どうすればユーザーネーティブな発想を根付かせていけるのでしょうか。

平手Google Cloudに入社して感動したことの一つが、全社員が「9つの原則」(下図を参照)に全力で取り組んでいることです。

平手智行 氏
ユーザーに寄り添ったデータがつくれるかが鍵になります

入山全てがイノベーションに向いていますね。特に「小さくスタートし賢く失敗せよ」は「知の探索」にも共通した考え方です。新しい試みは大抵は失敗しますから。最大のポイントはブレずにこれらの原則が貫かれていることでしょう。

平手Googleではそれを全社員が信じて取り組んできたことの積み重ねが文化をつくり上げてきました。創業当初は同じ価値観を醸成することを優先したカルチャーフィットという考え方でしたが、今ではさらに進んで新しい文化を取り込むカルチャーアッドになっています。これはさらなる変革には、多様性と専門スキルを取り込んで、自律的・能動的にチャレンジするものです。

イノベーションの9つの原則

失敗から学ぶことで
イノベーションを

――原則をブレずに貫くには何が必要でしょうか。

入山章栄 氏
「賢く失敗せよ」は「知の探索」にも共通した考え方です

平手心理的安全性です。これが全ての原則を支えています。ミスをしてもチームの中で非難されないかどうかということなのですが、正しく理解する必要があります。「心理的安全性」と「成功に対する責任」は同一線上に相対して存在する択一な関係ではなく、独立した2本の線上で個々に認識されるべき、重要な項目だということです。Googleではこの2本の線に2軸を組み合わせて4象限に分けています。

成功への責任が低く、心理的安全性も低いのは「無関心」で組織として成り立ちません。

そして成功への責任が高く、失敗を許容しないのは「不安、恐怖」です。これでは誰も新しいことにチャレンジしなくなります。Googleが推進しているのは成功への責任が高く、失敗を許容する「ラーニング」の象限です。やるだけやって失敗した場合は、失敗を責めるのではなく、そこから学んでいくというものです。

入山失敗するまでにどこまで努力したかが問われ、失敗した後はなぜ失敗したのかを徹底的に考え、そこから学んでいくわけですね。

平手その際に守るべきポイントは、失敗した相手を正面から論破しないことです。横に立って同じ方向を向いて話を聞くことで心理的安全性が高まります。それがイノベーションへの挑戦につながります。

入山イノベーションは学習の賜物たまものです。失敗は大事ですが、重要なのは自分の見ていた世界との違いを知って学ぶことです。そのために一歩外に出ることができるかが重要な鍵となります。失敗すると落ち込みます。それを克服するためにもエモーショナル・インテリジェンスが大事ですね。

平手様々なサービスを生み出してきたGoogleでも、その裏で失敗したプロジェクトは少なくありません。その経験を個人ではなく、組織全体で共有することによって次のイノベーションを生み出してきたのです。経営学者ピーター・ドラッカー氏の名言に「イノベーションは一部の天才のみが実現できるものではなく、誰でも学び実行することができる、企業の全部門が責任を分担すべき重要な取り組みだ」という言葉がありますが、まさに企業文化の変革に会社全体で取り組み、イノベーションの促進に取り組んでいくことが重要だと思います。

グーグル ・クラウド・ジャパン合同会社 日本代表
平手智行(ひらて・ともゆき)

1961年生まれ。87年、日本IBMに入社。アジア太平洋地区経営企画、米IBM戦略部門を経て、2006年、日本IBM執行役員と米IBMバイスプレジデントに就任。国内では通信、メディア、流通、公益などの業種別事業やサービス事業を担当。11年末に退職し、米ベライゾンのエリアバイスプレジデント、ベライゾンジャパン社長に転身。15年7月、米デル バイスプレジデント兼デル代表取締役社長に就任。19年8月、デルとEMCジャパンの代表取締役会長に。同11月から現職。

早稲田大学ビジネススクール教授 経営学博士
入山章栄(いりやま・あきえ)

慶應義塾大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所で主に自動車メーカー・国内外政府機関への調査・コンサルティング業務に従事した後、2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院よりPh.D.を取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授。13年より早稲田大学大学院 早稲田大学ビジネススクール准教授。19年より現職。主な著書は『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(英治出版)、『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』(日経BP社)など。

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