柏木: 変動性の高い再エネの余剰電力を「Power to Gas(P2G/パワーツーガス)」で水素に変換すれば長期にわたって貯蔵できます。今後の期待度は非常に高いと思います。水素の出番はこれからますます増えていくでしょう。最終エネルギー消費量の約6割は熱ですから、燃料を脱炭素化できる水素が果たす役割はとても大きい。水素燃料を利用したコージェネであれば、CO2を排出することなく電気も熱も生み出せます。非常に有用性の高いシステムだと思います。
日本は2017年、世界に先駆けて「水素基本戦略」を策定しました。当時、欧州連合(EU)をはじめ、世界の国々は、それほど水素に注目していませんでした。ところが、温室効果ガス削減の目標が、「80%削減」から「カーボンニュートラル達成」に変わると、残り20%を減らすために、水素が最も汎用的でコストが安いと考えるようになりました。
ドイツが2020年に「国家水素戦略」を打ち出すなど、世界の国々が、水素ビジネスでの覇権を目指し動き出しています。しばらく立ち止まっていた日本も、水素社会推進法という法律をつくって巻き返そうとしている構図ですね。
村瀬: おっしゃる通り、日本が先に動いたにもかかわらず、これから水素の需要が拡大すると見た欧州が関心を持ち、相当なスピードで動いてきています。水素は日本が技術的に優位性を持つ分野とされています。かつてのように、日本が「技術で勝っていたにもかかわらずビジネスで負ける」ことがないよう、「技術で勝ちビジネスでも勝つ」ことができるように、しっかり取り組んでいきます。そのためにも、産業界とも連携しながら、規制と支援を一体的に導入することにより、日本で水素を利用したビジネスモデルをつくり上げ、世界のマーケットを取っていくことが重要となります。
柏木: 日本はこれまで規制が多く、水素ステーションを1つつくるのも大変でした。産業界からは、日本で水素社会を実現するのは難しいのではないかという声も出ていました。今回、法律ができて、規制改革も進みつつあります。ここからは、この法律を活かすも殺すも企業サイド次第だと思います。
村瀬: 企業側の取り組みが重要という点はそのとおりです。例えば、原子力からつくる水素に関しても、最近は高温ガス炉など、新しい技術の開発が進んでいます。安価な水素ができれば、その利用も進むでしょう。また、水素の派生物のアンモニアも有用です。JERAの碧南火力発電所(愛知県碧南市)では、既存の燃料にアンモニアを混焼する実証試験を行い完了しています。このように、水素社会推進法のような政策支援ツールも活用し、様々な企業の商用化を進める取り組みを支援していきたいと思います。
