柏木: 欧州議会では極右勢力が増加しています。これから先、カーボンニュートラルに向けたトランジションをスピードアップできる状況ではないように見受けられます。日本も、そうした世界の状況を見据えた上で2040年のベストミックスを考え、エネルギー基本計画を立てていく必要があると思いますが、いかがですか。
村瀬: 2040年に向けては、足元で起きていることをしっかり見つめ、現実も踏まえた上で、戦略的な対応を取ることが必要だと思います。
欧州に関して言うと、トレンド線を見れば想定したようなCO2削減はできていませんが、各国とも、カーボンニュートラルに向けた野心的な目標をしっかりと維持しています。同時に、各国において多様かつ現実的なアプローチも拡大しています。欧州委員会が提案した2040年排出削減目標の資料には、かつてEUでは選択肢としていなかったCCS(CO2の回収・貯留)やガス火力活用なども言及されています。すべて再エネでまかなうというのではなく、CCSや火力発電などの手段も使いながら、野心的な目標を追求していく方針になっているものと理解しています。
柏木: 日本はコンクリートやセメント材料としての活用や人工光合成など、CCU(CO2の回収・利用)を実現できる様々な産業、技術を持っています。燃料電池のような発電システムもあり、CCUを組み込んだCO2フリーのプラットフォームをつくり上げることも可能です。カーボンニュートラルに向けたトランジション期に、大いに強みを発揮し得るのではないでしょうか。
村瀬: 日本の持つ技術は、世界がネットゼロに向けて前進するこのトランジション期に重要な役割を果たすことができると考えています。かつて、日本の自動車メーカーは、省エネの取り組みの中でハイブリッドカーをつくり世界市場を席巻しました。GXを目指す上でも、単に環境制約としてではなく、日本の持つ技術を産業の強みに変えていく挑戦と捉えることが大事です。
そのためにも、政府はGX経済移行債により20兆円規模の大胆な先行投資支援を実行し、今後10年間で150兆円を超えるGX投資を官民協調で実現していきます。
また、今後より重要なのがアジアの存在です。アジアにも日本と同様に、簡単には再エネを増やせない国が多くあります。原子力に手を出すことが難しい国もあります。そうした国でもエネルギー安定供給は欠かせません。このため、火力をクリーンに使う手段やCCUSのような技術で将来を描こうとする国は多いはずです。近隣諸国の大きな市場を日本のリードする技術で押さえることができるなら、産業政策的にも非常に大きな意味を持ちます。日本の成長戦略にもつながります。
柏木: 日本が主導し、ASEAN(東南アジア諸国連合)やオーストラリアとともにつくった枠組み「AZEC=アジア・ゼロエミッション共同体」が動き出しています。民間企業の巻き込みについてはどう考えていますか。
村瀬: AZECでは既に、日本とパートナー国の企業などの間で具体的協力案件が数多く進められています。協力関係を拡大し、エネルギー移行を進展させるため、引き続き各国政府や関係機関からも後押しをしていくことが重要で、官民がコミュニケーションを取りながら連携していく必要があります。また、参加国の中には、カーボンニュートラルを実現するための多様な道をどう進むべきかと悩んでいる国は多いと思います。我が国が、それを選ぶお手伝いをすることで、Win-Winの関係にしていけるというのが大きなポイントです。
日本は、水素や省エネなどCO2排出削減とエネルギーの安定供給を両立させる技術を数多く持ち、様々な形で先鞭をつけています。こうした技術を、アジアをはじめとする世界各国に広げ、ビジネスも獲得する。結果として、アジアなど各国のカーボンニュートラル達成をお手伝いする形で日本がリーダーシップを取る。これが理想の姿です。世界の国々が喜び、日本にも利があるWin-Winの関係をつくり上げていけると信じています。
柏木: 国際的な展開を図るプラットフォーマーになれれば、日本は力強く成長していけますね。需要のあるところで電源となり、再エネの調整役も果たすコージェネは、プラットフォームの核となり得る存在です。一層の普及推進を図りたいと思います。
