インタビュー

[特別対談]
エネルギーの未来と新たな成長
GXを強みに変え、
世界のプラットフォーマーとなって成長を

2040年の電力需要は増える見込み、省エネが引き続き重要な政策に

柏木孝夫氏

柏木: 「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、科学的な知見の下、産業革命前からの気温上昇幅を1.5℃以内に抑えなくては、人類への深刻な被害や影響が出ると発表しています。これを基に、世界の先進国は2050年カーボンニュートラル達成を目指すことを決めました。今後、この流れが逆転することはないでしょう。

村瀬: 最近は、気候変動対策への要請が経済界の中で強まっていると感じます。特に、デジタルトランスフォーメーション(DX)やグリーントランスフォーメーション(GX)の進展による電力需要増加の可能性も指摘される中、国際的に遜色ない価格水準で安定的に脱炭素電源を確保できるかが、日本の国際競争力に直結する状況にあります。このため、脱炭素電源の確保は、エネルギー安定供給、経済成長、脱炭素の同時実現に向けて急務だと感じます。

柏木: カーボンニュートラルの達成には、化石由来のエネルギーから、温室効果ガスを排出しないクリーンエネルギー中心の経済・社会システムへと転換する「グリーントランスフォーメーション(GX)」を推進することが必要です。日本は2023年に「GX推進法」を制定し、様々な取り組みを進めつつあります。

 GXに必要な要素は省エネ、電化、水素、カーボンプライシングのような経済的措置など、いくつかあります。その中で、コージェネレーション(熱電併給)システムはエネルギーのカスケード利用が可能で省エネ性の高い機器です。GX時代に非常に有望なテクノロジーだと考えています。

村瀬: 第6次エネルギー基本計画は、徹底した省エネ等により、2030年度の電力需要は減少するという前提で設計されましたが、先ほど申し上げた通り、現在、AI(人工知能)の普及などのDXやGXが進む中で、省エネ効果を見込んでもなお電力需要が増加する可能性が高いとされています。一部には、「爆増する」という予想もあります。このため、電力需要は一定程度、増えることも想定した上で議論をしなくてはなりません。

 そうなると、やはり省エネが重要なキーワードになります。増える分をできるだけ抑えるという意味において、省エネは大きな政策の方向性として存在し続けます。例えば、データセンターを導入する場合にも、できるだけ省エネ型のものを選ぼうという方向になるでしょう。

 そうした中、社会でできるだけエネルギーを賢く、効率的に利用する方法を追求しようという流れになりますが、コージェネは極めて重要なツールの一つです。

 今後、カーボンニュートラルの達成に向けて再生可能エネルギーを最大限導入していく際には、調整力も求められます。コージェネは、出力を変動させて稼働することも可能であるため、調整力としても非常に大きな役割を果たし得ます。また、地震や台風など激甚災害が頻発する日本において、エネルギーシステムのレジリエンスを高めるためにも、ブラックアウトスタート機能を持つコージェネは非常に重要な存在です。

 もう1つ、脱炭素化を実現する上で重要となるのが水素です。現在、出力を抑えざるを得ない再エネ由来の電気も、水素にすれば、出力抑制を行うことなく活用することができます。2024年の国会では「水素社会推進法」が可決成立しました。早い段階で水素社会が実現するよう、取り組みを加速していきます。

 
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プロフィール
村瀬佳史(むらせ よしふみ)氏

村瀬 佳史(むらせ よしふみ)
資源エネルギー庁長官
愛媛県出身。1990年東京大学経済学部卒。同年通商産業省(現経済産業省)に入省。1998年ハーバード大学ケネディ行政大学院に留学。通商政策局企画官(アジア大洋州広域開発担当)、商務情報政策局情報経済課長、大臣秘書官事務取扱、経済産業政策局調査課長、資源エネルギー庁電力・ガス事業部政策課長、同庁長官官房総合政策課長などを歴任。2016年資源エネルギー庁電力・ガス事業部長を経て2020年内閣府大臣官房審議官、2021年内閣府政策統括官(経済社会システム担当)、2022年内閣府政策統括官(経済財政運営担当)に就任。2023年より現職。

柏木 孝夫(かしわぎ たかお)氏

柏木 孝夫(かしわぎ たかお)
東京工業大学(現 東京科学大学)名誉教授
コージェネ財団理事長
1946年東京都生まれ。1970年東京工業大学工学部生産機械工学科卒。1979年博士号取得。1980年~1989年米商務省NBS(現NIST)招聘研究員、1988年東京農工大学工学部教授などを経て2007年東京工業大学大学院教授に就任。2012年東京工業大学名誉教授に。専門はエネルギー・環境システム。2003年日本エネルギー学会学会賞(学術部門)、2008年文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)など受賞多数。経済産業省総合資源エネルギー調査会本委員、同省エネルギー・新エネルギー分科会長、水素・燃料電池戦略協議会座長等を歴任。著書に『スマート革命』『エネルギー革命』『コージェネ革命』『超スマートエネルギー社会5.0』など。