ニッスイ
未来の海を考える
海の恵みを利用して事業を展開するニッスイグループにとって、豊かな水産資源を将来にわたって持続可能なものにしていくことは、事業の基盤に関わる重要なテーマだ。NATURE TECH!では、ニッスイグループが長年取り組んできた「黒瀬ぶり」の完全養殖を題材に、養殖技術と海の豊かさについて、子どもたちと共に考えた。
「黒瀬ぶり」から考える持続可能な養殖
水産物を将来にわたって安定して食卓へ届けていくためには、天然の水産資源を持続可能な形で利用するとともに、養殖によって安定的に生産していくことが重要になる。一方、養殖も自然の恵みを利用して行うものであり、天然資源への依存や海洋環境への負荷をできるだけ抑えながら、持続可能なものへと進化させていく必要がある。ニッスイグループでは、こうした課題に向き合い、様々な研究や技術開発を通じて、より持続可能な養殖を目指している。
その代表的な取り組みの一つが九州南部の志布志湾で行っている「黒瀬ぶり」の完全養殖だ。親魚から卵を採取してふ化させ、人工種苗を成魚まで育て、さらに次の世代へとつないでいく。2022年には出荷魚の全量を人工種苗に切り替え、天然の稚魚に依存しない養殖を実現した。さらに、親魚の成熟制御や選抜育種、人工種苗の成育、飼料の工夫、魚の健康管理など、様々な技術を組み合わせながら、天然資源への依存や養殖による環境負荷の低減に取り組んでいる。
NATURE TECH!では、こうした「黒瀬ぶり」の養殖を題材に、小学生が魚を育てることと海の豊かさとのつながりについて学ぶワークショップを実施した。登壇した大分海洋研究センター長の森島輝氏は、「海を守ることにもつながる養殖の魅力を、多くの子どもたちに知ってもらいたいと考えた」と、ワークショップに込めた思いを語った。
子どもたちと未来の海を考える
ワークショップでは、魚を健康に育てるためには、魚そのものだけでなく、飼育する環境を良好に保つことも大切であることを紹介した。ブリの稚魚を育てる水面が汚れていたり水中にゴミが多かったりすると、浮袋の形成不良やゴミの誤食によって、その後の成長にも影響を及ぼすことがある。森島氏が「こうしたことを防ぐために、私たちに何ができるだろう」と問いかけると、子どもたちからは「海にポイ捨てをしない」「ゴミを拾う」などの声が上がった。ワークショップを振り返った子どもたちからは、「天然と養殖の魚の違いがよく分かった」「海の環境をしっかり守っていくことが、魚が育つために大事だと思った」といった感想も聞かれた。
展示ブースでは、海を取り巻く課題や「黒瀬ぶり」の完全養殖の仕組みを図解で紹介したほか、実際の飼料やブリの稚魚も展示。子どもたちは小さな稚魚を間近で観察したり、出荷サイズの「黒瀬ぶり」をイメージした約4.5kgの魚の模型を抱えたりしながら、魚の成長を体感した。「重い!」とその大きさに驚く声も上がった。
さらに、「未来の海を考えるアイデアボード」では、子どもたちが未来の海のためにできることを考えた。「マイクロプラスチックを減らす」「河口付近で水をきれいにする装置を作る」「洗剤をむだに使わない」など、様々なアイデアが集まった。中には、何を書こうかと考えこむ子どもの姿も見られ、それぞれが海の環境について考える時間となった。
「魚のことをあまり知らない子どもに興味を持ってもらいながら、魚についてすでに詳しい子どもにも新たな驚きを与えられるような内容を心がけた」と森島氏。魚を育てる養殖について知ることを入り口に、その魚を育む海の環境にも目を向ける。今回の展示やワークショップは、子どもたちが海の豊かさを未来につないでいくために、自分たちに何ができるのかを考える機会となった。