大和ハウス工業
都市部の「在来種緑化」でネットゲインへ
住宅や商業施設の開発時に設ける緑地で在来種を過半にする取り組みを続けてきた。
この取り組みを継続すれば2050年までに都市部の自然の損失を回復できる見通しが立った。
大和ハウス工業は、グループで推進する「在来種緑化」の取り組みの将来効果予測を実施した。在来種率を50%以上にする緑化の活動量を今後も継続した場合、1977~2022年の生物多様性の損失量を上回る回復を2050年より前に達成し、ネットゲインが実現できるとの見通しを得た。26年7月に発行した「サステナビリティレポート2026」で公開した。
大和ハウス工業は10年に住宅メーカーとして初めて包括的な「生物多様性宣言」を公表した。21年には「みどりをつなごう!」という緑化コンセプトを制定し、22年度から生態系に配慮した緑地面積拡大に取り組んできた。
生態系に配慮した緑化として、その地域に根差した樹木の割合を高めている。在来種を増やせば、その地域の生物が生息しやすい環境をつくれると考えた。地域ごとに生態系が異なることを踏まえ、国内の事業地域を9つに分けてそれぞれに在来種の樹木をリスト化。住宅や商業施設、オフィスなどを開発する際には、自治体による緑化規制を順守した上で、このリストに基づいて地域の在来種が50%以上になるように樹木を植えている。在来種緑化を実施した面積は26年3月期までの累計で100.3万平方メートルに上る。
55年の長期目標と歩調合わせ
琉球大学発のスタートアップ、シンク・ネイチャー(沖縄県浦添市)と協力して、都市部における在来種緑化の定量評価を進めている。これまでに、在来種を50%以上植えた物件は、在来種を植栽しない物件と比較して生物多様性の保全効果が高いことを確認していた。今回新たに取り組んだのは、2055年の環境負荷ゼロを目指す大和ハウス工業の「環境長期ビジョン」に向けて、現在の取り組みが適切であるかどうかを検証することだ。
まず、都市緑地に関する公的データを基に、失われた緑地面積のうち、自社の事業に起因すると考えられる量を推計した。そして、22年以降の在来種緑化の実績値から、緑地の面積や樹木の本数、鳥やチョウの生息地としての機能を基に生物多様性の回復量を求めた。その上で、緑化規制を守りながら在来種率50%で26年以降も緑化を続けた場合の生物多様性の回復量を試算した。1977年からの損失を2050年より前に回復し、環境長期ビジョンの目標である55年にはネットゲインを達成できるとの見通しが立った。
「ビジネスオーナーは既に、自然に配慮した形で施設を整備したいという思いを持ち始めている。個人もそうした風潮が高まっていくだろう」と経営戦略本部サステナビリティ統括部SX推進グループ上席主任の西部洋晴氏は話す。都市開発によって自然を失う企業から、自然をつくり出す企業への転換が始まっている。
施工規模における都市緑地の生物多様性損失量および回復予測図
(出所:大和ハウス工業)